原発の効果について、大前研一(ビジネス・ブレークスルー代表取締役)が、偶々、見ていた「 原子力発電は大輸出産業になる」を読んで「おお、何と大いなる皮肉をマジに言っているのか」と思ったのだが、この記事は Voice 2009年5月号に掲載されたモノで、全然皮肉でなく彼はマジに述べていたのだ。一部引用すると
原子炉建設は1基おおよそ5000億円ぐらいの費用を要する大型の商談だ。そこでは棚ぼた式に、日本企業が儲かる仕組みになっている。
日本企業はいま、非常に有利なポジションにいる。いまこそ日本は原子力を「国技」とし、そこに人材を投入すべきだ。
なかでも日本の原子炉の安全性は特筆されるべきだろう。2007年の新潟県中越沖地震は柏崎刈羽にある1000メガワットクラスの原子炉7基を直撃したが、緊急停止の制御棒が挿入され、原子炉は無事停止した。またその後の炉心の熱除去も想定どおりに行なわれ、事故には至らなかった。少量の放射線が漏れはしたが、放射能を浴びた水が燃料貯蔵タンクからフロアにこぼれた程度で済んだ。
原子炉の真下には、世界でも類を見ないほどの活断層があって、そのため想定を超える(加速度でいえば3倍)ほどの大きな揺れが生じたのに、原子炉はびくともしなかった。日本以外の国で、あれ以上の地震が起こることはまずないと考えてよいだろう。あの地震を経験したことで、数百見つかった設計・施工上の問題点は解決され、日本の技術にはますます磨きがかかってくるはずだ。そのことに日本人はもっと自信をもってよい。現場視察に訪れたIAEA(国際原子力機関)の専門家も、おそらく納得して帰っていったのではないだろうか。
いまこそ原子炉建設を強力に進めるため、国はその障害を1つずつ取り除いていくべきだろう。安全審査があまりに厳しく、膨大なコストと時間がかかってしまう。設置場所や使用済み燃料の貯蔵場所についても、地域住民の賛同を得られにくい。いまだ国内では「汚い」「怖い」というイメージで、住民説明会で罵声を浴びせられてしまう。国のリーダーシップを発揮して、地方自治体に「お任せ」の観があった現状を変え、国策として進める基本態度を明らかにすべきである。自治体にマル投げしてコンセンサスが出るまで傍観しているいまのやり方では、国自ら日本の最強輸出産業の筆頭候補の足を引っ張ることになる。
私は個人的には彼の強気の経済分析が結構好きだ。そして、この彼の見通しは今般の事故の前としては極めて進歩的な常識的な考えだったのではなかろうか。続く