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自称“流川市民”の、鉄道橋梁&トンネルと北海道の国鉄(JR)廃線跡が好きな人間がブログに挑む。(最近は迷走の日々…)

鉄道構造物について ―橋梁編 鉄桁の塗装について― 

2011年07月25日 | 鉄道―建築物・橋梁・踏切・トンネル他
橋梁の塗装

鉄桁の塗装について


 鉄道橋梁の桁の主流は鉄桁であるので、地肌が剥き出しだとどうしても水分と酸素と結合して錆びてしまい、桁の強度の低下を招いてしまうので、錆を防がなくてはならない。
 金属の錆を防ぐには化学処理を施したりする方法もあり、最近では公園のブランコの鎖の黒錆と同じように予め人工的に安定した錆の膜を作ってしまってこれ以上錆びないようにした、コロンブス的発想の無塗装桁が登場しているが、一般的には、塗装で金属の表面を覆って保護する方法がとられている。

 桁の塗装は、ただやみくもに塗りたくると、表面に凹凸が出来てしまって塗膜の薄い部分から傷んで剥離し、剥離箇所から赤錆が発生して強度的に脆弱な箇所が生じてしまう。そこで、塗膜は均一の厚さを保つ必要がある。
 桁の塗装は非常に厳しい基準が要求され、塗膜は何ミクロンの単位で何層塗り重ねるか契約書に規定されており、契約書通りに仕上げる為に、何度も表面を塗っては平滑に研いで塗り重ねる。
 これは、就職活動中にある塗装会社の社長に聞いた話だが、橋梁の桁の塗装は、極端に言えば車の塗装と同じレベルを要求されるそうだ。
 また、桁の塗装に使われる塗料だが、そもそも、潮風や薬品、酸やアルカリ、日光や熱等、あらゆる悪条件に対応出来る万能の塗料はこの世には存在しないので、普通は、被塗装物の条件に合わせて、ある条件にのみ強い塗料を複数選択して、塗り重ねる事で被塗装物を保護する。
 ただし、塗料には相性の良くない組み合わせがあり、それを行うと、本来の特性が発揮出来ないので、両者をなじませる塗料を選択して塗り重ねる場合がある。パンに野菜をはさむ際に、マーガリン(バター)を塗って両者をなじませる事を思い出してもらいたい。

 鉄桁の塗装は、一般的には下地に防錆性に優れている鉛系の塗料を用いて、油性の錆止め塗料を上塗りする。前者はシアナミド鉛錆止ペイント等が用いられ、後者はフタル酸樹脂塗料等が用いられている。
 最近では公害問題や環境問題で、鉛害に対しては鉛を用いない錆止めの塗料が実用化されており、また、塗膜は10年から20年位で劣化して塗替えの必要が生ずるので、最近では先に述べたような、予め安定した錆の膜を施した無塗装桁というのも登場し、JR大糸線の一部区間や第3セクターの井原鉄道等で使用され始めている。おそらく、今後架けられる橋梁の鉄桁は無塗装が主流になるだろう。
 橋梁の塗装は莫大な費用がかかるので、メンテナンスフリーは魅力的かも知れないが、個人的には、周囲の環境を考慮しつつ職人が手間をかけてカラフルに塗装した橋梁が好きである。
 最後に、JR東日本鶴見線(大川支線)の第五号橋梁での、鉄桁塗装用塗料の試験と推測される鉄桁の塗装表記を紹介する。
 米軍機の機銃掃射の痕跡があるこの橋梁の1連目は、16mスパンの桁で7種類の塗料の組合せで塗り分けられており、通常1連につき1箇所の塗装表記が7箇所もある。

2連目(大川方の桁)に残る機銃掃射の痕跡



同写真 拡大



1連目 塗装表記A(1連目の武蔵白石寄りの箇所)
JRの場合、通常は桁1連につき1箇所、橋梁の位置・桁の長さ・塗装年月・塗装会社・使用塗料といった表記が記載されるが、この場合は、武蔵白石寄りから順に塗料の組み合わせを変えているので、1連につき複数の表記が記載されていた
下塗:シアナミド鉛錆止ペイント,中塗・上塗:フタル酸樹脂塗料
※従来の鉄桁塗装でのごく一般的な組み合わせである



1連目 塗装表記B(塗装表記Aから大川寄り)
下塗:厚膜型変性エポキシ樹脂塗料,中塗・上塗:厚膜型変性エポキシ樹脂塗料



1連目 塗装表記C(塗装表記Bから大川寄り 以下同様)
下塗:厚膜型エポキシ樹脂塗料,中塗・上塗:厚膜型ポリウレタン樹脂塗料



1連目 塗装表記D
下塗:厚膜型変性エポキシ樹脂塗料,中塗・上塗:弱溶性ポリウレタン樹脂塗料



1連目 塗装表記E
下塗:変性エポキシ樹脂塗料,中塗・上塗:フッソ樹脂塗料



1連目 塗装表記F
下塗:錆・塗膜封じ込め塗料,中塗:金属面専用塗料,上塗:金属・コンクリート面塗料


1連目 塗装表記G
下塗:ウレタン塗料ジンクM10,中塗:ウレタン塗料ジンクM10,上塗:ウレタン塗料ジンクM10




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