≪第91回選抜高校野球大会≫
【総合展望】
昨年と違い、本命なき混戦の大会。スーパー球児・奥川擁する星稜に、初優勝のチャンス?!
高校野球は、昨年の春90回、夏100回の記念大会を経て、
新しい10年を迎える第一歩の年となります。
しかも今年はこの選抜直後に新たな元号の制定される年。
この選抜大会は「平成最後の選抜大会」でもあり、
新しい高校野球の歴史を刻む寸前の、
大事な大会となりそうです。
来るべき10年がどんなものになるのか、
また新たな時代の幕開けとともに高校野球がどう変わっていくのか、
そんなことに思いをはせながらの観戦となりそうですが、
大会自体は大混戦となりそうな気配が漂っています。
昨年は高校野球が新たな時代を模索する中、
はじめて「延長タイブレーク制」を導入。
それに伴って「延長15回再試合」という事も有名無実化、
高校野球は新たな段階を迎えたという事を強く意識する大会となりました。
残念ながら選抜大会ではタイブレークに持ち込まれた試合はありませんでしたが、
続く夏の選手権では初めてタイブレークの激闘が甲子園でも行われ、
今までとは違った角度から試合を見ることができました。
当たり前といえば当たり前ですが、
タイブレークに持ち込まれた試合はどれも「心に残る」激闘となりました。
今年はどんな激闘がこの「大甲子園」で繰り広げられることでしょう。
そして、やっぱり甲子園は面白いなあという事を意識させてくれるような、
最後の最後までいったいどこが勝つのかわからないという、
高校野球の面白さ満載の、
そんな激戦の大会が見たいと思います。
昨年は春も夏も、
「史上最強のチーム」と言われるような大阪桐蔭の素晴らしさだけが際立つ大会となりました。
いくら史上最強レベルのチーム力を持っていても、
高校生が行うトーナメント大会だけに、
どこかで波乱は演出されるのではないかとワタシなどは思っていましたが、
なんのなんの、
大阪桐蔭は涼しい顔をして最後まで全くといって良いほどスキを見せずに勝ち切って春夏連覇を達成しました。
「軽く泳ぎ切った」なんていう形容がぴったりくるほどの完勝でした。
ほかのすべてのチームと比べて、
1枚も2枚も役者が上でしたね。
しかしそんなすごいチームが、
毎年のように現れるわけはありません。
今年は例年通りの、
群雄割拠の大会となりそうです。
ということで、
今年も大会の展望を。
本命なき大会も、星稜が奥川の右腕で、夢へ駆け上がる大会となるのか?!
今年の大会を一言でいうのなら「本命なき大会」これしかない選抜になりそうだ。「強そうだ」とか「戦力が整っている」とか、そういうことで上位のランクをつけるチームは見つかるものの、果たしてそのランクのチームが額面通りに大会を勝ちあがっていくかというと、そうではないように感じている。そんな中で一応大会の軸になるチームがいくつか見受けられる。最も注目されるのは、やはり昨年のチームから投打の中心がごっそり残った星稜だ。昨春8強、夏1勝と着実に戦績を上げてきたチームは、完全に1,2年生中心のチーム。その彼らが甲子園の経験を糧に「さあ、いよいよ我々の世代だ」と腕を撫すのがこのチームだ。秋の北信越大会では新チームでの時間を十分に取れなかったにもかかわらず見事に優勝して選抜を確実にし、その後の「全国大会」である明治神宮大会では各地区の優勝校を相手にその力を見せつけた。奥川は昨秋の明治神宮大会でも、強打の広陵や高松商、札幌大谷戦にも好投して、すでに難攻不落の投手であることを証明して見せた。ただ速い球を投げるとか変化球が鋭いというだけではない、投手としてのセンスや試合を作る力が長けた投手だけに、トーナメント向きなのは間違いない。今大会では、この奥川がいかにコンディションよくマウンドに上がることできるかが星稜躍進のカギになってくるだろう。奥川を支える投手陣は甲子園経験のある寺沢、寺西に、ぐっと力を上げてきた萩原らが担う。この「投手陣」全体でどこまで相手を抑えることができるか。打線は昨年甲子園で見せたものすごいバッティングには、まだ到達していない感じだ。昨年は春夏ともに激戦で敗れたが「敗れてなお強し」を印象付けた。打線が一冬越して昨年並みに仕上がってくれば、勝ち上がるのに死角はなくなるが、果たしてどんなコンディションで選抜を迎えられるか。いずれにしても「北陸の雄」として長く甲子園で活躍する星稜だけに、甲子園で敦賀気比に先を越された「全国制覇」の夢を、今年はかなえたいと念願しているはず。山下名誉監督が元気なうちに、あの黄色と青のユニフォームが大旗を高々と掲げる瞬間は、訪れるか。
3強?4強?それとも5強?決め手を持つチームが勝つのか。それとも勢いに乗って駆け上がるチームが強いのか
