昨日、おそらく後世、日本史の教科書に載るような大事件が起きてしまいました。
奈良県西大寺市内で起きた、安倍晋三元総理の、射殺事件です。
まず何よりも、亡くなったご本人を悼み、また昭恵夫人やごきょうだいなど、ご家族にお悔やみを申し上げます。
事件については、これから詳細が明らかに…されて行くと信じたいです。
とくに現行犯で逮捕されている山上徹也容疑者の背景と、犯行動機については、最も重要なところです。
例によって、その一番大事なところが、いまのところ明確になっていませんが。
まだ昨日の事件ですから捜査途中というのは承知していますが…
日本人の得意な「うやむや」だけはなきよう、ましてや「うそ」がまかり通らないよう…
これから「背景・動機」の解明には一番注視しなければなりません。
なぜならそれが、このような凶行を今後繰り返さないことに、何よりも役立つからです。
でもこの国では昔から、いろいろなことを隠し、うやむやにし、葬り去る悪しき伝統があります。
またそれが繰り返されれば、重大な禍根を残しかねない。これが、私がこの事件に関して…
危惧していることのまず一つ目です。
山上容疑者が、警察の取り調べにおいてこんなことを供述しているようです。
「自分の母親が、特定の宗教団体に入れ込んで家庭が壊れた。本当はその宗教団体のトップをやってやりたかった…
安倍元総理が来ると聞いて、代わりにやってやろうと…」
と供述していたという報道が(一部の報道機関で)あったのに。
報道しないメディアも多く。
一日たって「特定の宗教団体」から、なぜか「宗教」をはずして、NHKなども報じ始めています。
ちなみに山上容疑者自身も、当該宗教に入信している、もしくは過去にしていたようです。
だからこそ、その宗教団体への復讐と、安倍氏への攻撃とがつながったんだと思います。
その宗教団体と、安倍氏とのつながりが深い、ということを知っていたから…でしょう。おそらく。
それが一番、自然な解釈だと思います。
新興宗教団体と政治家とに、さまざまつながりがあることは、実は知る人ぞ知る事実です。
なにしろ、宗教団体にはお金があって(なぜなら宗教行為による収入には課税されないので)…
政治献金をたくさんしています。
とくに自民党の関連政治資金団体に、宗教団体から、多額の資金が提供されていることは事実です。
各政党の政治資金団体の、資金の出納に関する報告書を調べれば、明確にわかります。
まあ、与党だからそこに「投資」するのが一番役に立つからでしょう。
あとは、新興宗教の多くが「保守的な」もしくは「右派的な」規範を、教理の中で説いているから。
なかでも、安倍氏個人が関係の深い宗教団体と言ったら、どこがあるか。
あまり予断を交えるのは良くないですので、本当は詳しい捜査と公式の発表を待ちたいのですが、たとえば……
「世界平和統一家庭連合」(旧通称は、統一教会)などが考えられるかと。
韓国の宗教家、文鮮明氏が創立した、キリスト教系(一応)の団体です。
安倍氏はここが出している教会の新聞『世界日報』の表紙に、何度も登場しています。
>同教団の会員誌『世界思想』でした。
(もちろんご本人も同意の上で、コメントなども寄せています)
また、同教会が主催する大規模な「合同結婚式」(かつて桜田淳子氏も参加)など集会に…
ビデオメッセージを寄せたりもしています。
信者には広く、安倍晋三氏が教会と非常に近い人物だという「印象」が共有されていることでしょう。
もちろんこれ以外の、他の宗教団体が関わる問題かもしれません。ただ…
一般の日本人は全体として、新興宗教に良いイメージを持っていません。そのため…
「故人のイメージに忖度して」容疑者と、安倍氏と、新宗教、この三者の関わり…
そこにあるはずの「動機と背景」を、警察はともかく、マスコミが出すのを嫌がって…
うやむやのまま、故人の立派さと喪の悲しみだけを大衆にアピールして、それで終わらせるのではないか。
それをいま、危惧しています。
二番目に気になることは、俯瞰して見るとかなり稚拙でずさんな犯行が、なぜ、こうも易々と成功したのかです。
安倍氏の西大寺入りは、前日の夕方に、急遽変更されて決まったことだったとか。
であるからには、容疑者は現場の状況や、被害者の位置、犯行時の自分の動線などの細かい点について…
前もって計画することは不可能だったわけです。
(安倍氏の西大寺入りを前もって知っていたのなら、話は違ってきますが)
