六月ということで、1967年のマイク・ニコルズ監督作「卒業」、久しぶりに観てみました。
<ベンジャミン・ブラドックは六月のさる日、東部の小さなカレッジを卒業した。彼はその足で家へ飛んで帰った。>
これが、チャールズ・ウェッブの原作(早川書房/佐和 誠訳)の書き出しです。映画では、オープニングのタイトルロールで、サイモン&ガーファンクルの「♪サウンド・オブ・サイレンス」が流れるシーンですね。ファースト・ショットは、飛行機の座席で背もたれの真っ白なカバーに頭を乗せている、不安げな表情をしたダスティン・ホフマンのアップでした。
日本での公開は翌68年。大好きなこの映画ですが、実は封切時には観ていません。まだ中学生で、劇場で洋画を観だす前だったので、この2、3年後に逢うことになります。
小さな映画館で、確か同時上映が「2001年宇宙の旅」でした。今となっては、「卒業」は原作本やらパンフレット、映画音楽等で、それこそ脳内メーカーでチェックすると100%“卒業”となってしまいそうな時期が長かったので、初見時のイメージは残っていません。むしろ、猿が大きな骨を空に放り投げたり、宇宙船がワルツの中で浮かんでいたり、サイケな色の氾濫するシーンが長すぎるなんていう併映の個性的なSF映画の方をよ~く覚えています。
監督: マイク・ニコルズ
製作: ローレンス・ターマン
脚本: バック・ヘンリー、カルダー・ウィリンガム
撮影: ロバート・サーティース
音楽: ポール・サイモン、デイヴ・グルーシン
出演: ダスティン・ホフマン(=ベンジャミン・ブラドック)、キャサリン・ロス(エレーン・ロビンソン)、アン・バンクロフト(=ミセス・ロビンソン)、マーレイ・ハミルトン(=ミスター・ロビンソン)、ウィリアム・ダニエルズ(=ベンの父)、エリザベス・ウィルソン(=ベンの母)、バック・ヘンリー(タフトホテルのクローク)、ブライアン・エイヴリー(カール・スミス)、ノーマン・フェル(下宿屋のおやじ)、リチャード・ドレイファス(下宿屋の学生)/107分
サンフランシスコで法律事務所を経営しているブラドック氏の一人息子ベンジャミンが、東部の大学を優秀な成績で卒業する。両親は、友人達を招いて卒業祝いのパーティーを開くが、当の息子は自分の部屋から出てこない。
学業以外にも、クロスカントリーチームの花形選手、カレッジ新聞の編集長、弁論クラブの代表などなど、輝かしい学生生活をおくってきたベンジャミンだが、今は将来への不安を抱えていた。平凡な人生は送りたくない、さりとて何をしたらいいのか分からない。両親に促されて渋々パーティーに顔を出すも、数分もすれば、また自室に引っ込んでしまった。
そんなベンジャミンに目を付けたのが、ブラドック氏の共同経営者、ミスター・ロビンソンの奥方だ。出来ちゃった婚で学生時代に所帯を持ったミセス・ロビンソンは、さりげなくベンジャミンの部屋を訪れ『主人が車で出かけちゃったので足が無くなったの』と言って家まで送らせる。ベンジャミンの倍の年齢ではあるが、水着の日焼けの後も生々しい身体には余計な贅肉もない。ベンジャミンを娘の部屋に呼び込んだミセス・ロビンソンは、いきなり素っ裸になり『今日でなくてもイイの。いつかその気になったら連絡して』と誘う。ロビンソン氏が帰ってきたので、事なきを得たが、この事は二人だけの秘密となった。
翌週、脳天気に息子の21回目の誕生日を祝うブラドック夫妻。またしても父親は友人家族を招いている。卒業祝いにはアルファ・ロメオだったが、誕生祝いはスキューバ・ダイビングの道具だった。部屋の奥でベンジャミンにダイビングスーツを着せ、ボンベも付けた格好を客人に披露しようというのだ。
こんな馬鹿騒ぎなんかしたくないのに。庭のプールの底に沈んでいきながら、ベンジャミンはミセス・ロビンソンとの刺激的な遊びをしてみようかと思うのだった・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/3e/3e7b644097488c31f5e70c311bd342da.jpg)
2002年に思い出の作品として書いた記事があり、その後、お薦め度を付ける際に五つ★としていましたが、今回再見して★一つマイナスしようと思います。
前半の抜群の面白さに比べて、後半が弱いと感じました。ベンジャミン、ミセス・ロビンソン、そして廻りの大人達の濃密な心理描写は思わず声をあげて笑い出しそうなのに、後半、エレーンにベンジャミンと彼女の母親との関係がばれた後からは、ベンジャミンにはエレーンへの一途な想いがあるだけで、前半ほどの葛藤がないのが寂しいです。むしろ、後半はエレーンに葛藤があったと思われますが、エレーンに関するエピソードが少なく、原作もその辺は弱いです。
全体を通して、ベンジャミンを主軸にしているのは原作も映画も同じ。高校時代からエリートだったベンジャミンにエレーンは憧れていた、なんていう解釈も出来ますが、ああいうラストに持って行くにはヒロインのエピソードが物足りない感じがしましたね。
