The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

バードドラゴンティ、そして秋。

2012年10月20日 | ヒデ氏イラストブログ

ひで氏です。

たまに行くチャーハン専門店がある。
チャーハン専門店といっても、モールのフードコートにある店舗で、路上の店舗ではない。
ただ、チャーハンはうまい。

厨房まで丸見えのシースルー構造になっており、料理人が大きな中華鍋でチャーハンをパラッパラに炒めている様子もよく見える。
その時の人出にもよるが、この料理人でありなおかつ店長っぽい中国人男性がオーダーをとるときもあれば、バイトの若者が窓口になるケースもある。

すでに何度か利用した時のこと。
ここは単品で頼むと、同じ値段で量を大盛りにしてくれる。しかし私ひで氏は、あえて普通でいくのだ。
普通でもそれなりの満足できる量なのだ。あえて食べ過ぎることはない。

あるときいつもと同じようにオーダーをした。この時点では、毎回前述の中国人店長A氏(としよう)がオーダーを取ってくれていた。
すると、注文した直後にクーポンをくれた。「飲み物無料サービス」とあった。
クーポンの常識的に、次回から使うものだと思いただ単にもらうと、「今回からドウゾ」という。

あ、そうなのと思い、じゃあ、ともらったばかりのクーポンを返すようにして「じゃあ烏龍茶もらいます」と言った。

すると、差し出したクーポンを押し返すようにして店長A氏が言う。
「また次回オツカイクダサイ」。

そんなクーポン珍しいな。。。なんとも不思議な現象だった。

それからしばらくして、また利用した。オーダー窓口は店長A氏だった。
クーポンを半信半疑で差し出し、烏龍茶くださいと言った。すると店長A氏は真っ直ぐに私ひで氏の目を見つめて「また次回オツカイクダサイ」。と来た。
特筆すべきは、自分のあとオーダーしていた人もとても似た注文をしていたのに、クーポンの利用もなく、新たにクーポンを渡す様子も皆無だったことだ。

「特別扱い」

言葉が頭をよぎった。

どうも何かの永久会員にクオリファイされたのだろうか。。。
得しているのだがどうも腑に落ちない気持ちで、それでもありがたくクーポンを財布に入れなおした。

こうなってくると、このクーポンがいつまで有効なのかという好奇心もあり、このモールにくると迷わずこの店に直行するようになった。
この日、オーダー窓口は初めて、バイトの若い女性だった。彼女も中国人だった。同じように注文し、クーポンを出してみた。

烏龍茶は無料になったが、クーポンは回収された。
厨房の奥の店長A氏を盗み見た。店長はチャーハンを炒めるのに集中して、全く目が合わなかった。

失恋したような不思議な感覚だった。

数週間後、一時的に味わったVIP待遇のことも忘れたある時、このモールを訪れた。
やはり、数あるお店の中からこのチャーハン店を選び、並んだ。オーダーは前回と同じく、中国人女性のアルバイト店員がとっている。

手持ちのクーポンは前回回収されたため、ない。別に損したという気もなかった。
そして女性に告げた。「○○チャーハン、普通で」。

「ハイー」 

何もかも普通だった。当たり前なのだ。むしろ何もなかったことに少しがっくりした自分を恥じ、お金を払おうとすると、

「请给一个免费的饮料该人」

鋭く低い声で中国語で何かを言われた。
が、すぐ気づいた。言われたのは私ではない。バイトの女性だ。
言ったのは奥の厨房にいた店長A氏。顔も目も向けず、中華鍋のチャーハンを見つめたまま言った。

女性は「え?そうなんですか?」という感じの中国語で何かを言ったが、店長A氏は無言だ。
そして女性は私の方に向き直り、「飲み物無料でオツケシマス」と言った。

様々な飲食店が軒を連ねるフードコートで一切浮気をせずに通ったからか。
同額で大盛りにできるところを敢えて普通で行くことを潔しと評価されたからなのか。
最初のサービスでコーラでもなくオレンジでもなく烏龍茶を選んだことが何か重大なことだったのか。

原因はわからない。

店長A氏が作ったチャーハンを改めて取りにカウンターに行ったとき、店長を見た。
しかし直視できず、一瞬しか見ることができなかった。
自分の耳が少し赤くなっているのに気付いた。
わずかに見えた店長A氏の目は、相変わらずチャーハンに向けられていた。


動揺した私ひで氏の心の動きを表すかのように、烏龍茶の中の氷がひとつ、コロンと動いた。





最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ひで)
2012-11-02 12:33:02
>aikoさん
そうか、目が。。。!だからなかなか合わせてくれなかったのか!
返信する
Unknown (aiko)
2012-10-29 14:20:17
hahaha・・・
まちがいなくヒデ氏の眼力のなせるワザです。
ご本人お気づきでないのでしょうか・・・フフフ
返信する

コメントを投稿