もちろん、下見も、リハーサルもできません。
つまり、武器を作って用意していた、というただ一点を除いて…
かなり行きあたりばったりの、衝動的で、ずさんな犯行だったわけです。
当日になっての思い付きである、なんとも場当たり的な犯行なのに、簡単に要人の命が取られてしまった。
なぜなのか。
日本の警察は、その程度なのか。
後でかなり良い角度から撮影された、その瞬間の動画をお見せしますが…
センシティブな内容なので、見たくない方のために、状況を抑えながら言及します。
なにより、なぜ周囲の警護官は、候補者と安倍氏の「背後」にあれほど無防備、無警戒だったのか。
まず、場所が最悪でした。
一般の人や車両が容易に侵入できる広いフリースペースが背後にあること(通行規制もしていません)。
周囲をガードレールに囲まれた狭い場所で、出口が狭く、いざ非常事態があった場合に退避が難しいこと。
通常、あのクラスの方の演説は選挙カーの上から行うのですが(安倍氏も普段はそうでした)…
車上と違い、すぐに発車して移動できないむき出しの平場に、小さな台を置いただけの演説であったこと。
(いくら直前での演説地変更とはいえ、選挙カーぐらい用意できなかったのかよ、と思います)
そんな、警護官にとっては非常に都合の悪い、不利な条件が揃っていて…
その分、通常以上に厳重な警戒をすべき状況であったのにも関わらず…
なぜ、あそこまで周囲への見張りが出来ていなかったのか。
とくに、警護対象者の視線から死角になる、背後に注視している人が、なぜあれほど少なかったのか。
どうにも、納得が行かないのです。
加えて、最初はかなり距離のある場所にいた容疑者が、射撃可能距離に出て来るには…
どんなに短くても、5秒以上の時間が必要だったはずです。
なぜその段階で、黒服の警察SPは黙って見ていたのか。
そして一発目の轟音が聞こえ、煙まで見えている異常事態なのに、なぜ警護対象者を「伏せさせる」行動を…
素人が考えても、いちばん効果的な保護の方法を…
プロのSPがあれだけいて、誰もしなかったのか。
ちょっと離れたところにいた黒服が、一発目の後飛び出してきて…
黒い鞄(おそらく中に防弾用の何かが入っているのでしょう)を掲げてブロックしようとしていますが…
あんなぶらぶらした頼りない防弾用具より、安倍さんを押し倒して伏せさせた方が、100倍安全のはずです。
でも、その瞬間、だれも安倍さんの方を見てさえいない。
安倍さんが被弾して、よろよろとしゃがみこんだ、その後になって初めて異変に気が付いて…
「あっ、どうしました!?」みたいな感じで駆け寄っている。
ほんと、素人以下でしょ。
警護になっていない。ただ近くに居て立っているだけで、何か起きた場合への、心と体の準備が全くできてない。
本当に、これが日本の警察の実力なんでしょうか?
このときの様子、ツイッターに上がっていたこちらの動画が非常に明瞭なので、貼っておきます。
人が撃たれる衝撃的な場面が映っていますので、視聴は個人の責任で、十分にご注意ください。
ご覧になった方はお分かりかと思いますが、安倍氏がうずくまって完全に倒れ込んだその後まで…
誰一人、彼に駆け寄っていません。
いったい、どういう事でしょう。
私には信じられないのですが。
安倍氏の背後でちょうど陰になっているところにいるSPは、近くにいる中では唯一後ろを向いていましたが…
1発目を黙って撃たせたあと、さらに一瞬躊躇して、2発目が撃ち終わった後になって駆け出しています。
信じられません。
この、警護の信じられない不備と失敗についても、十分な検証がされなければなりません。
現場の人がかわいそう、などという甘いことで、これまたうやむやにしたのでは…
今後も、こうしたテロは繰り返されます。
それともうひとつ。
路上に置かれた容疑者の手製の「武器」とされるものの画像を見ると、かなり太い鉄パイプ様のものを…
ビニールテープで雑に巻いたものです。
あれが、公表されている、安倍氏の命を奪った手製の「散弾銃」なのだとしたら…
口径からして、かなり広い範囲に散弾が散るはずです。物理的に、そうならなければおかしい。
狩猟などに使う「本物のショットガン」などと比べると、ずっと広範囲に弾が散らばるのが自然です。
それなのに弾は安倍氏の、致命傷となる急所を射抜いているのに、周りの誰にも当たっていない。
他に誰一人、けが人はいない。
いっぱい散ったはずの、他の細かい弾はどこに当たった?