しかし昨年の大阪桐蔭のように「絶対の1強」ではない今年の大会。つけ入るスキを狙って、両手では足りないぐらいの強豪が群雄割拠の、大混戦の大会になると予想する。まずその中で軸となるのは、近年地区レベルの底上げがすごい、昨秋の近畿大会で4強に残った4校か。龍谷大平安は、秋の京都大会では3位、しかし近畿大会では強豪を次々なぎ倒して優勝。そして明治神宮大会では疲れも残っていたか初戦敗退。上げ幅と下げ幅が大きい秋の陣になったが、確かな力を持ったチームだ。昨夏もチームの完成度は甲子園でも際立っていたように、安定した戦いぶりができるはずのチーム。また投手陣が左腕の2枚看板だけに、選抜で勝ち上がる要素は十分。最近も選抜では確かな実績を残しており、今年も上位進出が十分視野に入っている。準優勝の明石商は、近畿の中では最も負けない戦いができるチームとみている。球威十分のエース中森と、報徳を完封し、龍谷大平安も延長まで抑え切った安定感抜群の宮口の2枚看板は大会屈指と言っても過言ではないかもしれない。打線も破壊力こそないが、甲子園で披露した「点を取るメソッドをいくつも持つ」攻撃力は水準以上。うまく継投、あるいは先発のローテがハマれば、初優勝も夢ではない戦力だ。大阪桐蔭に続く大阪勢の3連覇を狙う履正社は、一昨年のチームとの比較ではまだその水準にはないものの、投打に大物をそろえて勝負をかける。打線では1番の桃谷、6番の野口にそれぞれ8本、7本と本塁打が出ているほどの破壊力抜群の打線を持つ。中軸を打つ小深田は「安田2世」の異名をとる2年生スラッガー。投手陣もエース左腕の清水に右腕の植木ら、いつもながらにバラエティに富む。チームは昨夏あの大阪桐蔭を追いつめた試合が自信として根付いており、「どこにも負けるはずがない」と強気で初制覇に狙いを絞っている。中谷新監督で初めての大会に臨む智辯和歌山は、打線だけではない総合力で勝負。特にプロの捕手だった中谷監督から教えを受けた東妻は今大会屈指の捕手だ。これまでともすれば「打撃偏重」のチーム作りが主流だったチームが、新たに生まれ変わる萌芽が見られるかもしれない春になりそうだ。とはいえ昨年に続いて打線の破壊力は大会屈指。あとは高嶋監督時代の、あの「負けられないという思い」が背中からにじみ出るような迫力を選手たちが出せれば、昨春のように「激闘王」の名にふさわしい戦いができるはずだ。
「近畿4強」以外では、広陵のスケールが目立つ。秋は明治神宮大会で星稜・奥川に完膚なきまでにやられてコールド負けを喫したが、秋はこの1敗のみ。チームのスケールとしては一昨年夏の選手権準優勝時を上回り、07年夏の野村-小林のバッテリーのチームに近い感じがする。そして秋に負けているだけに、冬場の「打倒奥川」にかける執念はすさまじく、こういった時の広陵は本当に怖いチームだ。河野、石原、森とそろえた投手陣の厚みは十分で、守りから試合を作ることができる。そして打線は、秋の段階で創志・西、星稜・奥川と今秋のドラフト1位候補の剛腕と対決できたのも糧になっているはず。春は見違える姿で優勝争いに鋭く参戦してくるとみる。投打の軸という事で考えれば、東邦もエース石川に主砲熊田とキラ星をそろえて、上位を狙う。十分に優勝が狙える戦力だとみるが、どうしても最近の東邦の甲子園での戦いぶりを見ると、有力な優勝候補にまでは推せないというのが正直なところ。それでも石川・熊田の3・4番の破壊力は今大会屈指で、大会の華になれる可能性を秘めている。あとは野球力の高いチームと対戦し苦戦した時に、どう打開していく力を出すかという事が求められそうだ。
10指を超える有力校。ピカイチの能力を持つ球児の登場にも期待大。
勢いに乗れば面白いのはなんといっても明治神宮大会を制した札幌大谷。あの大会で見せた全員のスキのなさや粘りは、今までの北海道代表ではなかなか見せられなかったもの。それだけ中学時代から一貫でチーム作りに励んできた成果だと思わせてくれるが、それを聖地である大甲子園でも見せられるか。秋のように勢いに乗って大会を駆け抜けるようだと、一躍ダークホースに上がってくる可能性も十分にある。八戸学院光星も面白いチームだ。ここのところ甲子園で殻を破る活躍を見せてはいない光星だが、キッチリと初戦は飾るところに常連の味を出している。近年は力のあるチームと対戦した時に力負けで甲子園を去ることが多く、粘り強さを見せられないチームカラーになっているところが若干気にはなっている。しかしながら、今年はその強打ぶりが10年、11年のあの世代のチームに匹敵する破壊力という事で、期待は大きく高まっている。秋の四国を制した高松商は、16年以来3年ぶりの出場で、あの時同様の活躍(準優勝)を誓う。エース香川は球威こそ今一つだが、安定感は抜群。そして打線は一度火が付くと止まらない。明治神宮大会で八戸学院光星を破った試合は見事だった。あの試合の再現を甲子園では望みたいところ。