名古屋地裁 環境省推進の風車騒音レベル35㏈基準は、「あくまで目標値で科学的妥当性も検証されていない」
田原市六連町の風力発電設備の騒音により精神的苦痛を受けたとして、近くに住む大河剛さん(46)が設置会社のミツウロコグリーンエネルギー(東京都)に稼働停止と損害賠償を求めた訴訟の判決公判が22日、名古屋地裁豊橋支部で開かれた。田近年則裁判長は、大河さんの訴えを退ける判決を言い渡した。
大河さんは「風車騒音に対する基準がない以上、何を言っても無駄なように感じた。今後の対応は弁護人と相談して決めたい」とコメントを出した。
裁判は、風車の稼働音が受忍限度を超えるか否かが争点として行われた。田近裁判長は「受忍すべき限度を超えるものであるとはいえず、人格侵害を認めることはできない」として原告の訴えを棄却した。
判決によると、大河さん宅付近では、環境基準の騒音レベルは昼間55㏈(デシベル)以下、夜間が45㏈以下と定められている。同支部は計13回にわたって実施した測定結果により、屋外で43㏈、屋内では28㏈程度であったと認定。「日常生活や睡眠を妨げるほどの騒音と認めることはできない」との判断を示した。
大河さんは2013年8月、設備の停止を求めて同支部に仮処分の申し立てを行ったが却下され、昨年3月に提訴していた。弁護人は、環境省が推進する風車の騒音レベル35㏈を基準とする判断を請求。同支部は判決で「あくまで目標値で、科学的妥当性も検証されておらず採用できない」とした。
裁判で同社の弁護団は「建設当時に地域住民の同意を得て、説明も尽くした」などと設備の正当性を主張。大河さんの弁護団は、住民への見学会と稼働した風車が異なるメーカーである事実を示し「虚偽の説明を行った」などと訴えていた。
同社の櫻庭信之弁護人は「裁判所は慎重な審議を進め、妥当な結論だと思う。今後も環境に優しく、地域貢献や共生に努めていく」と話した。
黙殺の音 愛知・田原風車裁判の経緯 8/7
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