きいろをめでる

黄瀬、静雄、正臣の黄色い子達を愛でる同人二次創作短編小説中心。本館はAmebaです。

生誕日,後記録――――  (静正)

2010-06-21 22:15:00 | 小説―デュラララ
聞き慣れた着メロに、携帯へと目を移す。
表示は非通知、でもワンコールで通話ボタンに力を込める。何たって相手はわかってるんだ。恋で守勢に回ってどうするよ、オレ!!

「静雄さん!!!!」
「え!?なんで一言も話してない非通知を俺だってわかるんだよ!!??」
「何でってそりゃ・・・愛の力っすよ」
「愛って・・・・・・非通知で急に電話したら、驚くと思ったのに・・・」
がっくりといった声が聞こえた。

そう、愛の力。
全く予測してなかったけど、電話が静雄からだと、確信があった。
さすがオレ。いや、違うか。



「何ですか?オレに何か用事っすか?それとも、驚かすため?」
「いや、違ぇよ。その・・・あれだ、お前、今日、その・・・・・・たんっ・・・・・・とう」
「え?聞こえないです」
「だから、その・・・」

何を言いたいんだろう、と疑問に思っていたら。



「誕生日おめでとう」



とてもシンプルな言葉に、また予想もしていなかった言葉に、一瞬動けなくなった。
シンプルだったからこそ、であろう。
それから、急に胸が熱くなり、目頭が熱くなり―――言葉は、実体のない熱となって、心を溶かしていく。


気付いたときにはもう、頬に熱く濡れた筋が流れていた。


「静雄っ・・・さん・・・・・・・」
「なっ・・・どうした!!!???もっと情感こめて言うべきだったか!!??・・・・・・嬉しく、ないのか?」
突然の泣き声に驚く静雄。
「嬉すぎますっ・・・オレ、今日言われた中で一番嬉しいですっ・・・えぐ、ひっく・・・静雄さんのが、一番、嬉しい、ですズビッ」
「そ、そうか」
泣いてぐちゃぐちゃになりながら、感激をしどろもどろに口にする。
シンプルだからこそ、誰よりもリアルな量感のある言葉で、まっすぐで、決して口が上手い訳でもないのに直接伝えてくれて、・・・・・・とにかく、嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい。嬉しいって言葉では言い表せないくらい嬉しい。
好きな人に、まっすぐに想われて、誕生を祝ってもらえてるのだから。

「プレゼントとか何がいいのかわかんなくて何も買ってねぇんだけど・・・何がほしい?」
「いい・・・です、今の電話だけで幸せですっ」
「それじゃ俺の気がすまねぇんだよ。何でもいいから言ってみろ」
「なら、一個甘えてもいいですか・・・」
「おぅ。何でもいいぜ」




「今度、会ったとき、抱きしめてください」

「・・・・・・ッ」




しばしの沈黙。
静雄が黙っていたので、正臣も黙って涙を拭いていた。
・・・どうしたんだろう。怒らしちゃったのかな。つかオレ、泣き過ぎ・・・・・・

そんなことを考えていると。


「えッ・・・・・・」


背中にあたたかな感触があったかと思うと、後ろからしっかりと腕がまわって抱きしめられる。
ほのかに煙草の香り。
それから、少しの汗の匂い。
6月ですでに蒸し暑い夕暮れを、全力で走ってきたらしい。
息が詰まる。
苦しいわけではない。
純粋な喜び。
愛しいひとへの胸の高鳴り、ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ。


「あんなかわいいこと言うから、来ちまったじゃねぇかよ・・・」
小声だが、密着していて声がよく通る。
そんな耳元の囁きに、またもや鼓動が高く大きくなる。

「静雄さん」
「誕生日プレゼントなんだから、誕生日に渡さなきゃダメだろーがよ」
「静雄さんっ・・・!!!!!!」
くるりと方向転換し、自分からも静雄を抱きしめる。
また、涙にとどまりがなくなる。
「もう泣くなって・・・・・・」
大きくてあたたかな手が、背中をさする。

「さっきは電話だったからな・・・」
「?」





「誕生日、おめでとう、正臣」

額に軽くキスを落とす。

緊張と祝福と・・・いろいろな気持ちの入り混じった言葉に、正臣は涙に濡れた笑顔を返した。








オレって、幸せだなぁ―――――――――



あつ。

2010-06-21 16:12:38 | 日記
しずまさ前提の、いざしずといざまさが見たいです

報われないいざやさん


・・・ただの呟きです


あと、原作デュラ買いました
2巻まで読みました
おもしろ!!



