先日、西尾維新さんと荒川弘さんの対談を読んだんですが、
彼ら二人は「物語を終えるときは、プラスマイナス0を目指す」と言ってたんですね。
読者の心に何か大きな感情を引き起こしたり、深い余韻を残したりする、そういう作品はもちろん素晴らしいけれど、
自分たちは、最後に何も残さない、きれいな終わりを目指している、と。
龍騎を見終わって、「最後はプラマイ0になる」ってこういうことなのかな、とふと思いました。
アマゾンズの視聴後もそうだったんだけど、
もう視聴中は嵐のようにぶわーっと、そりゃもう大きくかき回されてたんですが、
最終回でストンときれいに着地した感じで。
もう何も言うべきことはない、っていう。いまそんな感じです。
うん、毎回恒例の感想まとめページなんだけど、言うことが見つからないとか
どうしようねコレ(苦笑)
例えるなら、龍騎は、スノードームのような印象があります。
神崎士郎がたったひとつの願いを叶えるために、
何度も何度も、同じ時間を繰り返し続ける、閉じた世界の物語だった。
最後に神崎士郎がタイムベントで現実世界を解放してくれたから、
私たちが見てきた龍騎の世界は、現実から切り離され、スノードームの中に封じ込められて。
いまでも覗き込むと、彼らが必死で生きていた姿がキラキラと輝いて見える。
悲しいけれど美しい世界だったなと、慈しむことができる。
そんな感じです。
ここではないどこかの、完全に閉じられた世界の物語。
だから、なんとなく、プラスマイナス0な気分なのですよ。
うーん、言いたいことを表現できてる気がまったくしない。まぁいいや。
けっきょく、最後まで勝ち残って願いを叶えたのは、優衣ちゃんだったんだなと。
劇場版関連、神崎士郎に宣戦布告した優衣ちゃんがリセットされたのは、すごく残念だったんだけど、
やり直した世界でもやっぱり神崎士郎と戦い、最後は和解できたとか、すごく胸熱です。
優衣ちゃんと対になる存在、恵里さん。
彼女も優衣ちゃん同様、新しい命なんて望んではいなかったけれども、
でも、それが蓮さんの願いだと知っていたから、蓮さんの望むまま、新しい命を受け入れた。
あるいは優衣ちゃんも「それ」を選択する可能性も、あったかもしれないんだよなと。
でも優衣ちゃんは、世界が繰り返されるたびに、神崎士郎を拒否し続けたんじゃないかな、と思う。
そう考えると、おそろしく強情な二人の兄妹喧嘩である。
最後の最後に優衣ちゃんの背中を押してくれたのは
無力な自分に崩れ落ちる真司くんの姿(
47話)だったと思うし、
逆に言えば、恵里さんにとってこの世界で大事なものは
蓮さんたった一人だけだったんだっていう事実も、切ない。
蓮さんだけが大事だったこの世界で、
蓮さんを失ったあと、彼女に一体なにが残されたんだろう。
いやもう本当に、蓮さんの半端ないエゴが怖すぎますよね。
「それでも生きていて欲しい」んだぜ?(
38話)
「それが間違っているかどうかは関係ない」という蓮さんのセリフ。
「それが正しいかどうかじゃなくて、俺もライダーのひとりとして、
叶えたい願いが、それなんだ」(49話)という、真司くんのセリフ。
「正義」とかいう、実体のない、何か都合の良い言葉に頼るのではなく
想い、願い、欲望。「こう在りたい」という強い気持ちこそ、人を動かす原動力たりえるのだと。
そういう熱いものによって、人は生きるべきなのだと。
そういう物語でした。とても素晴らしい作品でした。ありがとうございます。
さて、最終回感想では細かいことをグダグダ言わず、格好よくスパッと切り上げたわけですが、
やっぱり。どうしても言わずにはいられなかった。北岡センセと浅倉の最後。
まとめ感想で書く話じゃないとは重々承知ですが、いろいろスルーしてここに書く!