なにはともあれ、「ベーン!」と叫ぶエレーン=キャサリン・ロスのなんと可愛いことよ![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/heart2_arrow.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/75/b9488caeb2b278bb48956054f2939ef2.jpg)
製作費300万ドルの低予算ながら、当時の歴代興行収入4位(当時のTOPは「風と共に去りぬ」)に入る大ヒット作で、アカデミー賞では作品賞、主演男優賞(ホフマン)、主演女優賞(バンクロフト)、助演女優賞(ロス)、脚色賞、 撮影賞にノミネートされ、映画2作品目のマイク・ニコルズが監督賞を受賞しました。
ニコルズはNY批評家協会賞でも監督賞を獲り、ゴールデン・グローブでは作品賞(コメディ/ミュージカル)、女優賞(コメディ/ミュージカル)、監督賞、有望若手男優賞、有望若手女優賞を受賞、英国アカデミー賞でも、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、新人賞(ホフマン、ロス)を受賞し、主演女優賞にもノミネートされました。
(続く)
<ベンジャミン・ブラドックは六月のさる日、東部の小さなカレッジを卒業した。彼はその足で家へ飛んで帰った。>
これが、チャールズ・ウェッブの原作(早川書房/佐和 誠訳)の書き出しです。映画では、オープニングのタイトルロールで、サイモン&ガーファンクルの「♪サウンド・オブ・サイレンス」が流れるシーンですね。ファースト・ショットは、飛行機の座席で背もたれの真っ白なカバーに頭を乗せている、不安げな表情をしたダスティン・ホフマンのアップでした。
日本での公開は翌68年。大好きなこの映画ですが、実は封切時には観ていません。まだ中学生で、劇場で洋画を観だす前だったので、この2、3年後に逢うことになります。
小さな映画館で、確か同時上映が「2001年宇宙の旅」でした。今となっては、「卒業」は原作本やらパンフレット、映画音楽等で、それこそ脳内メーカーでチェックすると100%“卒業”となってしまいそうな時期が長かったので、初見時のイメージは残っていません。むしろ、猿が大きな骨を空に放り投げたり、宇宙船がワルツの中で浮かんでいたり、サイケな色の氾濫するシーンが長すぎるなんていう併映の個性的なSF映画の方をよ~く覚えています。
*
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/dc/a7ba19cf5d74164aeccbd8725f9a4adb.jpg)
製作: ローレンス・ターマン
脚本: バック・ヘンリー、カルダー・ウィリンガム
撮影: ロバート・サーティース
音楽: ポール・サイモン、デイヴ・グルーシン
出演: ダスティン・ホフマン(=ベンジャミン・ブラドック)、キャサリン・ロス(エレーン・ロビンソン)、アン・バンクロフト(=ミセス・ロビンソン)、マーレイ・ハミルトン(=ミスター・ロビンソン)、ウィリアム・ダニエルズ(=ベンの父)、エリザベス・ウィルソン(=ベンの母)、バック・ヘンリー(タフトホテルのクローク)、ブライアン・エイヴリー(カール・スミス)、ノーマン・フェル(下宿屋のおやじ)、リチャード・ドレイファス(下宿屋の学生)/107分
サンフランシスコで法律事務所を経営しているブラドック氏の一人息子ベンジャミンが、東部の大学を優秀な成績で卒業する。両親は、友人達を招いて卒業祝いのパーティーを開くが、当の息子は自分の部屋から出てこない。
学業以外にも、クロスカントリーチームの花形選手、カレッジ新聞の編集長、弁論クラブの代表などなど、輝かしい学生生活をおくってきたベンジャミンだが、今は将来への不安を抱えていた。平凡な人生は送りたくない、さりとて何をしたらいいのか分からない。両親に促されて渋々パーティーに顔を出すも、数分もすれば、また自室に引っ込んでしまった。
そんなベンジャミンに目を付けたのが、ブラドック氏の共同経営者、ミスター・ロビンソンの奥方だ。出来ちゃった婚で学生時代に所帯を持ったミセス・ロビンソンは、さりげなくベンジャミンの部屋を訪れ『主人が車で出かけちゃったので足が無くなったの』と言って家まで送らせる。ベンジャミンの倍の年齢ではあるが、水着の日焼けの後も生々しい身体には余計な贅肉もない。ベンジャミンを娘の部屋に呼び込んだミセス・ロビンソンは、いきなり素っ裸になり『今日でなくてもイイの。いつかその気になったら連絡して』と誘う。ロビンソン氏が帰ってきたので、事なきを得たが、この事は二人だけの秘密となった。
翌週、脳天気に息子の21回目の誕生日を祝うブラドック夫妻。またしても父親は友人家族を招いている。卒業祝いにはアルファ・ロメオだったが、誕生祝いはスキューバ・ダイビングの道具だった。部屋の奥でベンジャミンにダイビングスーツを着せ、ボンベも付けた格好を客人に披露しようというのだ。
こんな馬鹿騒ぎなんかしたくないのに。庭のプールの底に沈んでいきながら、ベンジャミンはミセス・ロビンソンとの刺激的な遊びをしてみようかと思うのだった・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/3e/3e7b644097488c31f5e70c311bd342da.jpg)