・・・暑いです・・・・・・・・

Someday,I will #2(火黄)

2010-06-19 23:11:12 | 小説―黒子のバスケ
長く続いた静寂を打ち破ったのは、自宅のインターフォンだった。

(誰だろう・・・・・・)

気にはなったが、動く気力はなかったので、このまま居留守を決め込むことを決意する。

何度かインターフォンが鳴った後、スピーカー越しに聞こえてきたのは、予想していなかった声だった。

『おい黒子、ここで合ってんだよな?・・・は?電話でくらいはっきり話せよ!!』

一瞬にして、目を見開いた。

(火神っち・・・?)

何しに来たのだろうか。

会話の様子から、黄瀬の家を黒子から知って来たはいいものの、裏返った表札や反応のないインターフォンに、不安になり黒子に確認の電話を入れている、といったところだろう。


(でも・・・・・・)

今は、独りでいたかった。

できれば、このまま帰ってほしい・・・


ほしかったのだが。

「あれ、鍵あいてんじゃねぇか・・・おい、黄瀬、いんのか?入るぞ」

入ってきてしまった。


仕方ないから、せめて寝たふりをしてやり過ごそうとした。


進入してきた火神の目線を感じる。

(ばれないかな・・・)


不意に、ベッドの片側が沈んだ。
火神が、ベッドに座ったらしい。

さらに、頭を撫で、髪を梳いてくる。
それがどうしようもなく心地よくて、反応してしまいそうだったけれど、何とかして堪えた。

今起きたら、自分が何をして、火神が一体何と思うかは、わからなかったけど少し恐ろしかった。




.

ふううー

2010-06-18 21:18:12 | 日記
やっちまった感満載ですね!!←

うん知ってる…
黒バス小説がみんな中途半端だってことくらい知ってる…
でも!さ!!!!!!!
26さんとやり取りしてたら静正書きたくなっちゃったんだwwwwww

メール小説ぶちったのは、
ただ単に
あの敗戦ネタやりたかった…いあ、
やらなきゃなと思ったからです。

まだまだ続くよ。


ああでも若干、
デュラのほうがネタづまり気味です。。。
原作読まなきゃなぁ。
今度買って来よう。
お金ないけど。



カラオケいきたいなあ~
誰か行きませんか

逃げないで(静正)

2010-06-18 20:25:45 | 小説―デュラララ
「待ちやがれぇぇぇこの野郎ォォオォオ!!!!!!」
「怖いなぁ静ちゃん、やめてよも~」

喧騒の響く、日の落ちた池袋の街で、そんな声が聞こえてきた。

通行人は、またか、とでも言いたげにその二人を見た。

平和島静雄と、折原臨也。

見る度見る度、平和島静雄は折原臨也を追い掛けている。

その理由は―――まあ、彼ら通行人という一般人には、わからないところではあるのだが。


そうこうしているうちに、臨也が路地へ逃げ込み、静雄もそれを追ったので、二人の姿は見えなくなってしまった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆




「待てッ・・・このっ」

入り込んだ路地は案外狭くて物が多く、場慣れしているらしい臨也への距離はなかなか縮まらなかった。

だがそれもつかの間、少し開けたところで、じりじりと近づいていく。


「そろそろ疲れてきたし、ここいらで・・・」
臨也が何か呟くと、急に角を曲がった。

それを追い掛けようとすると。


「あれ、静雄さん」
臨也とは違う意味で聞き慣れた声が聞こえた。

――紀田正臣。

見かけたその姿に、つい立ち止まってしまう。

「最近会ってなかったけど、元気ですか?俺、会いたかったんです」
「ああ、そ、そうか・・・」

毒のない笑顔と『会いたかった』の言葉に、頬が緩みそうになった。

しかし。
「あーでも、俺忙しいから、これで・・・」
と言って、背を向けた。

いざ走り出さんとしたとき。
「・・・行っちゃうんですか?」
正臣が、服の裾を控えめに掴んでいた。
寂しげに上目遣いで聞いてくる。

(うっ・・・)
正直、この手のことをされると全く太刀打ちできなくなる。
よりによって、正臣。

どうしようもできなくて迷っていると、今度は静雄の手を軽く握りながら、言葉を続けた。
上目遣いで。
静雄は赤面する。というか、赤面せざるを得ない。とにかく心臓が高鳴っていた。

