フランシス・マクドーマンド主演、新鋭監督クロエ・ジャド監督の現代の遊牧民の人生を描いた「ノマドランド」を鑑賞してきました。
スリービルボードでアカデミー賞主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンド。その個性的でシリアスな演技は今も強く印象に残ってます。彼女が今度は夫を亡くし車上生活者としてノマド・現代の遊牧民の女性役と知り、その演技に注目して楽しみにしていました。
企業城下町に暮らしていたファーン。リーマンショックによる倒産で住む町と家を失ってしまい。夫の残したバンに想い出の品を積み季節労働の仕事をしながら車上生活者として、放浪の旅を続けています。
職場仲間とも一定の距離をおきながら独り身の生活を楽しんでいたファーンでしたが、あるトラブルがきっかけで誘われていたノマドのキャンプに参加します。そこから新たな旅が始まっていきます。
アメリカらしいロードムービーと思いきや、主人公は貧しい高齢の車上生活者たち。彼らの車は薄汚れた古い車ばかりですが、工夫を凝らしたライフスタイルの縮図のような空間で、大自然を愛し車での旅を楽しむ生活は、お金では得られない魅力があります。そして、主人公のファーンも含め女性たちを中心に描かれているところが新鮮です。作品の原作者のジェシカ・ブルダーも新鋭監督のクロエ・ジャドも女性、ジェンダーが叫ばれていますが、女性らしい視点も作品の肝だと思っています。
ファンを演じたフランシス・マクドーランドは、スリービルボードでの強い女から打って変わり、亡き夫との思い出を胸に抱き自由な生活を楽しみながらも、どこか孤独と不安を抱える物静かな女性を演じています。そんなマクドーランドの違う一面が見えてとても魅力的でした。
ファンを含め、ノマドたちは一人になるとそれぞれの過去を抱えながら自由という名の孤独を楽しんでいるかのようでした。そこには、先々の不安や迎えるだろう死へ恐れなどなく、それぞれの人生の旅路を進んでいるようです。映画を通じて人生の楽しみ方は何かを学べるような作品です。
今までとは、一味も二味もロードムービーを楽しんでみてください。