(2011/ロバート・レッドフォード監督/ジェームズ・マカヴォイ、ロビン・ライト、ケヴィン・クライン、エヴァン・レイチェル・ウッド、ダニー・ヒューストン、アレクシス・ブレデル、ジョニー・シモンズ、トム・ウィルキンソン/122分)
(↓Twitter on 十瑠 から[一部修正アリ])
レッドフォードの「声をかくす人」を観る。金曜日に借りて今日で2回目。前作「大いなる陰謀」では、若者たちに『気楽に生きるのもいいが、も少し世界情勢や政治にも関心を持とうや』とメッセージを投げかけたレッドフォードが、今度は祖国アメリカの過去の影を振り返った作品だ。
[11月09日 以下同じ]
アメリカ第16代大統領リンカーンの暗殺事件。題材は、この事件を起こした犯人グループと共に共謀者として裁かれた女性メアリー・サラットを巡る裁判劇だ。メアリーはワシントンで下宿屋をしており、暗殺グループがこの下宿屋を根城(ねじろ)にしていたので、計画に加担していたのではないかと疑われたわけだ。
映画では暗殺計画に参加していたのはメアリーの息子ジョンであって、メアリーもジョンの姉アンナ(ウッド)も無関係と描いている。ところが、南北戦争が終わりを告げた頃の事件なので、勝利していた北軍のお偉方は、裁判も早く決着をつけてしまいたいと思っている。
メアリー以外の男たちは南軍の残党(そればっかりでもないみたいだが)なので、軍法会議による裁きを受けるのは分かるが、何故かメアリーは民間人であるにも関わらず同じ軍による法廷において裁かれることになる。ここがそもそも間違いなんですな。で、メアリーは弁護士を頼むことになる。
メアリーが最初に弁護を願い出たのは元司法長官のリヴァディ・ジョンソン上院議員(ウィルキンソン)だったが、ジョンソンは南部人である自分よりは今度の戦争で北軍の大尉として勲章ものの働きをしたフレデリック・エイキンの方が分がいいだろうと、法律事務所の部下である彼を指名する。
[11月10日 以下同じ]
エイキンは暗殺グループを憎んでおり弁護には消極的だったが、「メアリーの有罪を証明できるなら(弁護を)辞めてもいい」というジョンソンの言葉に反論できず、更に段々とこの裁判が正義を無視したものであるのを感じるに至り、法の番人としてメアリーの弁護をする事に責任を感じていく。
映画「声をかくす人」は、弁護士エイキンの葛藤のドラマを軸にしている。ラストでメアリーが絞首刑になるのは史実から分かっているので、観客の関心はエイキンがどうなるのかという事。まさかレッドフォードが主演したあの社会派問題作の舞台となった新聞社に勤めることになるとは。
そういえば、この映画もその「大統領の陰謀」と同じくレッドフォードのワイルドウッド・プロが制作していた。
allcinemaのコメント欄によると、<アメリカの歴史を真実に基づき正確に描くという目的から2008年に創立されたTAFC(アメリカン・フィルム・カンパニー)の第一作目>とのことで、他にも<実際の法廷記録を大幅に引用したというセリフ>という情報もあった。
原題は「THE CONSPIRATOR=(共謀者、陰謀者)。「声をかくす人」なんて、予告編もメアリーが何か重大な秘密を持っているみたいに描いているけれど、単に息子を罪人にしないようにと息子と事件を結びつける事を喋らないだけで、この宣伝戦略はむしろ観客の失望を招いたような気がするな。
実際に息子は暗殺グループに加担していたんだから、エイキンが証明しようとしたように、息子に罪を償わせれば良かったんだが、母親としてはどうしても出来なかった。その方向でメアリーが助かったとしても、南部側のある種の人々からは薄情な母親と思われるかもしれないし。難しい立場だなぁ。
お薦め度は★四つ。メアリーが世間からどのように見られていたかがイマイチ説明不足の感があるのがマイナス。エイキンの周りの女性たちの話でまさに魔女のように噂されていたのは分かるが、そんな一般大衆の評判がどのようにして出来ていったか、なんていうのも見たかったな。
フレデリック・エイキンに扮したのは「つぐない」のジェームズ・マカヴォイ。適役でした。
メアリー・サラットはロビン・ライト。この前に観たのはブラピ共演の「マネーボール」だな。ショーン・ペンと結婚していた時は、ロビン・ライト・ペンといっていた。終盤の絞首刑のシーンで、頭巾を被せられる時の絶望の表情がなんともやるせない。無念さが滲み出てる。
最大の悪役となったスタントン陸軍長官に扮したのはケビン・クライン。かつらなのか毛を抜いたのか、頭頂部をハゲにして、メアリーを含めて犯人には最初から極刑ありきと、司法より政治を優先させた冷酷な人物を演じてます。
もう一人の悪役、検察側のジョセフ・ホルト総監を演じたのはダニー・ヒューストン。なんとジョン・ヒューストンの息子で、元妻がヴァージニア・マドセンなんだそう。この検事さん、証人を買収してウソをつかせるなどしております。ま、スタントン長官の言いなりだったんでしょうが。
エイキンの彼女だったが、裁判の終盤で四面楚歌になる彼を見限る女性サラに扮したのがアレクシス・ブレデル。経歴を調べたら「旅するジーンズと16歳の夏」で美人で大人しいリーナ役だった。
[11月10日 追記]
スクリーンが、過去のお話であることを印象付けるように白茶けた色合いになっていました。更にざらついた感じにも。撮影はニュートン・トーマス・サイジェル。「ユージュアル・サスペクツ(1995)」もこの人のキャメラだそうです。
※ 追加つぶやきによる備忘録はこちら。
