風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の拾九

2010-05-02 11:13:45 | 大人の童話

六小のいらいらしているような声を聞いても、夢は、まだ資料室でいろいろと見て

いました。そんななか、ある台の前で何かを見ていた夢の顔つきが変わりました。

その台には、各周年記念誌が置いてありました。夢は、読んでいた周年記念誌の

なかの一冊、二十周年記念誌に、夢が子どもの頃に何のメロディーかと気になって

いた『チャイム』に関する文章を見つけたのです。それは、夢が卒業した後に六小に

来た先生の書いた文章でした。そこには、こう書かれてありました。「六小の

チャイムは、今でも『田園』でしょうか。」と。この文を読んだとたん、夢のなかで

何かがストンと落ちました。そう、夢は腑に落ちたのです。「ああ、あのメロディーは

『田園』だったんだ。曲の冒頭部分を、チャイム風にアレンジしたものだったんだ。」

と。夢はその日、家に帰って早速『田園』を聴きました。確かにそうでした。六小の

チャイムは、確かに『田園』の冒頭部分をアレンジしたものだったのです。夢は感激

で言葉も出ませんでした。無理もありません。六小にいた頃、大好きだった

チャイムの音、いつも何のメロディーか気になっていたチャイム、それが、やっと、

卒業して三十六年たってやっと何の曲かわかったのですから。しかし、現在の

六小で、もうその音を聞くことはできません。それを知った時、夢は、ちょっと残念に

思いました。でも、あの頃の、あの六小独特のチャイムの音は、大人になってからも

ずっと耳に残っており、夢に時々、懐かしい響きを聞かせてくれています。そして、

夢には、六小のチャイムになぜ『田園』が使われたのか、わかるような気が

するのでした。夢のいた当時、六小の周りは家もほとんどなく、畑と林ばかりでした。

そんな田園風景から、当時、チャイムを決めるにあたって、係りの人の頭に

『田園』が思いうかんで、六小のチャイムに使われることになったのでしょう。ただし、

これはあくまでも夢の推測です。

 

 



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