東京都知事選が終わり、まあ思ったとおりに現職の小池百合子氏が当選しました。
「リベラル層」が推した蓮舫氏は予想以上の惨敗で、選挙前まではほぼ無名だった元安芸高田市長の石丸伸二氏にさえ、かなりの差をつけられて3位。
小池候補の街頭演説で、聴衆から「やめろ」コールが巻き起こったとか…
「スタンディング」(ひとり街宣)をやる一般市民が多数出た、とかで…
「リベラル派」の市民や論客は、蓮舫氏の人気が上がって、かなりいい線に行くと期待していたようですが。
結果は、有権者の大半を占める無党派層、支持なし層の票はごっそりと石丸氏にさらわれた格好。
蓮舫氏の応援演説をしていたのが「普通の日本人」からサヨクと思われている、立民、共産の政治家だったから、色眼鏡で見られたというのもあるでしょうし…
あの「2位じゃ駄目なんですか?」という発言(実際は発言の一部の切り取りによる印象操作なんですが)で…
何でも反対の、怒ってばかりおばさん、というマイナスイメージもあったでしょう。
それより、そもそも既成政治家そのものに(政権担当側、権力側でなく)不信感を抱くよう、マスコミに誘導されているのが「無党派層」だと考えると…
既成政治家が街宣で応援演説をすること自体が、無党派層をまとめたいのなら、悪手だったのかも。
まあ、街宣での現職へのヤジだの、本当に一部の人が立ち上がっただけの「スタンディング」を見ただけで…
(スタンディング=個人デモ自体は、個人的に悪いと思わないし、むしろ支持しますが)
「手ごたえ」を感じたりしてしまう、リベラル層の甘さですよね、問題は。
そういうのはもとからリベラル派の人が、我慢できなくなって勇気を出しただけ。
動かさなければならない「山」は、本当に支持なし、政治に関心なしの大衆なんだから。
それと、立民は大企業の御用労働組合「連合」と手を切らないと、何をどうやっても駄目。政権交代なんて絶対に無理。
まして今、連合のトップである芳野友子氏は「ホンネは自民大好き」で、自民政治家と頻繁に会食したり、大会に岸田首相を招いたり…
なんなら、旧統一教会の関連団体で要職を務めた人物や、日本会議と関係の深い人物が主催する政治団体の影響を受けていたりするんだから。
あそこと手を切れないうちは、何を言ってもやっても「台本のあるプロレス」ですよ。
連合が、大企業に勤める一部エリート会社員の組織で、裏では経団連と「なあなあの仲」であることはもうみんなお見通しなのだし。
そんなダメダメプロレスラーの立民や、組織の性格が権威主義的かつ全体主義的で、嫌悪感を催させる共産が推す蓮舫氏でも…
「自公維国」のお仲間である小池知事続投よりはずっとマシで、現実的にはいちばん良い選択だったと、私は思いますけれど。
それよりも衝撃的だったのは石丸氏の善戦でした。
少なくとも表面上は、支持母体や支持組織が弱くて、というかほぼ無に近くて…
(裏では「蓮舫つぶし」の画策があったと思いますが)
東京では全くの無名だった石丸伸二氏が、自分を宣伝するツールがほぼ「ネット」だけで…
YouTube動画や、TikTok動画、XなどのSNSが頼りの候補者だったこと。
それが、無党派層のほぼ三分の二の票をさらってしまったのです。
今回投票率がかなり高かったのは、石丸氏に票を入れるために、わざわざ投票所に足を運んだ人が多かったからだと私は思っています。
彼の動画や、討論、インタビューを見ていると「ネット言論人」として若者を中心に人気が出た人々…
ひろゆきや、ホリエモン、そしてあの左右形の違うメガネで売った「高齢者は老害化する前に集団自決すべき」の学者…
成田悠輔氏の「同類」であるというのが、よくわかります。
論点のすり替えと、本筋とは違う言葉尻だけを捉えて、執拗にそこにだけからんでくる手法で…
なんとなく、相手を言い負かし「論破した」かの風に見せるのが「芸」の男。
まあ、それが強引で、いかにも露骨になってしまうところは、ひろゆきやホリエモンのさらに「劣化版」で…
議論といいうものができず、まともな会話さえ通じないサイコパス人間にしか見えないのですが。
でも大衆というのは、それで十分にダマせてしまうものなんですね。
むしろ、緻密に正確に論を運ぶ人物などは、大衆受けしないのでしょう。まして「ネットウケ」はしないのかなと思います。
これで名を売ったので、この後、彼は国政進出を狙ってきますよ。実現するかどうかはともかく。
