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中之島香雪美術館「上方界隈、絵師済々」_円山・四条派は奥深い

2019年12月18日 | 美術館・展覧会

大阪・中之島香雪美術館で、円山・四条派の隠れた名品を集めた展覧会「上方界隈、絵師済々Ⅰ」が始まりました。
前期展示は派が芽生えた京都、後期展示は派が独自の発展をとげた大坂と、絵師の活躍した地域で作品が総入れ替えされるという、興味深い展示構成が注目されます。
普段なかなか見れない個人蔵作品の多さも、この展覧会の特徴です。
「隠れた名品がこんなにあったのか」と、驚く方がきっと多いでしょう。



フェスティバルホール


目次

  • 円山・四条派の名品はどこまでも奥深い
  • 円山応挙の名品「芭蕉童子図屏風」
  • 原在中の名品「旭日双鶴図」






円山・四条派の名品はどこまでも奥深い

今年2019年は、全国で円山・四条派の展覧会が目白押しでした。
このブログでも、

とご紹介してきたように、円山・四条派の作品を「これでもか」と見続けていたのです。

普通ならば「そろそろ見飽きた」と感じてしまうのですが、「上方界隈、絵師済々Ⅰ」には迷うことなく足を運んでいます。

  • 円山・四条派は絵師がとても多く、時がくだるほど描写が洗練されていくことがわかる
  • 現存する作品が多く、多種多様な画風やモチーフが楽しめる
  • 版画の錦絵とは異なり、同じ作品を目にすることはない

と期待したためですが、そんな期待を裏切らない「隠れた名品」が展示会場に勢揃いしていました。

前期展示の京都画壇では、円山・四条派のDNAの原点である円山応挙の作品を出発点に、DNAが京都でどのように伝播していったのかを味わうことができます。
長澤芦雪や呉春ら著名な弟子の名品はもちろんですが、源琦や原在中といった「隠れたすご腕」の弟子たちの名品が見逃せません。
円山・四条派のDNAの奥深さをしっかりと実感することができるからです。





円山応挙の名品「芭蕉童子図屏風」


前期展示のタイトル「京都画壇の立役者たち」を象徴する作品は、やはり円山応挙でしょう。
前期展示では、展示期間が限られている作品もありますが、9点が出展されています。


【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

「芭蕉童子図屏風」個人蔵は、円山応挙が本格的に絵師として活動を始めた、いわゆる「円満院時代」と呼ばれる頃の名品です。

円満院(えんまんいん)とは、滋賀県大津市の三井寺の近くの門跡(もんぜき)寺院で、今も続いています。
円山応挙の出世への階段は、当時の円満院の住職・祐常(ゆうじょう)が、絵を習うために円山応挙を呼び寄せたことで、始まりました。
祐常は関白二条家出身で、円山応挙にとっては自身の名を公家社会に広めてくれた大恩人です。
また祐常は当時流行していた博物学に詳しく、植物や動物の姿を「写生」する面白さを円山応挙に目覚めさせた人物でもあります。
祐常との出会いがなければ、円山応挙はスーパースターにはなりえなかったでしょう。

「芭蕉童子図屏風」は、童子が仙人を見つめる視線が印象的です。
円山応挙が得意とした「愛くるしい」表現は、若い頃からかなりの領域に達していたことがわかります。

【所蔵者公式サイト】 円山応挙「棕櫚図」香雪美術館

「棕櫚(しゅろ)図」香雪美術館蔵は、円山応挙の「写生」への執念を感じさせます。
棕櫚とはヤシであり、薩摩の島津家からプレゼントしてもらい、京都の庭園に植えることが江戸時代に流行していました。
植物ながら、その描写には生命感があふれており、温かみさえ感じさせます。
観察する能力と表現する能力、ともに極めようとした円山応挙の画業人生を集約したような名品です。
展示は12/28まで。



フェスティバルプラザ


原在中の名品「旭日双鶴図」

原在中(はらざいちゅう)は、数多い円山応挙の弟子とされる絵師の中でも、本当に弟子であったか諸説ある謎の人物です。
画風は、伝統的なやまと絵表現・中国絵画から写実画まで幅広く取り込んでおり、絵の注文も寺や公家からが中心でした。
さまざまな伝統の知識である有職故実(ゆうそくこじつ)に明るかったこともあり、18cの京都画壇の絵師の中では異色の「王朝趣味」を感じさせます。
町衆からの注文が多かった円山・四条派の絵師たちとは随分個性が異なります。

「旭日双鶴図」村山コレクション蔵は、太陽の方向を見る鶴と言うモチーフ設定に加え、やまと絵と中国絵画をブレンドしたような表現から、とても洗練された趣に仕上げられている名品です。
背景の松の枝は写実的にとても緻密に描かれており、絵の全体の印象を引き締めています。



茶室「玄庵」を館内に原寸大再現


円山応挙の弟子の中で、美人画で知られる二人の名品も注目されます。
唐美人図で有名な源琦(げんき)の「西王母図」個人蔵、日本美人画で有名な山口素絢(やまぐちそけん)の「美人図」個人蔵は、とても興味深く画風を対比することができます。

「隠れた名品がこんなにあったのか」と確実に実感できる展覧会です。
来年2020年2月からは展示作品が総入れ替えされ、後期展示「独自の展開 大坂画壇」が始まります。
前期展示「京都画壇の立役者たち」を見て、大いに期待感が高まりました。
また来年2020年9月からは「上方界隈、絵師済々ⅠI」の開催が予告されています。
こちらはどんな展示構成になるのでしょうか、同じく楽しみです。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



「奇想」を提案した著者は18c京都にルネサンスを見出した


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利用について、基本情報

中之島香雪美術館
企画展「上方界隈、絵師済々 Ⅰ」
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:香雪美術館、朝日新聞社
会期:2019年12月17日(火)〜2020年3月15日(日)
原則休館日:月曜日、12/29-1/7
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※2/2までの前期展示、2/4以降の後期展示ですべての展示作品が入れ替えされます。
※前期・後期展示期間内でも、展示期間が限られている作品があります。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていません。企画展開催時のみ開館しています。



◆おすすめ交通機関◆

大阪メトロ四つ橋線「肥後橋」駅下車、4番出口から徒歩3分
京阪中之島線「渡辺橋」駅下車、12番出口から徒歩3分
大阪メトロ御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」駅下車、7番出口から徒歩8分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:10分
JR大阪駅(西梅田駅)→メトロ四つ橋線→肥後橋駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設が入居するビルに有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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