
七夕飾りと、願い事の短冊を添えた天井飾りを作っている。
おばあちゃんたちの願いを心のなかで呟く。
両手を合わせる。
ガヤガヤとした喧騒のなかで、「静けさ」の時間が降りてくる。
静けさの時間のなんと穏やかなことか?
見えているいるものと、
見えないものが交差する。
「おばあちゃんたちの願いが叶いますように・・・」
と祈る。

デイのおばあちゃんが、
「ねぇ、白い紫陽花を折ってよ」
ボクは俯きながら、クスっと笑って頷いてしまう。
三日間掛けて折ってた白い紫陽花。
明日おばあちゃんに渡す。
おばあちゃんは、どんな顔をして白い紫陽花を観るんやろか?
なんか初恋の時のようにドキドキしてしまう。

先日、
小さい雀が、
ぼくの2メートルほどの近くに来て、
ぼくの顔を見ながら、
「チッチ、チッチ」
と鳴くのです。
ぼくは、
「そうか、そうか」
と、頷いていたのだけど、
なんなんやろか?
なんか、相談ごとでもあったんかな?
と、
思った次第です。

彼女のことをぼくは知らない。
知ろうとする愚かさや、
知らないことの不安定さ、
そんなアンバランスな状態が、
実は、ぼくを和ませてもいる。
幼い頃だ。
ぼくは、レンゲ畑で大の字になり、
鼻にツンとくるレンゲの花の匂いの中に、
紛れるのが好きだった。
静かに流れる白い雲。
ゆっくりと流れる時間。
たまに蜜蜂たちが飛んできて、
ぼくの裸足の足指の股にもぐり込んで、
その8本の脚でくすぐる。
ぼくは笑い転げてしまう。
蜜蜂たちは、ぼくの足指の股に特別な蜜が隠されていると思ったのだろうか?
蜜蜂たちのことをぼくは知らない。
十四歳の時の夏休み、
ぼくは初めて物語を書いた。
そして、その物語がどんな話だったか忘れてしまった。
その頃から、ぼくはかくれんぼを始めた。
づっと隠れていたいのか?
見つけてほしいのか?
わからないまま。