安倍さんの動脈を断ち切り、心臓を貫通するほどの速度で射出された「散弾」の、残弾はどこへ行った?
とても不可解だと思いませんか?
とにかく、謎が多すぎます。
これほど重大な犯罪であるのに、もし、こうした山のようにある謎を徹底的に解明し、説明してくれることなく…
マスコミが「警察の威信」あるいは他の「何か」に忖度し…
追悼の感情に流された番組ばかり流して、謎を闇の中に放置したまま幕引きにするとしたら。
本当に心配です。
それこそ、日本の歴史の暗黒面として、後年になって、長く取りざたされる事案になってもおかしくない。
そんな局面を、口をぽかんと開けて、ぼーっとマスコミに騙されて過ごした、なんてことにもしなったら…
私は恥ずかしくて、死んだ後であっても、きっといたたまれないです。
あの世という物が、もしあればですが。
もう一つの危惧は、安倍氏の死去が、必要以上に「美化」されることです。
現に、安倍さんのことを「国士」果ては「英霊」などと称揚して、日本をお守りくださいと「祈る」人が…
SNSを中心に出てきています。
彼に向って「日本の平安を祈る」というのは、もう宗教の範疇に入ってきてしまっている、ということ。
自覚的なのかどうか、わかりませんが。
このような動きが、もし保守系のマスコミなどでさらに拡散されると…
安倍晋三氏が、ある種「神格化」されて、彼の生前の個人的思想を現実にする、政治的行動に利用されそうです。
無意識にであっても「宗教的な性質の感情」を政治に持ち込むことは、絶対に避けなければなりません。
まさに、政教分離の原則です。
宗教にまつわる情動やドグマを政治に持ち込むことは、大昔から世界各地で行われてきたことです。
支配者が大量の民衆を扇動するのに、これほど有効で、簡単なやり方はない一方で…
その結果はほぼすべて、大量の殺戮と、多くの人の不幸を招いています。
古くは十字軍の遠征などもそうですし、近くは「神国日本」「現人神」のイデオロギー…
もっと新しくは、イスラム原理主義による支配や、暴力などがあります。
日本の右派の人は、日本人の神国を尊ぶ感情を、耶蘇やイスラムと一緒にするなと言いそうですが…
それは、いかにも客観的な視点を欠いたものだと思います。
それこそ俯瞰的な視点から見れば、超自然的な感情と、政治や戦争とを絡めるという点では、どれも同じです。
特に日本人は、生身の人間だった人物を神格化して、本当の神として祀ることをたくさんしてきました。
菅原道真や平将門、徳川家康、豊臣秀吉、明治以降の乃木希典、東郷平八郎だけではありません。
維新のときの「新政府方」の戦没者に始まる靖国の「英霊」もそうですが…
地方ではものすごくローカルな偉人が、神として地元の神社に祭られている例が、びっくりするほどたくさんあります。
なので、安倍さんが「神」となっても、私は驚きません。
そう信じたい人は、それでいいのだろうとさえ思います。
ただそれを「政治利用」することだけは、絶対に避けなければなりません。
これが、今回のテロを巡る私の第三の危惧です。
いずれにしても、選挙期間中、しかも投票日の前々日というタイミングで起きたこの惨劇。
自民党が「弔い合戦」的な演出をして、今回の参院選に利用するのには、時間が足りないかもしれませんが…
間違いなく「同情票」が大量に加わって…
この事件がなかった場合以上に「地滑り的」「雪崩的」な自民党の勝利となることが予想されます。
私自身の投票行動には変わりないですが。
「感情」で政治が動けば、まずろくなことにならないということだけは、歴史が証明しています。
でも、大衆は感情で動きがちです。
私たちは「River of No Return=帰らざる河」を下っているのでしょうか。
たとえその先に、嵐の海が、あるいは轟轟と地獄の底に落ち込む瀑布があったとしても…
川の流れを逆流させることはできない。
それなら、いくばくかの巻き添えにしたくない人を、川の中から岸へと逃れさせるしかないのでしょうか。
でも、安全な岸辺など、いったいどこにあるのでしょう……
ただひとつ、この世に「真理」というものがあるのだとすれば、それは…
暴力で真の解決を見ることは何ひとつない。正義の暴力などというものはすべてまやかしであって…
一時的に物事を先送りすることにはなっても、その後で必ず、もっと悪い結果を生む、ということでしょう。
この方も、繰り返し言い続けているように。