「今度会えたらたくさん話をしたいなとか思ってたんすけど・・・あ、でも静雄さん、仕事忙しいんですよね、すいません引き留めちゃって」

そういって俯き、手を離した。


でも。

「いや、もういいんだ」
「え?」
「どうせ仕事じゃねぇし・・・本当の仕事は終わってるし・・・その、俺もお前と一緒にいたほうが楽しいし・・・」

最後のほうが聞き取れなかったが、正臣が笑顔を明るくする。
その笑顔にまたやられそうになった。


「でも、ここじゃちょっとな・・・どこか移動するか?」
「オレ、静雄さん家に行ってみたいです」
「は!?」
取り出しかけた煙草を、一瞬落としそうになる。
「行ったことないし・・・それに、静雄さんと二人で話したいし」
「おい・・・・・・」

不覚。
きてしまった。

「何しちまうか、わかんねぇぞ・・・」
「いいですよ、むしろ大歓迎です」
言葉の意味をわかっているのかいないのか、いや、高校生だ、前者であろう。
噴いてしまいそうになるのをなんとか堪えた。

「・・・しゃあねぇな、連れてってやるよ」
「やったー!静雄さん大好き!!」
「おいっちょっ何言ってんだよ!!」

完全に正臣のペースに取り込まれる。

そんなことも楽しく思え、今日ばかりは正臣に免じて臨也は放っておこうと、会話を楽しみながら自宅の方向に足を向けた。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆




「上手くいったなぁ・・・」
一人パソコン前で呟く男。

「絶妙かつ絶好かつ最高のタイミング・・・そして予想と寸分違わぬ反応・・・まさに計画通り!! 静ちゃんのリアクション、間近で見たかったなぁ~」

悲しいかな彼には話し相手はいなかったが、本人は気にしていなかった。

「二人は、セッティングした人に感謝すべきだよ・・・全く、二人とも楽しんじゃって薄情だなぁ・・・まぁ、逃げ切れたからいいんだけど」


静雄と正臣が出会うように仕向けた張本人―――折原臨也は、上手くいった計画に、ほくそ笑んだ。

次は何をしてみようかと、考えを張り巡らせながら。




そんなこととは知らないから、静雄と正臣は幸せな時間を過ごしたのだけれど。

Someday,I will #1 (火黄)

2010-06-17 07:21:21 | 小説―黒子のバスケ
汗も涙も、出てこなくなった。

体も心も、渇いてしまったらしい。


一昨日の出来事は、黄瀬をそうするのに十分過ぎるほど、彼の感情を揺さぶった。


・・・・・・元チームメイト、そして勝利を誓った男への敗北。

チームのために、信頼してくれる仲間のために、と戦った。

だからこそ、仲間と共に戦おうとしたのに。

『俺のバスケは------』

昨日の言葉が蘇る。

自分が誓った方法とは全く逆な意味。
それは、かつて最も憧れた男からの発言。


「・・・・・・・はぁ」

大きなため息をついて、動く気力もなしに、部屋の静けさに、目を閉じ意識を落とした。
眠くはないが気怠い体を、ベッドに横たわらせたままでいる。


どうせ今日も、誰も来ない。
家の鍵は開けてあるままだが、眠る気もないし、いざとなったら起きれば大丈夫だ。


とにかく今は、何もしたくはなかった。




.

夏には妄想がいっぱい

2010-06-12 20:48:05 | 日記
今日は暑かった(;´д`)ふぃー。

暑いことをネタにして何か書ければよかったんですが・・・
・・・・・・・駄目でした。←

汗かいてだるーん、ってなってる美少年って、
とってもエロくておいしいと思いませんか!?←

あと、ガリ●リ君食べて唇濡れたりね。

ああ、この二つは黄瀬に合いそうだ!←

それネタにしたかったなぁ。
いや、しよう。


うんでも、数学のテスト勉強頑張る。

今読み返すと恥ずかしい( 〃д〃)