九州では秋を制した筑陽学園も面白いが、力からいうと明豊か。打線の破壊力は折り紙付きで、今年も「打ち勝つ野球」は健在。甲子園での実績も十分で、相手には怖い存在のチームだ。筑陽学園は体格のいい選手をそろえた大型のチーム。エース格の西舘は角度のある速球が武器で、それを西、菅井の好投手たちがしっかりサポートする。打線も破壊力は十分だが、神宮大会で札幌大谷のサイドの太田に全くタイミングが合わず8回までノーヒット。そのあたりに課題が見えているが、どう克服してきたか。上げる名前に困る今年の関東勢の中では、やはり戦力的には横浜がNo1か。ドラ1確実とまで言われるエース及川の左腕からの150キロの速球は目を見張るが、それでも優勝候補の中に入れるには少し不安がある。なにしろここのところの横浜は、戦い方が非常に淡泊で、全国レベルの戦いではどこかで必ず足元をすくわれることが続いているためだ。何か戦力は整うがクラブチームのような戦い方というのが印象で、それを破りチームとしての一体感が出ると大阪桐蔭の東のライバルとして再度名乗りを上げることができるかもしれない。本来ならば関東の中では、その横浜をコールドで破った春日部共栄が上がるが、指揮を執る本田監督を欠いての選抜になるので、そのあたりがどうか。エース村田は水準以上の好投手。打線もそこそこは打てる力を持ち、チームに一体感が出れば面白い戦力になりそう。最近の、県内の2強(花咲徳栄、浦和学院)のきらめく甲子園の戦績に匹敵する活躍ができるか。甲子園で実績を残すといえば、盛岡大付も面白いチームだ。けが人続出の秋を何とか乗り切り選抜切符を奪い取った実力は並ではないはず。秋の試合数はなんと75試合。試合経験豊富なチームとして、春も勝負に行く気満々だ。
強打が売り物の札幌一は春3度目の出場で、初勝利を狙う。秋の関東を制した桐蔭学園は、「うまく行き過ぎた秋」を経て、勢いがついていない状態でどのくらい戦えるか、戦力アップを図ることができたかが焦点。常総学院戦で逆転サヨナラ満塁弾を放った主砲・森に注目が集まる。力は持っている山梨学院大付は、投手陣が踏ん張り試合を作れれば面白い。打線の破壊力は昨夏の甲子園でも実証済み。習志野はなんといってもブラバンの美爆音が甲子園に響き渡るのが楽しみ。粘り強く果敢ないつもの習志野野球ができれば、いい戦いは必ずできるはず。津田学園のエース前はMax148キロの剛腕。昨秋決勝では疲れから打ち込まれたが、コンディション万全なら全国区のチームにも力負けはしない。打線もよく、上位進出の期待もかかる。福知山成美、市和歌山は負け続けて覚えた野球で秋を駆け抜けたたたき上げのチーム。両チームともにしっかり失点を抑え、ゲームを作って粘り強く戦うのが身上。甲子園ではこういうチームは怖い。松山聖稜は連続出場。過去春夏2回の甲子園では勝利を挙げておらず、甲子園で校歌を歌うことが関係者の夢だ。今回、かなえることができるか。
どこにもチャンスありの戦国大会。大会にうまくは入れたチームは、快進撃が望める。
例年以上に戦力的な差のない今年の大会。出場全チームに「チャンスあり」の大会で、それだけ冬場の底上げがなったチーム、そしてコンディションを整えていい大会の入りをしたチームが大会を駆け上がっていく可能性を秘めた大会という事が言える。九州の2チーム、大分と日章学園は、ともに中学時代から同じチームで活躍した選手たちをそろえる「一貫校」で、野球力の高さが売り。ともに中学時代から大舞台の経験は十分で、面白いチームだ。市呉は2年前の春に初出場を飾り、見事な戦いぶりで甲子園を沸かせた。やはりしっかりとした守備からリズムを作るチームで、春向きの戦い方をする。名門久々の登場となった米子東は、OB達が待ち望んだ春。進学校らしい「シンキングベースボール」が見ものだ。春夏通じての初出場となった啓新は福井に現れたニューフェース。前監督の大八木氏に鍛えられた攻守で、北信越大会では星稜をあと一歩のところまで追いつめた。経験値の高い選手が多く、敦賀気比が登場してきたときによく似た好チームだ。国士舘は永田監督が監督に復帰して初めての出場。春の選抜を知り尽くした名将の下、また甲子園で輝く野球を披露できるか。21世紀枠の3校は秋はそれぞれ結果を残した。石岡一はMax147キロのエース岩本にすべてをかける。『春の剛腕』はかつても選抜でたびたび大波乱を演出する原動力になっており、期待値も高い。富岡西はようやく3度目のチャレンジで摘み取った春の切符。しぶとさは折り紙付きで、接戦に持ち込めばこのチームの良さが存分に発揮される。熊本西は苦しい事故から立ち直っての初出場。甲子園に一陣の春風を送り込む戦いが期待されている。
今年も3月23日開幕の甲子園。
91回目大会です。
そして注目の組み合わせ抽選会は、15日に行われます。
さあ球春到来。
今年はどんな大会になるのでしょうか。