昨年12月9日の一般質問の概要について引き続き解説したいと思います。
②ニホンジカ等による被害対策としてのオオカミ再導入について
問(鈴木) ニホンジカ等による被害は全国的な問題だが、管理に成功している例はない。狩猟の強化や柵等の設置による対策は対処療法に過ぎず、特に、世界文化遺産登録を目指す富士山周辺や三千メートル級の南アルプスのような地域ではおのずと限界がある。被害対策の一つとして、日本オオカミ協会が提唱するオオカミ再導入の可能性について、近隣県と連携して調査研究すべきではないか。
答(県) オオカミ再導入については、中山間地域の居住者や家畜、あるいは登山者等への安全対策、オオカミが増えすぎた場合の捕獲手段、オオカミの行動範囲が広いため県境を越えた対策など解決すべき課題が多いことから、再導入の可能性については日本オオカミ協会も含めた関係者の意見を聞きながら研究していく。また、機会があれば、米国のイエローストーン国立公園等の先駆事例の現場を調査したい。
解説: 現在、静岡県には4万頭以上のシカが生息すると推定され、その被害は深刻です。特にシカが適正頭数以上いるとされているのが、伊豆地域、富士山周辺及び南アルプス地域です。伊豆地域においては平成16年度から特定鳥獣保護管理計画に基づいてニホンジカを適整頭数にまで戻す努力を続けていますが、富士山周辺や南アルプス地域については現在策定中の保護管理計画に従って今年の4月から本格的な対策を実施する予定です。
「オオカミ再導入」について触れると「人を襲ったらどうするんだ」という反応が必ずと言っていいほどあります。オオカミは例えばヨーロッパ28カ国に2万頭以上生息していると言われています。ドイツ、イタリア、スペイン等、旅行でもよく訪れる国にも生息していますが、そうした国に行かれる際「オオカミに襲われるかもしれないから気を付けろ」と言われることはないでしょうし、「オオカミが人を襲った」というニュースを聞いたこともないと思います。オオカミは生息する地域で食物連鎖の頂点に立つ動物です。オオカミにとって怖いのはオオカミ自身であり人間です。ですから、わざわざ恐ろしい人間を安易に襲うのは理にかなった行動ではありません。あるとすれば、自分の子どもや巣が人間に襲われた場合、餌付け等により人間に慣れてしまった場合、人間以外に食料が全くない場合、そして狂犬病に罹った場合等とされています。例えば、小さな森と市街地が混在するドイツのラウジッツ地方では東西ドイツの再統一以降、保護運動のおかげでオオカミが徐々に住み着くようになってきていますが、そこでは、道端に設置された自動カメラに、車、自転車、歩行者と共に、道を横切るオオカミが写るそうです。それだけオオカミと人間が混在した形で共存しているのですが、人に慣れないようにオオカミを威嚇することはあっても、住民がオオカミに襲われた例はないとのことです。
日本では1905年に奈良県で捕獲されたのが最後とされ、現在では動物愛護管理法の下で危険な「特定動物」としてオオカミは指定されています。つまり勝手にオオカミを野に放すことは法律違反です。しかしながら、オオカミが日本から絶滅して100年余りという状況は、日本のあるいは地球の長い自然史からすればむしろ「異常」と言えます。ですから、課題は山積ですが、先入観に囚われずに、シカ対策あるいは生物多様性を守るための手段として「オオカミ再導入」の可能性や課題等を研究することは、人間の勝手かもしれませんが、あるべき自然を取り戻す第一歩ではないかと考えます。
※ドイツ・ラウジッツ地方におけるオオカミ保護と住民との共生について解説する自然・生物多様性保護連合(NABU)のマグヌス・ヴェッセル氏(右)(平成23年10月)
②ニホンジカ等による被害対策としてのオオカミ再導入について
問(鈴木) ニホンジカ等による被害は全国的な問題だが、管理に成功している例はない。狩猟の強化や柵等の設置による対策は対処療法に過ぎず、特に、世界文化遺産登録を目指す富士山周辺や三千メートル級の南アルプスのような地域ではおのずと限界がある。被害対策の一つとして、日本オオカミ協会が提唱するオオカミ再導入の可能性について、近隣県と連携して調査研究すべきではないか。
答(県) オオカミ再導入については、中山間地域の居住者や家畜、あるいは登山者等への安全対策、オオカミが増えすぎた場合の捕獲手段、オオカミの行動範囲が広いため県境を越えた対策など解決すべき課題が多いことから、再導入の可能性については日本オオカミ協会も含めた関係者の意見を聞きながら研究していく。また、機会があれば、米国のイエローストーン国立公園等の先駆事例の現場を調査したい。
解説: 現在、静岡県には4万頭以上のシカが生息すると推定され、その被害は深刻です。特にシカが適正頭数以上いるとされているのが、伊豆地域、富士山周辺及び南アルプス地域です。伊豆地域においては平成16年度から特定鳥獣保護管理計画に基づいてニホンジカを適整頭数にまで戻す努力を続けていますが、富士山周辺や南アルプス地域については現在策定中の保護管理計画に従って今年の4月から本格的な対策を実施する予定です。
「オオカミ再導入」について触れると「人を襲ったらどうするんだ」という反応が必ずと言っていいほどあります。オオカミは例えばヨーロッパ28カ国に2万頭以上生息していると言われています。ドイツ、イタリア、スペイン等、旅行でもよく訪れる国にも生息していますが、そうした国に行かれる際「オオカミに襲われるかもしれないから気を付けろ」と言われることはないでしょうし、「オオカミが人を襲った」というニュースを聞いたこともないと思います。オオカミは生息する地域で食物連鎖の頂点に立つ動物です。オオカミにとって怖いのはオオカミ自身であり人間です。ですから、わざわざ恐ろしい人間を安易に襲うのは理にかなった行動ではありません。あるとすれば、自分の子どもや巣が人間に襲われた場合、餌付け等により人間に慣れてしまった場合、人間以外に食料が全くない場合、そして狂犬病に罹った場合等とされています。例えば、小さな森と市街地が混在するドイツのラウジッツ地方では東西ドイツの再統一以降、保護運動のおかげでオオカミが徐々に住み着くようになってきていますが、そこでは、道端に設置された自動カメラに、車、自転車、歩行者と共に、道を横切るオオカミが写るそうです。それだけオオカミと人間が混在した形で共存しているのですが、人に慣れないようにオオカミを威嚇することはあっても、住民がオオカミに襲われた例はないとのことです。
日本では1905年に奈良県で捕獲されたのが最後とされ、現在では動物愛護管理法の下で危険な「特定動物」としてオオカミは指定されています。つまり勝手にオオカミを野に放すことは法律違反です。しかしながら、オオカミが日本から絶滅して100年余りという状況は、日本のあるいは地球の長い自然史からすればむしろ「異常」と言えます。ですから、課題は山積ですが、先入観に囚われずに、シカ対策あるいは生物多様性を守るための手段として「オオカミ再導入」の可能性や課題等を研究することは、人間の勝手かもしれませんが、あるべき自然を取り戻す第一歩ではないかと考えます。
※ドイツ・ラウジッツ地方におけるオオカミ保護と住民との共生について解説する自然・生物多様性保護連合(NABU)のマグヌス・ヴェッセル氏(右)(平成23年10月)