風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(番外編) 其の壱

2010-06-04 15:36:44 | 大人の童話

六小が開校して四年めの昭和四十五年、夢は六年生になりました。来年の春は、

もう六小ともお別れです。

『小学校生活も、あと一年かぁ。そしたら、もう六小さんともお話できないな。まあ、

静かになっていいけど。』

夢がこんなことを思っていると、さっそく六小がやってきました。

「ゆーめちゃん、お・は・よ・う!今日も元気に、いってみよーう!」

「はーい、おはよう。あいかわらず、元気なキャピキャピぶりだね。今日は何の用?」

夢が笑いながら返事すると、六小は、

「何の用って別に何もないけど。あ、そうだ。ねえ、夢ちゃん、逆上がりできるように

なった?」

と、逆に夢に訊いてきました。

「う・ん、知ってるくせに。見てのとおり、まだ。卒業までには何とかって

思ったんだけど、このぶんじゃ、きっとだめね。あ~あ、四小さんと約束したのに

何て言おうかな。」

すると六小は、体全体をキラキラ光らせながら言いました。

「ふ~ん、ま、いいじゃない別に。夢ちゃん、一所懸命練習してるのに

できないんだもの。きっと、四小さんだってわかってくれるよ。」

「そうかなあ。」

「うん、大丈夫だって。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして・・・・翌年、桃の花咲く頃・・・・・・・・

夢は六小に言いました。

「うふ、やっぱりとうとうできなかったね。まあ、しかたない、か。」

六小が、笑って答えました。

「うふ、そうね。でも、ま、いいんじゃない?」

夢は、とうとう最後まで、逆上がりができませんでした。

そう、大人になっても・・・です。