さて、この信貴山、名前のとおり奈良県と大阪府の境の
かなりな山の中にあります。
なので境内にも起伏がたくさん有って、
日頃運動不足な身にはなかなか大変。
「絵巻を見る前にお参りを」と行った
絵巻の主人公である命蓮聖のお墓も
結構階段を上がる場所でしたが、
それよりキツかったのが『空鉢護法』
絵巻に出てくる鉢に因んだと思われるお堂でしたが
「山頂」にあるので
本堂などの境内から更に600メートルの山道を行くのです。
「『一言祈願』を叶えて下さるそうだけど、
祈願のためにここに通ってたら神頼みの前段階の、
本人の根性と体力も鍛えられそうな…!」
そんなこんなでお参りをして、お楽しみの『信貴山縁起絵巻』を鑑賞。
普段も複製を常設してるそうですが、
特別公開では3巻ある絵巻の原本を順次公開するそうで
『飛倉』はその1巻です。
(ストーリーは、ご存知ない方のために後の追記で書きます)
「とにかく、登場人物の表情や動きが
生き生きとしていて素晴らしい!!」
米倉が浮き上がりだして
ビックリしたり追いかける長者の家人の姿はもちろん、
空飛ぶ米俵の列に山の鹿も「?!」とした様子なのが、
一目見ただけでも明らかに分かるのです。
私は直前に解説本も買って予習しましたが、
この絵巻の絵を初めて見たのは
まだ子供の頃の絵本みたいな本で、
「よく、漫画で使われるお金がなくなる表現で
『お札に翼が生えて渡り鳥の列みたいに飛んでいく』けど」
翼はありませんが、
絵的には正にその『米俵バージョン』が
ずっと昔の絵で描かれてたのが、とにかく印象的でした。
「漫画でそういう表現に慣れてる現代人が
着彩された色がかなりあせた絵を見てこうなんだから」
絵巻が作られた推定12世紀中頃としては
どんなに斬新な作品だったかと…!!
展示されてた『霊宝館』には
『聖徳太子が戦勝祈願する話』を題材にした
ずっと後世の絵巻物も展示がありましたが、
そちらは(登場人物や題材の都合もあるにせよ)
「人々が無表情で、いわゆるハンコ絵」
見た時の魅力としては明らかに差が。
「これほどの作品が850年ほど前には
もう作られてたのを見たら、
むしろ日本でマンガやアニメが発達したのは
かなり遅かったくらいなんじゃ…?!」
そう感じた鑑賞でした。
(『飛倉』の簡単なストーリー紹介)
時代は10世紀初め頃、
信貴山に命蓮聖という
徳も高く法力も強いお坊さんがいた。
命蓮は托鉢の鉢を
京都の山崎に住んでいる裕福な長者の家まで
法力で飛ばしてお布施を貰っていたが、
ある時、それをうるさくなった長者が
米倉に鉢を入れて閉じ込めてしまった。
すると、鉢はひとりでに倉を飛び出し、
更に米倉ごと宙に浮き上がらせ乗せて、
そのまま信貴山まで空を飛んで帰ってしまった。
慌てて追いかけた長者は命蓮と交渉して
『倉の建物だけは寄贈して、中の米俵は全部返してもらう』
ことになったが
「正直、奈良西部の山の中から京都の山崎まで
大量の米俵を運ぶのは大変
(直線距離でも約34キロ)」
困っていたら命蓮は例の鉢に米俵を一つ乗せる様に指示。
すると、鉢はまた浮かび上がり、
今度は鉢を先頭に残りの俵も次々と空を飛んで
元の長者の家まで戻っていった。
…そういう物語ですが、
「これ、法力が超能力だと考えたら、
立派にSFな話だよ?!」
なお、この命蓮というお坊さんは
絵巻の2巻では京の都にいる帝の病気を
法力で治したりもしてます…。