アメコミとラーメン

Death of Captain Staceyの後日談、2000年のSPIDER-MAN



前回のSPIDER-MANネタに続いてまたまた昔の作品を発掘。今回は、2000年のミニシリーズSPIDER-MAN Death & Destiny(”SDD”)1~3号をレビュー。

筋書きと画をLee Weeksが担当。LeeはDC、Marvelで活躍する画家。どうもDAREDEVILやBATMANの画の評価が高いらしい。個人的には2010年に出版されたAmazing SPIDER-MAN (”ASM”)627号~629号の画が凄かったことを記憶していている。その時の画と今回読んだ画では、ASMの画の方が数倍良い。ASMのインク入れはLee自身によるものだが、今回のSDDのインクは他人に任せているのが一因だと思う。カバーのインクは自身によるものかな。

1970年の出版されたASM 90号にてCaptain(警視) Staceyは事故死する。(この話は1970年代後半に出版された光文社版の邦訳に収録されている。)SDDの話はASM 90号の直後に起こった話。事故の当事者であるDr. OctopusとSPIDER-MANの対決、SPIDER-MANことPeter Parkerと、彼が恋しているGwen Staceyや友達との関係、当時は新聞社の発行人であったJ Jonah Jameson("JJJ”)と、PeterのCaptainの死に対するけじめがテーマ。

今回もいつもの通り、好きなシーンや台詞等について書いていこう。ASM 90号はGil Kaneが鉛筆描きし、John Romita Sr.がインクを入れている。人物なんかはGilの画なのだが、インク担当の中興の祖Johnの影響がもの凄く強い。SDDでLeeは、これでもかと言うくらいにGilとJohn画を意識した画を描いている。おいらが中学生の時に初めて出会ったSPIDER-MANの画がそのまま蘇ったようだ。Gwenの表情は特に良い。綺麗なんだよね。添付した表紙画は、そんなLeeのHomageの具現例だと思うので採用した。蛇足だが、SDDで使用されている紙も昔風(あくまで「風」)の紙を使っていて、1970年の話の続きだという趣向を凝らしている。

Homageは画だけでない。ASM 90号中の台詞のCaptainの台詞が効果的に使われている。即ち”Be good to her.”だ。Herとは娘Gwenのことである。Captainは死を前にPeterの正体がSPIDER-MANであることをPeterに話す等、劇的。それに続くこの台詞はGwenを思いやる父親としての最後の言葉だ。同じ言葉を、親代わりのMay伯母さんがSDDで使う。Gwenに対する人間としての責任を思い起こさせる台詞であり、すばらしい。一番直近の映画SPIDER-MANでのCaptainはこれとは正反対の台詞を使うんだよね。どちらも子を思う父親の台詞としては正解なのだが、やはりGwenの気持ちを尊重したASM 90号の台詞の方に一票を投じるな。

PeterはOctopusを探すのに躍起になっているか、Captainの死に対する責任を感じ引き籠ってしまうかのどちらかで、一番そばにいてほしい時にGwenのそばにいないことに彼女は立腹している。そして、なかなかPeterを許そうとしない。その時のPeterへのGwenの台詞、”I’ve had my friends with me.”が手厳しい。本当の友達はそばにいてくれたけど、Peterはいてくれなかったってこと。因みに物語の後半では次第にPeterを許そうとしてくれるようになるのが救い。その中でも彼の危険な仕事、カメラマンであることには良い顔をしてくれていない。

Peterの撮影した写真をなかなか採用しないJJJ。何故かという理由が説得力あり。沢山写真を撮っているのに、Captainの死の際の写真が一枚もないことに対して立腹しているんだ。しかし、本当はその写真をPeterは持っている。その写真はCaptainの死の一部は自分の責任であることを再認識させるため、現像することさえ最初はできなかった。二人の気持ちが台詞や行動で直接的・間接的に示されていて読んでいてすっきり。

Octopusとの対決はあまり迫力がない。確かに小悪党を追いつめるシーンは3冊の中に沢山あるのだが。ただ、それで良い気がする。Peterや他の登場人物の内面を描くことに注力しているこんな作品こそが、1970年当時のASMだったからだ。

Peterの台詞で面白かったのは、” I’ m not (中略) some pointy-eared vigilante wearing a cape.”これ、BATMANのこと。Marvelとはライバルの出版社の作品なので、具体名を入れていない。あ、そう言えばつい最近しっかりBATMANって使っている台詞読んだな。

Peterの夢の中のGwenの台詞は好きでない。即ち、”Maybe someday you’ll kill me too.”これって、Gwenが死ぬ前の1970年だったら、良い台詞なんだけど、Gwenが死んだことをわかっている2000年に使ったら、ちょっとずるいな。ずるいと言えば、思わせぶりなWarren(後の悪人Jackal)の行動もずるいな。どちらもファンサービスなのはわかるけどね。
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