2010-06-10 07:44:00 | 日記
非常に眠いです。

どうも氷月です。


なんかこの分館、アクセス数の増減激しいですね。
恐ろしいです。


今回・・・まあ小説二本うpしたわけなんですが、
残念な感じですみませんでした。←

黒バスにおいては黄瀬直接出てこないし、
火神はデレすぎてるし、
デュラに至ってはキャラ崩壊、
両方通して山無し・落ち無し・意味無し略してやおいだし・・・

本当すみませんでした。
あの、氷月を殴ってくだs(ry



火黄のほうは、もう一話書きます。
黄瀬書かなあかんのよ(///∇///)
ぶっちゃけ前半は愛されてる黄瀬書けたのでそれで((((((←
後半は黄瀬祭ですよwwwww


静正のほうは、長いくせに内容薄くてごめんなさい。

静ちゃんの疲れを見抜く家事上手な正臣を書きたかったんです。
でも攻めの家なんかに行ったら、何起こるかわかりませんよね((((腐女子妄想乙

まあ静ちゃんはそこまで飢えてるタイプじゃないので、大丈夫ですかねw

もううちの趣味しか入ってない。

キャラの口調、身長と年齢、静ちゃんが正臣をなんて呼ぶかがわからなかったから余計gdgdなんですね。わかります。


今度はもっと、二本とも読みやすくて意味のある内容にしたいです。




あ、あと、お願い(?)なんですが、
コメントしてくださっておkですよ・・・?
ていうかむしろ感想ご意見でもなんでもコメントがほしい←
アクセス数からみても色んな方が見てくださってるのはわかるんですが、皆さんがどう思ってるのか知りたいので・・・。
時間あったらお願いします人(´ω`*)
強制ではないですからね!!


ではでは~ノシ

疲れを癒してくれるモノ、(静正)

2010-06-09 19:14:53 | 小説―デュラララ
「お前、いつも通り本当に調子いいなぁ」

今日は、そんなことを一体何人に言われただろうか。

・・・むしろ、いつにないほど疲れているのだが。


誰もいない公園のベンチに何となく腰掛け、新しい煙草に火をつけてゆったりと味わう。

最近、仕事が多いのとうぜぇのがよく出没しているせいで、疲れ気味だ。

だが、人にはいつも通りに見えているらしい。

「帰るか・・・」
今日はもう仕事はない。

サイモンのところへは昨日行ったから、今晩は家で食べるか、と足を向ける。
いざ家で食べるとなると、いつの間にか「自分で作る」という考えは消滅していた。
自分で作っても、美味くない。




吸い殻を捩込み、公園を出ると、急に声をかけられた。

「あ、静雄さん!」
「・・・あ?」
見ると、青のブレザー制服を身に纏った、金髪とも言えるほどの明るい茶髪の少年が、こちらへ駆け寄ってきた。

紀田正臣。

「よかったー!探してたんですよ」
肩で息を切りながら言う。
何もそんなに急ぐことないのに、とは思いつつも、その姿を見てふと思い付いた。

「お前って・・・」
「なんですか?」
「犬みたいだな」
「え」
ぽんぽんと、頭を撫でる。
日を浴びて光を返す髪の、さらさらとした手触りに、どうしようもなく癒された。

「ちょっ・・・静雄さんっ」
赤面しながら抵抗しつつも、その払いのける手には拒否の意思が感じられなかった。

おそらく、触れられていること自体は嬉しいのだが、「犬」発言と、和やかな静雄の表情に、恥ずかしく思っているのだろう。

「犬っぽいじゃねぇか。嬉しそうに走り寄ってきて、こっち見上げてくんだか・・・ら・・・・・・」
語尾がどんどん小さくなっていく。
言っていて自分も恥ずかしくなってきた。

二人して黙ってしまう。
お互い、顔には朱を残して。

急に、頭を撫でていた手は後頭部へ回り、正臣は力強く静雄の身体のほうへ引き寄せられた。
ばふっ、と空気の潰れる音が聞こえる。
密着して、さらに心拍数が上がっていく。

さらに、静雄は密着してもなお、頭を撫でていた。

手触りを楽しむように。
自分よりも小さなその少年を愛おしむように。

突然のことに驚いた。
でも、正臣は少しの間だけ、抵抗するのをやめておこう、と、素直に体を預けた。




しばらくの間そうした後、やんわりとした力で静雄から離れる。
静雄のほうも気が済んだのか、意思を見せるとすぐに離してくれた。

そして、自分が何のために静雄を探していたのか、急速に思い出した。

「そ、そうだ静雄さんっ。オレ、これを渡そうと思って」
差し出されたのは、袋に入ったカップケーキ。
「家庭科の調理実習で作ったんですよ。ほとんどオレ一人で作ったんで、班の奴らが余り持っていってって」

