風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の弐拾五

2010-05-07 22:06:17 | 大人の童話

「それにしても六小さん、貫禄ついたねえ。」

夢が六小を仰ぎ見ながら言うと、

「ホント?」

と、六小がうれしそうに言います。

「うん、すごく貫禄ついた。」

夢はそう言って、まじまじと六小を見つめました。

「えへ、そうかな。」

 六小は照れていました。

「さすが、43年も経つとちがうね。歴史感じちゃった。六小さん、これからも、百年

めざしてがんばれ!フレー、フレー!」

「ウフフ、そーお?ありがと。でも、とりあえずは50年をめざす。」

そう、六小はあと7年で創立五十年を迎えます。夢は、ふっとため息をついて

言いました。

「50年って言ったら、六小さんも、開校して半世紀を迎えることになるんだなぁー、

ハァ~。」

「何?ため息なんかついちゃって。」

六小が怪訝そうに訊きます。

「うん、あのね、すごいなーって思って。」

六小は、ますます怪訝そうに、

「そーお?」

と訊きました。夢は、「そうよ、すごいのよ。」という感じで、

「うん。だって、わたしが六小さんの所にいた時は六小さん、まだ、できたての

ほやほやだったんだもの。それが、今や開校して43年。」

と、もう一回ため息をついて言いました。

「夢ちゃんも、歳とるわけだよね。」

「まっ、失礼ね。」

「本当のことじゃない。」

「まあ、そうだけど。」

「ウフフ。」

「でもさあ、六小さんの所にいた時って、ついこの間のことのように

思えるんだよねえ。それが、43年経ってるなんてなぁ。」

夢が、ふーっと長く息をついて言うと、六小も、

「うん、そうだね。わたしもそう思う。」

と、ふーっとため息をついて言いました。

「いつのまにか43年・・・・・早いねえー。」

「うん、」

ふたりは並んで、遠くを見るように、校庭の向こうに見える、林の保存のために

市が指定した保存林を、いつまでも眺めていました。

 



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