別に、息子に私から何かのメッセージを送ったわけではないんです。
このブログも息子は全く読んでいません。
それでも一昨日、私と息子でやっている直接のLINEにこんなものが送られてきました。
彼女とのデートの途中で本屋さんに入って…
(変わったカップルなので、デートで神田神保町の古書店街に行ったりするようです)
そこでこの本を手に取って、パラパラと見たら「一目ぼれ」して買ったのだと。
このブログの3日前(前の前)の記事でも取り上げましたが…
いま与党から国会に出されている、大学法人法改悪案が非常に危険なもので…
しかも、この国の学術全体の発展を阻害する悪法案だという問題があります。
そんなときに、まさにタイムリーな読書の選択。
岩波文庫の表紙の、おそらく編集者が書いた文章を読んだ限りでは…
「学問は、単なる手段と成り下がってしまえば…ただちに学問であることをやめてしまう」
という一節が、この本の中にあるようです。
日本の学問・学術が、政界や財界のいいなりとなり…
特定の政治目的や、企業の利益を実現するための下請け機関となったら…
やがてこの国の学問も科学技術も、事実上の死を迎え、国家衰亡に至る。
そのことを、最近私と話し合ったわけでもないのに、ちゃんと息子は分かっていて…
それでこの本を購入して読もうと思ったようです。
科学者が「哲学する」こと…
科学技術発展の「意味」と、そのあるべき「方向性」について、深く考えること。
それはとても大切で、そして本当は不可欠なはずのことなのですが…
実際に研究をする中で、出来ている科学者やエンジニアが、どれだけいるか。
親馬鹿と言われるのを承知で言えば…
やっぱり我が息子だと、改めて見直しました。
フリードリッヒ・シェリングの著作を読んだことは、私はありません。
なので、良い書物なのかどうかを判断できる材料を持っていません。
でも、朝9時から夜9時までが、基本の研究に従事する時間で、さらにしばしば残業して…
研究室での実験や、分析検討、レポート作成が深夜に及ぶとてもハードな毎日を送っている中で…
人文系の書物や社会科学系の書物を、時間を作って読んでくれている息子。
でも、とくに彼に対して、そういう本を読むように…
「誘導」したり「指導」したりしたことは基本なくて。
やりたいことを自由にやって、読みたい本を自由に読んでもらって来たのですが…
雑談の中で、政治や社会の問題、それと科学技術との関係について議論することはあって。
そうした中で、私から(良くも悪くも)影響を受けて来たんですね。
これなら私が死んだ後、私の「魂」は形を変えつつも、次の世代に引き継がれて行く。
こんな嬉しいことはありません。
もちろん人は、親の力、親の影響のもとのみで成長するはずもありません。
これまで彼が出会って来た様々な友達、先輩や恩師など、すべてのお世話になった方々のおかげです。
知的で、辛抱強く愛情深い人である様子の、今の恋人の良い影響もあるでしょう。
(彼女は高校のときから、息子の親友のひとりだった人でもあるので)
それでもなお……
私はやっぱり生まれてきてよかった、ここまで生きてきてよかった、と思います。
親が言うのも何ですが、専門の薬学研究の分野では、彼はおそらく天才なので…
(常人にはつらい努力が、彼にとっては楽しい取り組みだという意味で「努力すること」の天才)
このまま行けば、これから大きな業績を挙げると思います。
そこに確固とした「哲学」があれば、方向性を大きく間違えることはないはず。
『自分のためでなく、未来の患者さんのために、全力で勉強』
という彼が作ったスローガンに基づいて…
日本という小さな枠に留まらず、世界の人の幸福に貢献する仕事をしてくれるでしょう。
あとは、災害や事故や病気、そして戦争などで、彼が若い命を散らせることがないこと。
それだけを祈っています。