バックミラーに映る泣きそうな女の顔を見た時から、相沢大輔の悪い虫が目を醒ました。 相...

女は前野美結38歳、一流企業の社員である。 課内の忘年会の帰り道、正体不明の男に付けられ...

大輔は優しい声を作った。 「お嬢さん(年喰ってるようだが、こう言えば喜ぶからな)、ご自宅...

美結は17の時、両親を亡くした。 親戚も少なく一人っ子の彼女は、誰にも頼らず生活してきた...

美結の耳は微妙な物音は勿論、普通の会話さえ聞こえなくなった。 大声を出されるとやっと聞...

確かに高級住宅地に建つマンションの建物は美結のものであった。 ただし、それは借地権だけ...

相沢大輔は仕事の合間に美結の事を調べた。 自由な稼業で、しかも商売が暇で時間はたっぷり...

大輔は結婚指輪をいつも外したままである。 女を騙す時に「女房と別居中だ」と言う。 更に...

我を忘れて身構えた大輔は、美結がスマホをかざしているのを見た。 「今緊急電話しましょう...

「おもひ川 流るる水の あわさへも うたかたびとに あはできえめや」 ...