「それにしても六小さん、貫禄ついたねえ。」
夢が六小を仰ぎ見ながら言うと、
「ホント?」
と、六小がうれしそうに言います。
「うん、すごく貫禄ついた。」
夢はそう言って、まじまじと六小を見つめました。
「えへ、そうかな。」
六小は照れていました。
「さすが、43年も経つとちがうね。歴史感じちゃった。六小さん、これからも、百年
めざしてがんばれ!フレー、フレー!」
「ウフフ、そーお?ありがと。でも、とりあえずは50年をめざす。」
そう、六小はあと7年で創立五十年を迎えます。夢は、ふっとため息をついて
言いました。
「50年って言ったら、六小さんも、開校して半世紀を迎えることになるんだなぁー、
ハァ~。」
「何?ため息なんかついちゃって。」
六小が怪訝そうに訊きます。
「うん、あのね、すごいなーって思って。」
六小は、ますます怪訝そうに、
「そーお?」
と訊きました。夢は、「そうよ、すごいのよ。」という感じで、
「うん。だって、わたしが六小さんの所にいた時は六小さん、まだ、できたての
ほやほやだったんだもの。それが、今や開校して43年。」
と、もう一回ため息をついて言いました。
「夢ちゃんも、歳とるわけだよね。」
「まっ、失礼ね。」
「本当のことじゃない。」
「まあ、そうだけど。」
「ウフフ。」
「でもさあ、六小さんの所にいた時って、ついこの間のことのように
思えるんだよねえ。それが、43年経ってるなんてなぁ。」
夢が、ふーっと長く息をついて言うと、六小も、
「うん、そうだね。わたしもそう思う。」
と、ふーっとため息をついて言いました。
「いつのまにか43年・・・・・早いねえー。」
「うん、」
ふたりは並んで、遠くを見るように、校庭の向こうに見える、林の保存のために
市が指定した保存林を、いつまでも眺めていました。