受けとったケーキを眺めた。
美味しそうな色と香りが、食欲をそそる。

「ありがとな」
「静雄さん疲れてるみたいなんで、ちっちゃいけどそれ食べて、ゆっくり休んでくださいね」
「・・・っ」

疲れていると見抜かれていたなんて。
驚いたが、流石だなと感心もする。

「ご飯もちゃんと食べてくださいね。あ、なんならいつでも作りに行きますよ」
男子高校生らしからぬ発言に少し頬が緩んでしまったが、すぐに頬を持ち上げて微笑みに変える。

「ああ、ありがとう、な」

ぽん、とまた頭に手をのせたら、嬉しそうに笑う。
自分だけに向けられたその笑顔が、つい可愛く思えた。
可愛いと思ったから、上半身を屈めて額に唇で優しく触れたら、笑顔が紅潮に変わる。

そんな様子もまた、可愛く思えた。


最後に、指通りのいい髪をぐしゃっと掻き回して、
「じゃあな。おやすみ」
と、夕陽には少し早い挨拶をする。
性急な感じもしたが、
「おやすみなさい、静雄さん」
と正臣は笑顔で返した。





・○・○・○・○・○・○・○・





今度、夕飯を作りに来てもらおうと、ケーキをかじりながら静雄は思った。

呼ぶほどの家でもないし、来てもらうほどの時間があるかどうかはわからない。
それに、自分が何かしてしまうかもしれないという考えだって、浮かんで来る。

でも。
この優しい味を、また食べたい。

そう、思った。





いつの間にか、疲れなど忘れてしまっていた。

優しげな夕刻の出来事と、気持ちの詰まったカップケーキは、ここ数日の疲れを癒すのには十分すぎたのである。

日本語とメールと君 side:seirin (火黄)

2010-06-07 08:20:55 | 小説―黒子のバスケ
ポケットの中で、携帯が規則正しく震える。
取り出してみると、一人だけ個別に設定されたランプの色が、メールの送り主を示していた。

顔が、一瞬綻んでしまったらしい。

「あら、メール?なになに彼女~?」
「えぇ!?火神、彼女いんの!?」

隣に、カントクと小金井先輩がいた。


・・・全く気付かなかった。

ぼーっとしていたせいで、好奇心の対象になってしまったことが悔しくなる。
それと同時に、横に来た先輩二人に気付かないほど、自分はそんなに、メールに舞い上がっていたのかと、情けなくも感じた。


「っか、彼女なんていねーよ!ですよ!!」
また妙な敬語を使ってしまった。
日本語はどうにも難しい。

「ふぅん・・・彼女、は、いないのね」
カントクは、やたら含みのある言い方をする。
カントクにはメール相手がバレてんのかな、と思ったが、幸いにも小金井先輩は気付いてないらしい。キョトンとしていた。

「バカガミにもとうとう春がきたか・・・まあバスケバカ同士通じんのかしらね」
想像通り。
バレている。
やっぱり日本語は難しい。
上手くごまかすこともできないときた。


とにかく、長居するとまた冷やかされかねない。

「・・・んじゃ、俺はこれで」
「あっ!火神逃げんなよ!!」
別れを告げたら、何も気付けていない小金井先輩がいろいろ叫んでいたが、気にせずその場を離れた。

・・・メールの内容も気になるしな。




○●○●○●○●○●○●




いつものようにテンションが高めのメールを読んで、思いっ切り顔がゆるむ。
自分でもはっきりわかるほどに。

「しゃあねぇな、今度スポーツショップでも連れてってやるか・・・」

デートの催促への返事にしてはそっけない場所だが、そこが1番、お互い話が合うところだろう。

それにもし、モデルであるコイツのファンに、うっかりテーマパークで二人きりなんてところを見られたら、何が起こるかわからない。


日本語は難しいが、拙くとも気持ちが伝わるように。
返信を、打つ。
やはり、難しいけれど。


同時に、別のことも考えていた。

(アドレス伝えてくれた黒子に、感謝しなきゃな。
やっぱし黄瀬のこと、

好きだ。)