浅倉の目の前に現れたゾルダ。
実は私、記憶をいろいろ失ってるんですが、視聴2周目でして、
このゾルダを見てなぜか突然、「これ吾郎ちゃんだ!」ってことを思い出したんですよね。
すごいタイミングで思い出しちゃったので、心の中、修羅場ですよ。
もうね涙ボロボロ。
んで。浅倉も何かを感じ取ってゾルダを見る。変身が解けて吾郎ちゃんが出てくる。
なんやかや言って、北岡センセは最後まで吾郎ちゃんを守り続けてたじゃないですか。
ライダーバトルに関わらないように。自分亡き後も一人で生きていけるように。
「できなくていいんだって。なんかもう、さ。ほんと、できなくていいよ」(
47話)
神崎士郎の宣言した「ここに居なければ脱落とみなす」(
48話)のセリフと、
北岡センセが必死で守り続けた吾郎ちゃんが、いまこの戦場にいる、ということから
「あの弁護士野郎が自分の知らないところで勝手に死んだ、俺が殺してないのに、死んだ」という事実を知り
怒り狂って、目の前の警官隊に突撃していくっていう。その流れがね。もうね。
浅倉は、傷つけることでしか他者と関係を築けない人間なので、
その基準でいくと、「次はお前が相手だ=お前のことに興味がわいた」だし、
北岡センセに対する執着は、もはや愛と言い換えることが可能なんだよな、浅倉的には。
浅倉は、北岡センセや蓮さんが欲していた「強さ」を持つ人間だった。
でも、彼にはかなえるべき「自分の望み」がなかった。皮肉なことに。
浅倉が望むべきは、「自分以外の人間がいない世界」だったんじゃないかな。
おそらくそこでなら彼は、他者との関係にいらつくことなく、自由に生きられたと思うんだ。
まぁ、それって最悪のエンディングですけどね(苦笑)
ちなみに。最終回は「浅倉vsゾルダ」「蓮vsオーディン」が並行して描かれてましたが、
時系列で言うと、
・浅倉vsゾルダ戦(ゾルダ死亡)→警官隊突入(王蛇死亡)
・真司くん蓮さんの、対レイドラグーン戦(龍騎死亡)
が同時進行?で、蓮さんが最後の一人に確定しオーディンと対決、という流れらしいです。
ちなみにちなみに。私は登場当初の北岡センセを本当に強いと思ってまして。
10話とか
14話とか。ブレがなく、まっすぐで、すごく強いと感じていて。
でも、演じてたご本人いわく「本当は弱い人間だから、それを隠すためにああいう行動をとってたんだと思う」
と語っていらしたので、うーん、まだまだ読みが全然足らないなぁと頭をかいている。
その他いろいろ小ネタ。
・ネットで「蟹刑事」と呼ばれている須藤さんですが、私はてっきり刑事を名乗る犯罪者だと思っていて。
でも本当の刑事設定だったんですね。悪党じゃん! 刑事なのに悪党とか、本気で悪党じゃん!(すごくいまごろ)
・「年長組」に勝手に分類してた浅倉ですが、Wikipedia見たら
真司くん23歳、蓮さん24歳、浅倉25歳でした。若かった。
・しかしやっぱり浅倉の存在感すごかったし、キャストさんそれぞれのインタビューを聞いてると
みんなすごく浅倉こと萩野崇さんを意識してるのが伝わってきて、なんかもう納得するしかない。
・蓮さん役の松田悟志さんは、普段は関西弁らしいのですが、
いわゆるコテコテ関西人って感じじゃなく、はんなり関西弁なのでしゃべるのがすごく良い!そういう関西弁もあるのか!
・優衣ちゃん役の杉山彩乃さん、本人は大阪のおばちゃんのような人柄で度肝を抜かれました。
物静かなミステリアス少女で優衣ちゃん役にぴったりだと思ってたのに、違ったんだなぁ。
・私の大好き芝浦淳くんこと一條俊さん。やっぱり「もっと活躍したかった」とか言ってて、激しく同感。
芝浦淳好きだなぁ。かわいい。
・井上先生と靖子にゃんも対談で
「俺のガイを勝手に殺しやがって」「勝手じゃないですよ!じゃあ自分で殺せば良かったじゃないですか!」
とか穏やかならぬ会話してて、笑った。まぁしかし、あれはあれで死の呆気なさが良かったけども。(
19話)
・東條くんこと高槻純さん。 彼は東條役を敢えて悪役として演じ、
石田監督に「お前は東條を悪役にしちまったのか!」と言わせたらしい。
逆に聞きたい。東條は悪役じゃなかったのか!? え?どうなる予定だったの???
・そして。彼は見るからに陰鬱なキャラだと思ってたのに、
「前作でウルトラマンやってたので、そのイメージを払拭したくて」
とか言ってて、え!?英雄だったの!!!ってなってる(笑)
書くことねーよ、と言いながら、気がつけばこんなに長々と書き連ねてましたよ。
というわけで。龍騎小説版の感想を挟んで、次回は「響鬼」予定です!