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レッドフォードの「声をかくす人」を観る。金曜日に借りて今日で2回目。前作「大いなる陰謀」では、若者たちに『気楽に生きるのもいいが、も少し世界情勢や政治にも関心を持とうや』とメッセージを投げかけたレッドフォードが、今度は祖国アメリカの過去の影を振り返った作品だ。
[11月09日 以下同じ]
アメリカ第16代大統領リンカーンの暗殺事件。題材は、この事件を起こした犯人グループと共に共謀者として裁かれた女性メアリー・サラットを巡る裁判劇だ。メアリーはワシントンで下宿屋をしており、暗殺グループがこの下宿屋を根城(ねじろ)にしていたので、計画に加担していたのではないかと疑われたわけだ。
映画では暗殺計画に参加していたのはメアリーの息子ジョンであって、メアリーもジョンの姉アンナ(ウッド)も無関係と描いている。ところが、南北戦争が終わりを告げた頃の事件なので、勝利していた北軍のお偉方は、裁判も早く決着をつけてしまいたいと思っている。
メアリー以外の男たちは南軍の残党(そればっかりでもないみたいだが)なので、軍法会議による裁きを受けるのは分かるが、何故かメアリーは民間人であるにも関わらず同じ軍による法廷において裁かれることになる。ここがそもそも間違いなんですな。で、メアリーは弁護士を頼むことになる。
メアリーが最初に弁護を願い出たのは元司法長官のリヴァディ・ジョンソン上院議員(ウィルキンソン)だったが、ジョンソンは南部人である自分よりは今度の戦争で北軍の大尉として勲章ものの働きをしたフレデリック・エイキンの方が分がいいだろうと、法律事務所の部下である彼を指名する。
[11月10日 以下同じ]
エイキンは暗殺グループを憎んでおり弁護には消極的だったが、「メアリーの有罪を証明できるなら(弁護を)辞めてもいい」というジョンソンの言葉に反論できず、更に段々とこの裁判が正義を無視したものであるのを感じるに至り、法の番人としてメアリーの弁護をする事に責任を感じていく。
映画「声をかくす人」は、弁護士エイキンの葛藤のドラマを軸にしている。ラストでメアリーが絞首刑になるのは史実から分かっているので、観客の関心はエイキンがどうなるのかという事。まさかレッドフォードが主演したあの社会派問題作の舞台となった新聞社に勤めることになるとは。
そういえば、この映画もその「大統領の陰謀」と同じくレッドフォードのワイルドウッド・プロが制作していた。
allcinemaのコメント欄によると、<アメリカの歴史を真実に基づき正確に描くという目的から2008年に創立されたTAFC(アメリカン・フィルム・カンパニー)の第一作目>とのことで、他にも<実際の法廷記録を大幅に引用したというセリフ>という情報もあった。
原題は「THE CONSPIRATOR=(共謀者、陰謀者)。「声をかくす人」なんて、予告編もメアリーが何か重大な秘密を持っているみたいに描いているけれど、単に息子を罪人にしないようにと息子と事件を結びつける事を喋らないだけで、この宣伝戦略はむしろ観客の失望を招いたような気がするな。
実際に息子は暗殺グループに加担していたんだから、エイキンが証明しようとしたように、息子に罪を償わせれば良かったんだが、母親としてはどうしても出来なかった。その方向でメアリーが助かったとしても、南部側のある種の人々からは薄情な母親と思われるかもしれないし。難しい立場だなぁ。
お薦め度は★四つ。メアリーが世間からどのように見られていたかがイマイチ説明不足の感があるのがマイナス。エイキンの周りの女性たちの話でまさに魔女のように噂されていたのは分かるが、そんな一般大衆の評判がどのようにして出来ていったか、なんていうのも見たかったな。
フレデリック・エイキンに扮したのは「つぐない」のジェームズ・マカヴォイ。適役でした。
メアリー・サラットはロビン・ライト。この前に観たのはブラピ共演の「マネーボール」だな。ショーン・ペンと結婚していた時は、ロビン・ライト・ペンといっていた。終盤の絞首刑のシーンで、頭巾を被せられる時の絶望の表情がなんともやるせない。無念さが滲み出てる。
最大の悪役となったスタントン陸軍長官に扮したのはケビン・クライン。かつらなのか毛を抜いたのか、頭頂部をハゲにして、メアリーを含めて犯人には最初から極刑ありきと、司法より政治を優先させた冷酷な人物を演じてます。
もう一人の悪役、検察側のジョセフ・ホルト総監を演じたのはダニー・ヒューストン。なんとジョン・ヒューストンの息子で、元妻がヴァージニア・マドセンなんだそう。この検事さん、証人を買収してウソをつかせるなどしております。ま、スタントン長官の言いなりだったんでしょうが。
エイキンの彼女だったが、裁判の終盤で四面楚歌になる彼を見限る女性サラに扮したのがアレクシス・ブレデル。経歴を調べたら「旅するジーンズと16歳の夏」で美人で大人しいリーナ役だった。
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[11月10日 追記]
スクリーンが、過去のお話であることを印象付けるように白茶けた色合いになっていました。更にざらついた感じにも。撮影はニュートン・トーマス・サイジェル。「ユージュアル・サスペクツ(1995)」もこの人のキャメラだそうです。
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