リベラル層はこの事態を重く受け止めて、ネット宣伝対策に本気で取り組まないと、どうしようもないです。
「体制を立て直して前を向こう!」「4年後に向けて!」という声が聞こえて来ますが…
そんな悠長なことを言っている場合ではない。
保守派は、今年中にでも憲法に「緊急事態条項」を入れたいと狙っているというのに。
「4年後」どころか次の国政選挙が、日本国民にとって最後の選挙になるかもしれないのに。
最悪のケースを言えば、もう人を選ぶ選挙なんかなくて、改憲の国民審査が「最後の投票」になるかも、なのに。
「4年後にリベンジ」なんて言ってる時点で、あまりに楽観的過ぎる、甘ちゃんなんです。
これだから、日本のリベラルはダメなんですよね。
どんなに時間が稼げたとしても…
組織票の力を、ネット・SNSでの人気が凌駕する日は、まもなく来るのでしょう。
ネット・SNSを有効に使う術、という点で、リベラルや「左」系の人々は、圧倒的に遅れている。
そこは、大手広告代理店や「オタク系有識者」を取り込んでいる、保守陣営から三周遅れぐらいにされている。
ネット・SNSという「場」自体が、正論と、緻密でまともな議論よりも…
大衆に分かりやすい「論破芸」や「ひとこと政治」が強くなるような世界でもあるのだから…
仕方ないと言えば、確かにそうなのですが。
これは本当に残念で、無念なことではありますが、現実を言ってしまうと…
大衆の多くは、暑い中スタンディングで何かを主張したり、寒い中食べる物のない人に炊き出しをやったり…
被災地の支援をしたりする人には、好感を持ってくれないのです。
むしろ自分ができない、やりたくないような、めんどくさいことをやる人を「偽善者」と言って嘲笑することで…
本当は怠惰で意気地なしな自分のことを、かばいたい、正当化したい。
だから、弱者のための具体的な行動をともなった「草の根民主主義」の実践者よりも…
なんなら弱者や少数者を踏みにじる、露悪的な行動を実践し、擁護してくれる「現実主義者」…
そして「強さ」を前面に打ち出して、その人物の側に着くことで「勝ち組」の仲間になったような錯覚を抱かせてくれる人を好むのです。
そういうのは、あくまで「錯覚」なのですけれど。
勝ち組だったつもりが、いつの間にか粛清される側になっていたり、極寒や灼熱の、地獄の戦場に立たされていたりするのですが。
もともとファシズム、ナチズム、スターリニズム、全体主義…というのは、そういうものですから。
それはともかく。
こうなって来ると、インターネット時代に、デモクラシーが生き残れるかどうかという話にもなって来ます。
ネットのせいで「ポピュリズムから衆愚政治へ」という道へ歩を進めている国は、現実にたくさんあります。
まして、もともと民主主義が根付いていない……
というかそれ以前に、大衆から理解さえされていない日本の土壌。
政治の話(体制迎合以外の)をすると、比較的年の行った人からは「そんな暗くなるような話やめてほしい」とか「危ないやつ」と思われ…
若い人からは「思想強め系?」とからかわれる。そんな現状の中に…
「ネット政治」が入り込んできたらどうなるか。想像するのも恐ろしい。
だから私は、インターネット投票には反対です。
遊び半分で投票する「ネット民」が跳梁跋扈することによって…
ひろゆきやホリエモン、成田氏や石丸氏のようなネット芸人どころか、もっとキワモノの候補者にまで、票がばらけてしまって…
まともな候補者がさらに不利になる一方、最初から選挙や政治をナメている本物のバカが…
それこそ政見放送で脱ぎ始めたり、半裸で「M字開脚」のポスターを掲示板に貼ったり…
そういうことをさせたりする者が、政治の場にしゃしゃり出て来るかも。まさに衆愚の地獄。
そんな地獄の釜の入り口が垣間見えた?のが、今回の都知事選だった、と言えるのではないでしょうか。
ネット以上に中高年が依拠する、テレビ・新聞といったマスコミは「電通」と「記者クラブ」の弊害のせいで…
完全に自民党を中心とした保守派に押さえられてしまっているのだし。それで、リベラルはネット戦略も苦手と来ている。
地方は地方で、地元の「お殿様一族」の支配から離れられないし。
うーん。先行きは本当に厳しい。
やっぱりそれが可能なのであれば、子どもたちを国外に逃がして、いつか来る…かもしれない復活の日に備えてもらった方がいいのかも。