息子から、進路について折り入って相談がある、ということで…
昨日は妻と一緒に、彼のアパートまで、ペッピーノで行って来ました。
電車と歩きだと2時間はかかるところですが、高速を使って車で行けば片道1時間ちょい。
たいした労力ではありません。
進路というのは、将来の留学の時期と、行き先に付いての相談でした。
今まで彼が考えていたことに修正はありましたが、想定の範囲内のことでした。
この国の科学技術の…とくに研究者育成の仕組みについては、現状も行く末も、正直言って暗澹たるもの。
留学はやむを得ない、というより、親としても是非してもらいたいところ。
就職も、研究開発者への金銭面、その他の待遇の差を考えて、外国企業で…
それも日本法人ではなく海外の本社採用で働きたいと思うのは、至極当然のことです。
息子の指導教授も、彼の海外進出志向については大いに賛成してくれているとのことですし。
(ただその前に俺がいろんなことをビシビシ叩き込んでやる、という感じのようですが)
そもそも応用科学の分野なのに、ドクターコースの学生に報酬が出ない日本の大学院は、世界の常識から言って考えられないこと。
ポスドクになってさえも自活できない。そして運よく職を得ても…
海外の同じ能力、同じ立場の人間と比べて半分とか、どうかすると、三分の一の収入で働かされるなんて。
ウソみたいな話ですが、業界の内実を実際に知るとこれが事実だというのだから驚きです。
日本人は井の中の蛙だから、知らない人がほとんどですが。
そりゃあ、頭脳流出するのは仕方ない。
能力のある野球選手が、メジャーリーグに行きたがるのと同じです。愛国心じゃどうにもならない。
世界中からレベルの高い人間が集まるところで切磋琢磨しなければ、自分の能力も上がらないし。
息子が一生海外住みということになったら親としては寂しいですが、彼の人生は彼のものですから。
一番自分にとって有利な場所に身を置いて、思う存分、研究と開発の仕事をしてほしいです。
20年、30年後には、かつて日本が「科学技術立国」だったことがあるなんて、夢のような話になっているでしょう。
そういえば「国産コロナワクチン」や「国産治療薬」の話は、どこへ行ったのでしょうね。
最初は去年の年内、次は、年度内に出回るという触れ込みだったのに。
単に自社の株価を吊り上げるためのトークだったのでしょうか?
それとも文系経営陣の、希望的観測に過ぎなかったのか。
いずれにしても、我が国の創薬開発力の弱さを、はっきりと露呈した事実でした。
それにしても、テクノロジーの分野で大きく後れを取ったら、後はこの国に何が残るのか。
長年にわたる農政の失策がたたって、農業はダメだし。
日本の農作物は世界一美味しい!と自慢したって、海外からは「高すぎる」「甘すぎる」と評価されないし。
IT関連は考えられないほど立ち遅れ、金融業も国際競争力はぜんぜんない。
残るは、マンガ・アニメなどのサブカルチャーと、インバウンド頼みの観光業…
まあ、そのぐらいでしょう。
アニメとか気持ち悪い、外国人観光客はマナーが悪くて迷惑、とか言っていたらそれさえもダメになる。
なーんにも残ってない、アジアの片隅の、貧しいくせに気位ばかり高い、よそから見て鼻持ちならない国になりますよ。
いずれは我々の子どもや孫たちが、今アジアから「技能実習生」とかいう名目で来日している人たちの国に…
逆に単純労働で出稼ぎに行くようになる日が来ます。まじめな話。
(だから今、そういう外国人を思い切り大事にしてあげないと)
そういうのは全部、私たち世代が驕り高ぶって、謙虚に学ぼうとせず、周りを見ようともせず…
現在や過去の栄光を自画自賛することに浸って、時代の流れをキャッチアップし損なったせいです。
まあ、諸行無常、盛者必衰の理の通り…奢れるものは久しからず、ただ春の夜の夢の如しです。
趣味ブログなのに、余計なことを書き過ぎました。ごめんなさい。
とにかく、私たち親にできることは何でもして、息子には一番やりたいことを、思い切りやってほしいです。
親馬鹿でお恥ずかしいのですが、息子には彼の専門分野では、特に秀でた能力があるみたいで…
まだ学部生なのにオリジナルの化合物をいくつも合成して、彼の名前がその物質の名前に冠されて…
しかもその化合物の有用性が認められて、彼の研究が、産学共同の重要なプロジェクトの一翼を担っていたり。
何より研究が「刻苦研鑽」ではなく、他の何をしているときよりも楽しいことだというのが、彼の強みだと思います。
息子の部屋にかつて飾られていた、サリドマイドのこんな分子構造模型は…
今は自分が合成した化合物の模型に置き替わっていました。
アイディアメモが一面に貼られた壁の反対側の壁にある、スローガンは変わっていませんでしたが。
「日本のため」でなく世界中の人のために、健闘を祈りたいです。
そのサポートのためなら、親は何でもしようと思います。