黒崎の命令により、イユは再び千翼を駆除対象と認識する。暴走する千翼は、アマゾンとしての本能を抑え切ることはできなくなっていた。「生きたい」と願う少年の想いは、もう誰にも届かないのか。
NOWHERE。こういう英単語って、日本語とは違うなと、異文化を感じます。
WAY TO NOWHERE。味も素っ気もない訳をつけるなら「八方塞がり」
WAY 「道」を提示しておきながら、そのつながる先は NOWHERE「虚」なのだ。
それはなにか、逃げ場がないという圧迫感以上に、
なにもない空間に放り出されたような無力さを、感じさせる。
「でも俺は生きたい!」「生きたいんだ!!」
それはもう千翼のいつわらざる本心というか、唯一にして絶対の願い。
その気持ちを、誰に否定できようか。
「そうだ・・・俺はもう・・・、我慢しなくて、いいんだ」
と、空腹に耐えかねて目の前の女性を襲おうとする千翼。
その姿は、狩りの経験のない若い肉食獣が、ウサギの姿を狙う動きとそっくりなんですよ。
ドキュメンタリー番組でそんな幼いハンターの姿を見たら、思わず応援する人も少なくないと思うんだが、
それがなぜ、千翼は全否定され、周囲を取り囲まれ銃撃されるのか。
人間を捕食するから、なんですけどね。
しかし。アマゾン化して殺された友人と、それに食い殺された友人、
二人の仇をとるために事件に絡んでしまった、このシリーズで唯一の一般人、長瀬くんも、
いつのまにか、その根源たるオリジナル(千翼)を守るために、必死で走り回っている。
アマゾン駆除を行っていた駆除班たちが、最後はアマゾン(マモル)の側に立ってしまったことと
似たものを感じます。
なにをもって善となすか。なにをもって悪とするのか。
その判断基準は、実はひじょうに曖昧で、いくらでも変容する可能性を秘めている。
だから、「正義」なんて曖昧なものをふりかざして戦ってはいけない。普遍の正義は存在しない。
人は常に、自分の中にある「正義」に問い続け、その答えを「自分で」導き出さなければならない。
「水澤くん。人は、始めることはできても、終わらせることはできないのだよ。
加納くんのように、死んでさえ新たな始まりをもたらす。
終わらせようとして、常に始めているのだ。君も。橘くんも。あの、鷹山仁も」
生きてたのかよ野座間のご老体!って話ですが、相変わらずの存在感。
全てを終わらせるためにトラロックの雨に打たれて戦った鷹山仁が、
結局のところ、この新型アマゾン騒動を起こすきっかけとなっているのが、皮肉としか言いようがない。
そういや。前回で確実に退場かと思われていた橘局長ですが、
あの状態でもまだご存命だったとは。
イユの命を脅かした加納さんは確実に仕留めても、
自分を「母殺し」と断罪した橘さんの命を、確実に奪うことはしなかった。できなかった?
それは、橘さんに怒りを覚えつつも、「その罪」を否定しきれなかった、罪を、認めたということか。
そして衝撃のラスト。謎のアマゾンの正体。
いや、なんかすっかり忘れていたんですけれど、そもそもこのシリーズ、開始当初の番組説明が、
「アマゾンに育てられた少年・千翼と、アマゾンに殺され生体兵器として戦う少女・イユを軸とした新たな物語」
だったんですよ。「アマゾンに育てられた少年」なんですよ、千翼は。
「千翼を育てたのが七羽さん」ならば、そりゃもう論理的帰結ってやつですよね。
だったら。じゃあむしろ「千翼は七羽さんを食べてはいない」ってことにならない?
アマゾンは人間を食らうんですよ。アマゾンは、アマゾンを食べないんですよ。
(アマゾンを捕食してた仁さんは、おそらく唯一の例外)
千翼がイユに対して
「俺が食いたいと思わないでいられる人間」(
2話)と評したのも、
彼女が「人間ではない/アマゾンである」から。
彼らがなんらかのセンサーで同族を感知することができるのは、
裏を返せば、外見上では見分けのつかない状態で、食料たる人間だけを的確に見つけ出すためではないのか。
じゃあ。じゃあどういうことなんだ一体。どういうことなんだろう(混乱)
そもそも、七羽さんはオリジナル、なんだよね?(確定していませんが、そんな流れだよね?)
新型アマゾンに感染力はない、溶源性細胞となりうるのは人とアマゾンの遺伝子を持つもののみ。
だとしたら、七羽さんはどうやってアマゾン化したの。後天的だから、仁さんと同じ手段?
それって医学的な手段ですよね。
機会があったのは、出産のためにイユパパの病院にお世話になってた期間だけだと思うんだが、
それはたぶんあり得ない。あり得ないよね?
そもそも、慈愛の権化みたいに思ってた七羽さんが人間を瞬殺するとか、
ちょっともうついていけないんですけど。
「おまえのかあさんが、送ってやってくれって言ってるんだよ。おまえが『ヒト』でなくなったら」
と、七羽さんの遺言を実行しようとする仁さんですが、生きてる!生きてるから七羽さん!
透明化した姿は、現実の姿をもたないアマゾンなのかと思いましたが、
美月にも把握できたことから、光学迷彩かなにか? 眩しい白さが、イユのカラスアマゾンとの対比だなぁ。
そしたら。この流れは「仁さんvs七羽さん」に至るのか。まじか。
でもなぁ。自分の子供ですら本気で殺そうとしてる仁さんですから。
そもそも「全てのアマゾンを殺す」というのも、自らが生み出したアマゾンへの愛ゆえの行動ですから。
「七羽さんだから」という理由で例外にはしない。確実に。もう地獄だな今後の展開が。
その他。福さんのシーン。
今回のベストofひどいシーンですよ。絶望的な展開すぎて辛い。
その後どうなった、っていうのを見せないままで終わるとか、
いやもう結末はひとつしか思いつかないんだけど、あぁもうそんな光景見せてもらわない方が良いかも逆に。
***** いただいたコメント受けての追記 *****
なんか、いつの間にか七羽さんを「慈愛の権化」みたいに感じてたんですけど、
それは8話の回想シーンから受けた印象が強いんですよ。私にとっては。
そしてあの光景は、いま思えば、「鷹山仁」視点の光景だったんじゃないかと。
仁さんの変貌をすべて受け止め、寄り添い、支え、彼の子供を産んでそっと姿を消した
そんな七羽さんの姿は、すべて「鷹山仁」が見た光景であって、
そこに七羽さん自身の感情は表現されてなくない?
自分の遺伝子を受け継ぐこどもを殺す。これは生物としてのタブーであって、
あの鷹山仁ですら、それを完遂するためには「自らの正義」だけでは足らず、
なにか他の存在にすがる必要があった。彼にとって絶対的な何かが。
それが七羽さんであったと。
8話のあの回想は、もちろん現実に即した内容だったとは思うけど、
あそこに描かれていた七羽さんは、鷹山仁により神格化された女神だったのではないか。
「おまえのかあさんが、送ってやってくれって言ってるんだよ」の言葉は
コメントでいただいたとおり「何を言ってもそうとしか伝わらない状態」なんだと思います。
もはや今の彼は、狂信者に近い状態になっている。
であるならば。
上の感想で「たとえ七羽さんであっても、仁さんはアマゾンを殺そうだろう」と書いたんだけど、
いまの彼の拠り所となっている女神(クラゲアマゾン)は、
「全てのアマゾンは俺が殺す」というルールより上位なのではないか?
前のエピソード <<< >>> 次のエピソード