2002年に思い出の作品として書いた記事があり、その後、お薦め度を付ける際に五つ★としていましたが、今回再見して★一つマイナスしようと思います。
前半の抜群の面白さに比べて、後半が弱いと感じました。ベンジャミン、ミセス・ロビンソン、そして廻りの大人達の濃密な心理描写は思わず声をあげて笑い出しそうなのに、後半、エレーンにベンジャミンと彼女の母親との関係がばれた後からは、ベンジャミンにはエレーンへの一途な想いがあるだけで、前半ほどの葛藤がないのが寂しいです。むしろ、後半はエレーンに葛藤があったと思われますが、エレーンに関するエピソードが少なく、原作もその辺は弱いです。
全体を通して、ベンジャミンを主軸にしているのは原作も映画も同じ。高校時代からエリートだったベンジャミンにエレーンは憧れていた、なんていう解釈も出来ますが、ああいうラストに持って行くにはヒロインのエピソードが物足りない感じがしましたね。
なにはともあれ、「ベーン!」と叫ぶエレーン=キャサリン・ロスのなんと可愛いことよ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/heart2_arrow.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/75/b9488caeb2b278bb48956054f2939ef2.jpg)
製作費300万ドルの低予算ながら、当時の歴代興行収入4位(当時のTOPは「風と共に去りぬ」)に入る大ヒット作で、アカデミー賞では作品賞、主演男優賞(ホフマン)、主演女優賞(バンクロフト)、助演女優賞(ロス)、脚色賞、 撮影賞にノミネートされ、映画2作品目のマイク・ニコルズが監督賞を受賞しました。
ニコルズはNY批評家協会賞でも監督賞を獲り、ゴールデン・グローブでは作品賞(コメディ/ミュージカル)、女優賞(コメディ/ミュージカル)、監督賞、有望若手男優賞、有望若手女優賞を受賞、英国アカデミー賞でも、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、新人賞(ホフマン、ロス)を受賞し、主演女優賞にもノミネートされました。
(続く)
キャサリン・ロス VS キャンディース・バーゲン
魅力解剖なんていう特集があったな~
前に当ブログでも書きましたが、「卒業」は高校生の頃、好きな男子が「この映画が一番好き」とのことで一緒に名画座で鑑賞。その前に「好き」とこくったら「ぼくも」と言われ、あまりに気あがった状態で見たので、上の空。
それ以降、まともに見ていないので、いつか今一度!
>キャサリン・ロス VS キャンディース・バーゲン
これは、貧乳対決ですかな?
ジャクリーン・ビセット、ジョアナ・シムカス、ジェニファー・オニール、昔の女優さんは美しい~
aupamちゃんのその話、よっく覚えておりんす。
そん時の彼氏、今はどうしてるんでしょうか?
今も「卒業」で検索して、これを読んでたりしたらオカシイよね
なるほど、なるほど~^^
でも、なにせ
>キャサリン・ロスのなんと可愛いことよ
・・・なのですね(^^)
もうとっくに十瑠さんならご存知でしょうけれど
BS・8/1(金)「さすらいの航海」放映ですね!
ロス嬢ご出演ざますよ、十瑠は~ん!!^^
ちなみに7・8月のNHK・BSは豪華なラインナップ!
今からワクワクよっ
父逝去拙記事へのコメントありがとうございました。
知りませんでした!
しかし、我が家はハイビジョンはないので、残ね~ん!!
観たのか観てないのかハッキリしなかったのですが、マルコム・ぎょろ目・マクダウェルと新人女優の心中シーンをふと思い出し、いつ何処で観たんだろう?と考えてる所です。肝心のキャシーちゃんのシーンが残っていません。
TVの吹き替えで観て、彼女のシーンがカットされていたのかも知れませんね。BS-2での放送をきたいしとこ^^
今夜は「リトル・ダンサー」と「昼下がりの情事」ですね
今回初めてこの作品を見たのですが、想像していた内容とのあまりの違いに正直驚かされました。もっと「青春」な感じだと思ってたので(苦笑)。
とはいえ、さすが名作。やっぱり面白いですね。
>前半の抜群の面白さに比べて~
確かに私も同意見です。前半みられた青春特有の青臭さってものが後半はあまり感じ等れませんでしたので。
こちらからもTBさせて頂きました。
これからもどうぞヨロシクです♪
この映画は観る人によってホントに感想が違うんですよね。そこも面白いです。^^
ミセス・ロビンソンは娘と張り合っているとか、そんな感想も読んだことあるし。
これは男女の三角関係とか全然関係ないのにですねぇ。
こちらこそ、ヨロシク
エレーンの心理描写のなさ。自分も思いました。
おそらくは当時の若者であること、それ自体が一番の説明なんでしょうけど・・・。時代が変わってしまうと、??ってなります。
若い方のブログで、主役の三人の誰にも共感できなかったと憤慨されたご様子の記事も読みました。
そうなんだ~と思いましたネ。^^