「後一歩、次の一歩へ!」
士郎正宗原作で、ピクサーを真っ向から迎え撃つフルCGアニメとして、かなりマスコミにも露出していた作品。DVDでようやく観た。
ちなみに当方、『アップルシード』の原作は難解すぎて1巻で挫折した。
主役のデュナンは見事な走りっぷりとキレの鋭いアクションで、今後を期待させてくれるアクション女優だ。
しかし、クロースアップになったときの演技たるや……
ってな感想が、枕詞に「フルCG」が無くても出てくるような、そんな期待をさせられた。
ハッキリ言って、デュナンは役者としてはダイコンだ。
理由は明白、リアルに迫ったCGだから。
いや、CGだからってのはおかしいかもしれないけど。
でも、結果だけを見ると、リアルなフルCGで描かれたデュナンの表情は、瞳に感情がなく、お面をつけたような乏しい表情だった。
人間なら――訓練を受けた役者なら、表情で感情を表現することが可能だ。
アニメも「デフォルメ」や「記号化」によって観る者に感情を訴えることができる。
だが、デュナンにはデフォルメや記号化は禁じられ、真に迫ってるとは言いがたい表情のため、結果的に表情が乏しくなってしまった。
これは表情だけにとどまらず、エキストラの立ち振る舞いや、細かな指の所作に至るまで、アラは探せばいくらでもある。
でも、これをもってマイナスだとは思わない。
あくまでも、これは過渡期の現象に過ぎない。
今後、より研究されることで、より表情は感情を表現するようになり、エキストラの立ちポーズは人間らしく、指の動きは所作を明示するようになるだろう。
それを予感させてくれたのがアクションシーン。
デュナンは女性でありながら、きわめて機敏でしっかりとした走り方をしてくれた。アマゾネスのヨタヨタ感なんぞ過去の遺物だと言わんばかりに。
――なんて、大袈裟に書いちゃったけど、ゲームの世界では当たり前になっていることで、今さらってカンジだけど。
だけど、やっぱ劇映画の中で女性役のキャラクタが、しっかりとした走りを見せてくれるというのは、なんだか嬉しい。
やっとオレの理想に映像がついてきてくれたってカンジで。
で、こういった理想を達成するためには、もしかしたら今後、役者の分業制ってのが確立されるようになるかも知れない。
今回のデュナン役は、声は小林愛で、モーションは三輪明日美と秋本つばさの合計3人の人間が、デュナンという一人の人間を分業して演じている。
理想の声、理想の動き、理想の容姿を揃えるために、役者は分業されていく――なんかワクワクするような、ゾクゾクするような――って考えてから、そういえばゲームじゃ、これも当たり前なのかと思い当たったりする。
とにかく、この作品が記念碑的な作品なることは間違いないだろう。
よりいっそう技術が進歩して、人間とは違った役者が演じるアニメという枠だけでは括りきれない映像が創り出されることが期待できる作品だった。
ストーリーについては全然触れていないけど……士郎正宗が原作しているけれど、だいぶ分かりやすい内容になっている。
でも、オレとしてはそんなことよりも、ストーリーを落とし込むための"ウツワ"としての映像に、この映画の価値を見出したいと思った。
『アップルシード』(DVD)
http://www.a-seed.jp/index2.html
監督:荒牧伸志
出演:小林愛、小杉十郎太、松岡由貴、他
デュナン役モーションアクター:三輪明日美、秋本つばさ
評価:8点(将来への期待に+2点)
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