09/1/18 朝日新聞「風力発電、近所で頭痛・不眠 環境省、風車の騒音調査」の記事中に、環境省は「風車と体調不良の関係をめぐる海外情報の収集を開始。」とあった。本当かしらなどと思っていたが、一応、そんなこともなく、09/0312、環境省サイトに「諸外国における風力発電施設から発生する騒音・低周波音に係る基準等の状況について(暫定版)」として、報道発表資料として発表された。
詳細はファイルを各自で当たってほしいのだが、結論的に言えば、
①体調不良の関係をめぐる海外情報は今回のモノにはない。
②「基準等の状況について」は、風力発電導入主要国(ドイツ、米国、デンマーク、イギリス、フランス、オランダ、カナダ等。何故か風車大国スペインが抜けているが)では、騒音規制は、各国とも「昼間50dB前後、夜間40dB前後」と言ったところで、日本の環境基本法における、騒音の環境基準値と大差はない。
③また、低周波音に関して規制を特段に定めている国はないようだ。
ただし、注目すべきは、アメリカ、イギリス、フランスで、「暗騒音レベルとの差が5dBを超えない」と言う規制を設けている点である。この「暗騒音と比較して規制」と言う考え方は、拙稿「風力発電とエコキュート 新しい低周波音被害」で私論を述べているが妥当性がある考え方であると考える。私には具体的に「何デシベル低ければ良いか」と言う、具体的な数値は解らなかったので上げることはできなかったが、素直に考えて5dBの低減はひとまず妥当な線であろう。
たかが5dB、されど5dBで、因みに、「5dBの騒音の低減は理論的には騒音は1/2程度に低減」されることになる。「騒音レベルを5dB下げる」ことが、技術的にいかに大変であるか、特に規制値すれすれのレベルの場合には、1dB下げる騒音対策に掛かる経費が如何に大変なことであるかを興味深く紹介している「1dBの重み」と言うページがある。ザッと見て1dB下げるのに1000万円は掛かるようである。
そして、風車との距離(セット・バック)だが、アメリカのウィスコンシン州では約805m、フランスでは1,500m以上とある。セット・バックが格段に定めてない国では、実はまともに、騒音規制を守れば自ずと風車との距離は出てくるはずで、具体的な距離など改めて示すまでもないことなのかもしれない。
朝日新聞も折角報道したのだから、環境省の対応も報道すべきであるが、紙面がないのか、それともわざわざ報道するほどのことでもないのかもしれない。それにしても、その気になれば、たった2,3ヶ月でこれだけのモノを集めることができるのだから、「西欧諸国の動向」が大好きな日本国なら、本来ならば、こういった事態になる以前にこれらの情報は、当然収集されていたと思うのだが、「我が国において、風力発電施設から発生する騒音及び低周波音に関する苦情が発生している現状に鑑み、今後の対応に資するため」などという、余程、取り繕いの緊急性を感じた事態にならなければ行動しないのであろう。もちろん、これらのデータ収集は日本騒音制御工学会に外注しているから予算が付かないことにはできない相談なのかも知れないが。
だが、ここに関して姑息な噂を耳にした。もちろん私に噂の「ウラ」が取れる訳ではないので、あくまで一方的な「風聞」と言うことになるが、これまでに聞いていた話しと合致する点があり、はたまたやりそうな話しでもあるが、実は正直なところ”そこまでやるか”というような話しでもあるが。
昨年、風車被害者に「カネが掛かるのは仕方ないけど、市や県でなく一度、民間の測定業者に測定してもらったら」と薦めたことがある。その際、「民間の測定業者に頼もうとしたのだが、どこも”今風車の測定をして”変な結果”がでると、面倒なことになるので…。”と言ってどこも測定してくれない。」と言う話しであった。
単なる仕事なのに、変な話しだなーと思ったが、少し考えれば、今微妙な問題を抱える風力発電問題で、”変な結果”が出たりすると、自治体や風力発電業者を敵に回してしまい、その後、商売がやりにくくなる可能性があると言うことであると言うことらしい。言うまでもないが、民間の測定業者にとっての上得意は、大きめの仕事をくれて、事業の信用性を高めてくれる行政や民間の大きめの事業者であって、決してなけなしのカネで測定を頼むような”一見さん”の騒音被害者などでは決してないことは肝に銘じておくべきであろう。
ところが、業者の反応が芳しくない。事情を聞いてみると、日本騒音制御工学会の上の方から”圧力”が加わった、と言うのである。ナナ、何と、ウソでしょ!と思うかも知れない。私もそう思った。だが、測定業者は基本的に全て、日本騒音制御工学会の会員である。そこからの圧力をはねのけると言うことは、学会内、ひいては、自らの事業活動全てを危うくする可能性が十二分にあると言うことなのである。
もう一つ。騒音被害者に結構肩入れしている測定業者がいる。ところがそこに「科学的な測定をしてくださいよ」と、これまた、日本騒音制御工学会の上の方の人からアドバイスがあったと聞く。これを素直に聞ける人は幸いである。興ざめであるが、これは”変な測定をするなよ!”と言う脅しなのだそうだ。
国家資格である環境計量士の資格の有る者は間違いなく専門家であるはずで、その測定結果は間違いないはずなのであるが、それとても実はそうでもないようで、早い話が、実のところ、行政や事業者にとって都合の悪いような測定結果は、どうも「科学的な測定」ではないようだ。