1988年のSpectacular SPIDER-MAN (Spec)、137号と138号についてレビュー。
この話の背景として1986年に制定されたImmigration Reform and Control Actという法律がる。不法移民と知って雇用した場合の罰則や1982年より前に入国した不法移民の合法化が定められている。この話に出て来るMary Jane Watson (“MJ”)の友達Elviraは1982年以降に入国したため常に強制退去と隣合わせの状態。この話昔の話でも米国だけの話でもない。日本人にはピンと来ないかもしれないが、こういう状態の人は沢山日本に住んでいる。つい最近も拘置所で病死したスリランカ人の女性の事件がこの問題を浮き彫りにしている。
筋書をGerry Conway、画をSal Buscemaがそれぞれ担当。Buscemaがインクも入れている。添付画像は137号の表紙を採用。今回の悪人La Tarantulaの画。
粗筋から。Daily Bugle新聞社に働く中米からの逃亡者がLa Tarantulaに殺された。La Tarantulaは同じ中米の国からの別の逃亡者Elviraと彼女の家族の命を狙う。MJからの助けを求める声を受けたPeterはSPIDER-MANとして、Tarantulaに立ち向かう。
気に入ったシーンや台詞等を紹介。137号から。ニューヨークに住む不法移民の少年たちに襲われたPeter。”I don’t know how I got into these things. But I know how to get out.” こう言って覆いかぶさってくる大勢の少年たちの輪から飛び出るシーンは、そのままギャグ漫画で使える。それか昔のアニメね。
137号の最終の方、折角La Tarantulaの一味から命を救った家族が移民局に拘束されてしまう。怒りを隠せないSPIDER-MAN。この話の怒りの矛先が上記の移民法。
最終ページで米国政府の人間と陰で手を組むLa Tarantulaの前にCAPTAIN AMERICAが現れる。次の話が読みたくなるな。ワクワクする。
この当時のCAPはSteve Rogersではない。しかし彼のコスチュームが象徴する精神は変わらない。そして移民局の拘留施設での彼に対する視線は彼が期待したものではなかった。Conwayのこの法律に対する考えがそのまま反映されている話だね。
最初CAPはLa Tarantulaと共闘してSPIDER-MANと戦うが拘留施設での体験や、La Tarantulaの嘘、汚い戦い方を見てそっぽを向く。この辺りは面白いな。あくまでも政府の依頼で動いているのでLa Tarantulaと戦うことまではしないのか。
Elviraは本国に送還されたが、世間の目もあり、本国であまり酷い扱いはされない。また米国でも政治的亡命者として申請が行われる。そんな妥協の産物で物語は終わる。それに対するPeterのコメントと、MJの応えが気が利いているので書いておく。”You have to settle for small victories.” “But It’s the small defeats that break my heart.”
この2話完結の話。長すぎず話も面白いので好き。しかしどうもSpider-senseに対する扱いが違うんじゃないかと思うシーンが2つある。まずは、自分に危険がないはずなのに、コスチュームを着ていないLa TarantulaにSpider-senseが反応する点。もう一つ。確かにCAPに気を取られているとはいえ、La Tarantulaからの攻撃にSpider-senseが反応しない点。都合が良すぎる。
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