映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、ISに奪われた息子を助け出すために結成された女性戦闘部隊を描いた「バハールの涙」です。
本作第71回のカンヌのコンペティション部門の出品作で、ノーベル平和賞を受賞した人権活動家のナディア・ムラドさんと同じくヤズディ教徒の女性で結成された武装組織のリーダーバハールを主人公に、隻眼の女性ジャーナリストの取材をもとにISと戦う女性兵士が、誘拐されISの戦闘員にされる子供たちを救出する物語です。
女性戦闘員のリーダーのバハールを演じるのはパターソンやパイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊にも出演し、世界の美しい顔100人にも選ばれたゴルシフテ・ファラハニ。澄んだ大きな瞳と悲哀に満ちた雰囲気が印象的で、自らの息子を救出ために戦う戦闘員の悲壮感に満ち満ちてますが、その瞳の奥に強い意志が感じられ惹きつけられます。また、紛争地で片目を失ったジャーナリスト役のエマニュエル・ベルコが夫を亡くし、子供をフランスに残しながらも、ジャーナリストとしの使命を全うする姿も清々しいです。
わが子のためには、自らの命を惜しまず戦う姿に女性としての崇高な母性を感じます。また、女性により命を失った者は天国に行けないとの教えから、ISの戦闘員が女性に向かって命乞いをする姿に、戦争やテロに対する虚しさを感じます。
どんな時代でも、戦争の最大の犠牲者は女性や子供たち。弱い人々を守るのは本来は男性の役割なのに、一番の加害者が男性であることに、自らの性に対する戒めと平和な社会を築く使命を強くする作品でした。