しばらく「アルファロメオ」カテゴリーの記事を書いてませんが…
ペッピーノさんはとても元気で、毎日働いてくれています。
取り立てて何も書くことが無いほど元気ということですね。
リアに乗っかっているビッショーネくんも、幸せそう?です。
ところで明後日から、ペッピーノさんと一緒に、家族旅行を計画しています。
このコロナ禍にお年寄りを連れて旅行なんて……と思われる方も多いでしょうね。
私も正直、そう思います。
この旅、もともとは、政府の旅行支援に乗っかって計画したもの。
ひとりあたり5千円ぐらいのお金が、国庫からの助成で支給されます。
国庫ということは、我々の税金の集合体ですから、もともと自分で出したお金を活用する形になるんですが。
で、GoToとかこうしたものの過去の例を繰り返して、予約したころには収まりかけていたコロナが…
実際に出かけるころにはまたぶり返している、というパターンになってしまいました。
でもね、もともとこの旅行、私の父のために計画したものなんです。
会うたびに老け込んで行き、歩みは遅くなり、椅子から立ち上がるのさえ難しくなってきている父。
一日二日前にできていたことが、今日はもうできない。それに応じて、認知力も急速に衰えています。
そして、そのことを父自身も、はっきり自覚しています。
コロナ第8波が収束するまで待っていたら、マイカーを使っての旅行でさえ、もう出来なくなるというのは…
寂しいことですが、たぶん間違いないところでしょう。
しかも父にとっては、旅行することが、人生の中で一番の楽しみでした。
日本全国訪れていない都道府県はひとつもない、というぐらいに出歩いてきて。
海外にもたくさん行きました。
そんな旅好きの父が、コロナが始まってからの約3年間、一度も旅行をしていません。
体が動かなくなる前に、頭がまだはっきりしているうちに…
「もう一度旅行をしたい、温泉の大浴場に浸かりたい」というのが、父の一番の願いなんです。
介助されながら慎重にであっても、温泉の大浴場に父が入れるのは今がぎりぎりのタイミング。
実際もう何週間も前から、旅行を指折り数えて楽しみにしていた父。
そんな父に「コロナだから旅行はやめよう」なんて、どうして言えるでしょうか。
息子としても、老い先短い親に、いい思い出を作ってあげたいと思うじゃないですか。
万一、この旅行でコロナに罹ってそれでなくなるようなことになったとしても…
それでもなお、行かせてあげた方がいいと思っています。
私は「民草の道徳」としての儒教は嫌いなので「親孝行」という言葉は使いたくないですが…
それでも、母によっていろんなトラウマを植え付けられてきた私が、無事におとなになれたのは…
父の存在が心の支えであったから。
趣味や関心事、考え方の傾向に関しては、父よりもむしろ祖父の影響が強いかなと思う私ですけれど。
でも、まあ、お分かりとも思うのですが、私にはかなりミーハーなところがあって…
たぶんそのせいもあって、学生時代は芸能人のちょうちん記事を書く「二大雑誌」の一方の編集部でアルバイト。
昭和中期生まれの方なら「明星」誌と「平凡」誌を目にしたことはあるはずです。
(どちらもとっくの昔に消滅したので、実名を出してもいいでしょう)
バイトとはいえ、テレビ局や芸能事務所や、ときには芸能人の自宅なんかにも…
ポジ写真や原稿やゲラ刷り、色校等々の、届けものや受け取りのために、出入りしていました。
その流れで出版関係の仕事を志して、最初に就職したのは、芸能と皇室の記事を売りにする某週刊誌の編集部。
(芸能記事に関しては、ちょうちん持ちからゴシップの暴露へと180°方向転換でしたが)
そのせいで、人生かなり遠回りすることになってしまったのですが、最初にそっちに行ったのは…
父が半世紀以上もの長きにわたり、芸能関係者として仕事をしてきたのと、やっぱり関係あったのでしょう。
父は、映画、テレビ、舞台を問わず芸能の世界で「○○さんの名前を知らないやつはモグリ」とか…
「○○さんが通った後には、ぺんぺん草も生えない」とか言われたほど、活躍していた人です。
(もはや営業する余地がないほど、仕事の案件を根こそぎ持って行ってしまうということ)
だから良い話も醜い話も含めて、その世界のことを日常的に父から聞かされて、身近に感じていたんでしょうね。
もっとも父の従妹は、現在の小倉唯さんと同じ日本コロムビアに所属したプロのレコード歌手でしたし…
祖父は若い頃「天露」という芸名でかなり人気があった活動写真弁士の…
(無声映画にセリフやナレーションを入れる人。この天露さんも親類です)
助手として、その傍らでバイオリンを弾いていたそうですから…
家系的に、もともとそちらの方面に縁があったのでしょうけれど。
とにかく家での父は、優しくて、見た目かっこよくて、おしゃれで、正直言って自慢のおとうさんでしたから。
性格が根本的に違うとはいえ、いろいろ影響を受けているのだと思います。
そんな父に……
一緒にいられるうちに、出来る限りの良い思い出を作ってあげたいと思うのです。
自分ひとりで大きくなったわけではないのですから。
いわゆる成功者には、自分の力だけでのし上がったんだと、自慢にしている人も少なくないでしょうけれど…
もうこの年になると、人生のほとんどは運と、生まれ育った環境に左右されていて…
その間、身近に接した人々、また自分の目には見えない遠くのどこかで、自分を支えてくれた無数の人々…
そうした皆の「おかげさま」で、今の自分があるんだということを、ひしひしと感じるようになります。
きれいごとなんかじゃなく本当に、事実として、実感として。
親は、支えてくれた人々の代表のひとつであって、感謝はちゃんと、言葉と行動で表さないといけないですから。
旅を愛した父にとってこれがおそらく、生涯最後の旅行になるでしょう。
楽しいものにしてあげたいです。