読書の森

伊集院静 『悩むが花』



伊集院静の人生相談『悩むが花』が週刊誌に連載されている。
辛口ではあるがユーモアたっぷりのアドバイスが面白い。

最近の『悩むが花』は伊集院静の人生観が垣間見られた。

難病を患い、それを励ましてくれた既婚者の同僚を好きになった女性、
自分のイケメン好きを治したい女性、
おじさんにモテたい女性。
三人の未婚女性が相談者である。

伊集院静は質問者が望みの状況になった場合、それに耐えうるか否かを文面から判断して、一見冗談っぽいが相手を思いやる答えを出している。

例えば、イケメン狩りに励めとか、若い男に限らずオジサンは本来ウジウジした生き物だとか。
おちょくってる訳でなく、相手の女性がこの答えを笑える人だと見極めている。

恋人選びのコツは一言では言えないのだ。

洒脱な口調で相手の気持ちを和らげる、相手に選択肢を考えさせるのだ。
その持って行き方が上手いなと思う。

伊集院静は、過去に最愛の妻、夏目雅子を白血病で失った後、酒浸りの放蕩生活を送った時期があった。
最終的にその彼を救ったのが先輩、色川武大の暖かい見守りだった。
今は家庭を持ち、落ち着いた良い表情をしている。

私は当時の伊集院静のテレビ番組をリアルタイムで見ている。
今とは別人の様に絶望して苦しんだ表情があった。

苦しみをしっかり受け止めて乗越えて道は開くのだろう。



相談に戻るが、難病を患った女性の文面は非常に一途で余裕が無かったらしい。

彼女は同僚に深く感謝し、それが思慕になり、さらに自分の心も身体も受け入れて欲しいという熱い思いに変わった。
相談文を読んで、伊集院静は彼女を危うんだのだ。

「あなたもそのお相手も苦しむ結果になります。世の中にはあなたにふさわしい人が、どこかであなたと逢うのを待ってます」
と真綿で包む様な優しい回答を出している。

伊集院静は恋の形に謹厳実直な人では全然ない。
「恋をするな」なんて野暮は言わない。
相談者が、今もなお難病を持ち、相手と同じ職場である事から、小説家らしく展開が予想出来たのだろう。
弱い彼女は噂や世間に押しつぶされてしまうと気遣ったと思う。

実りそうもないと自分で分かっているのに、恋に陥る事がある。
その気持ちは、ちょっとやそっとでどうにかなるものではない。
好きになった時の初々しい気持ちを大切に、そっとしておいた方が当人の幸せだ。
いつか時が最良の答えを出してくれると、私にもやっと分かってきた。

恋を喪う事も、愛する人や家族を喪う事も激しく心が痛むものである。
もう立ち直れないと倒れこむ事もある。

苦しみを通り越して、周りがホッと安心出来る人たちに恵まれた時、それを幸せと言うのではないか?

喪失の不安を味わったからこそ、安堵の喜びがより深く味わえると私には思える。

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「書評」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事