最も印象に残った球児 ２５．岐阜

もっとも印象に残った球児

２５．岐阜



森田　貴之　　投手　　大垣日大　　　2007年　春夏　　　　


甲子園での戦績

０７年春　　　1回戦　　　　〇　　 ７－４　　　　北大津（滋賀）　　　　　　
　　　　　　　　2回戦　　　　 〇　 　４－１　　　　都城泉ヶ丘（宮崎）
　　　　　　　　準々決勝　　〇　　　 ９－１　　　　関西（岡山）
　　　　　　　　準決勝 　　　〇　　　５－４　　　　帝京（東東京）
　　　　　　　　決勝　　　　　●　　　　５－６　　　　常葉菊川（静岡）
　　　　夏　　 1回戦　　　　 〇　　　２－１　　　　金足農（秋田）
　　　　　　　　2回戦　　　　〇　　　 ５－３　　　　創価（西東京）
　　　　　　　　準決勝　　　　〇　　　８－３　　　　新潟明訓（新潟）
　　　　　　　　準々決勝　　　●　　　１－６ 　　　　常葉菊川（静岡）



戦前から愛知とともに高校野球界の中心に君臨した岐阜県勢。
特に県岐阜商は、春夏通算87勝をあげて、
現在も高校野球の中心に位置しています。

その県岐阜商の清沢投手、そして岐阜短大付属の湯口投手など、
戦後にかけても好投手を配してきた岐阜県で、
近年最も安定した投球を見せたのが、大垣日大の森田投手でした。

全く甲子園には縁のない大垣日大というチーム、
隣県である愛知・東邦の名将、坂口監督の就任とともに、
闘う軍団として岐阜の高校球界に颯爽とデビューしました。

初出場を決めた選抜は、
秋の大会での好成績での一般選考ではなく、
その時まであった『希望枠』という枠での出場でした。

この『希望枠』とは、
秋の大会での守備・投手力がすぐれたチームが選出されるというもので、
今の基準では選出されない可能性の高かったのが、
大垣日大でした。

しかしこのチーム、
森田という好投手を擁して、
大会前から評判のいいチーム。

その森田、
180センチ近い上背をいっぱいに使って投げる外角低めの速球が武器。
球速よりも安定感ではこの大会際立った存在でした。

そして指揮を執る坂口監督は、
東邦時代の『鬼の阪口』の異名はどこへやら、
『仏の阪口』に変身して、
ベンチでは常に笑みを絶やさない姿が印象的でした。

この『遅れてきた日大』、大垣日大が初出場で快進撃。
準決勝では優勝候補筆頭の帝京も破り、
勇躍決勝に進出しました。

相手は秋の東海大会で敗れている常葉菊川。

序盤に先制する”待ってました”の展開になるものの、
連投の森田が踏ん張りきれずに逆転を許し、
紫紺の大旗は抱くことが出来ませんでした。


ここまでなら初出場校のよくある話。

しかし大垣日大は、
ここからがすごかった。

選抜帰りの”エアポケット”の時期を乗り越え、
夏もまた初出場で甲子園に見事に帰還。

エース森田は、
安定感十分のマウンドで躍動し、
夏も3試合を完投して8強に進出しました。

まったくの甲子園初出場校が、
春夏で7勝を挙げるとはあっぱれ。
さすがは名将に率いられるチームでした。

しかし大垣日大のさらなる野望の前に立ちはだかったのは、
またしても隣県からやって来た常葉菊川でした。

秋から大事な試合で3度対戦。

そしてこの3度目も、
大垣日大は常葉菊川の厚い壁を破れず、
涙にくれました。

しかし試合後の森田投手。

『すべてやりきった』
というような、
実に爽やかな表情をしていたのが、
印象に残りました。


初めて甲子園にやってきたこの年。

大垣日大は県岐阜商に並ぶような活躍で、
全国にその名をとどろかせたのでした。