本年度アカデミー賞作品賞を受賞した話題作「アーティスト」を観ました。
舞台は、サイレントからトーキーに映る映画草創期。サイレントのスター男優とトーキーのスター女優のラブストリー。
全編モノクロの画面にスクリーンにスクリーンを重ねた、すべてが映画のためにある作品です。
そして、サイレントからトーキーの時代を描きながら、すべてがサイレント仕立てで進み、簡潔なセリフだけで進むのも、セリフの奥に隠された情感があふれ、想像力を描き立てられました。
今の時代と異なる、独特なテンポとノスタルジーなBGMは、大きな感動や涙は生まれませんでしたが、この時代のほのぼのとした幸福感を共有できました。
映画を彩るキャストも、まさにこの時代にピタリとはまり、主演のジャン・デュジャルダンと相手役のベレニス・ベショは、ハリウッドスターをその豊かな表情とダンスで見事に演じきり、運転手役のジェームス・クロムエルは、主人にこよなく愛する忠実な寡黙なスタイルで、スクリーンに緊張感を与えていました。
そして、主人公の愛犬アギーの名犬振りが、この映画の重要なファクターとなり、主演級の演技です。まさに助演男優賞ものです。
映画「アーティスト」はフランス作品でうが、ハリウッドが舞台を提供して制作されました。エスプリを加えた、ハリウッドへのオマージュと言えます。
この映画は、旧きものを大切に育み、新しいことへ挑む、フランスだから作りえた作品ではないでしょうか。
メイキング映像を見ると、この映画の古くて新しい映画であることがわかると思います。