何かコメントがあったのだけれど、考えている内に忘れてしまい、日にちだけがたってしまったのでひとまず。
コロナで消えゆく皆勤賞 「休むことは悪」風潮に変化: 日本経済新聞 (nikkei.com)
出席を欠かさなかった児童・生徒に贈られ、終業式や卒業式で表彰される皆勤賞が消えつつある。これまでは栄誉だとされてきたが、「休むことは悪」という日本の風潮を助長しているとの批判に加え、長引く新型コロナウイルス禍で「体調が悪いのに無理をして登校する必要はない」と取りやめる動きが加速している。背景には、日本人の休み方への意識の変容もある。
「社会の実情にそぐわない」
「コロナが決断を後押しした」。私立松蔭中学校・高校(神戸市)の浅井宣光校長は皆勤賞を取りやめる決定をした経緯を打ち明ける。同中・高では2年計画での段階的な廃止を決め、今春、生徒や保護者に伝えた。
高校では、皆勤賞が併設の大学に内部進学する際の加点になっていた。これに対し、大学側から「皆勤賞は社会の実情にそぐわない」との指摘を受け、廃止に向けて議論を進めていたさなか、コロナで結論が早まったという。
休む勇気こそ、あっていい
東京都内のある私立小学校は今年3月の卒業式・終業式を機に皆勤賞を廃止した。校長は「校訓の一つに『健康』が入っているので悩んだが、コロナを機に勇気を持ってやめた」と話す。
息子が1年生のときに表彰状を誇らしげに持って帰ってきた母親(38)は「頑張ってよかったと思える瞬間がなくなるのは残念だが、無理をさせて登校させるほうが心配」とその判断を評価する。
明治期が起源か
皆勤賞が日本でいつ、どのように始まったのかは、はっきりとはわかっていない。
京都大学准教授の石岡学さんは「直接関連があるかは不明だが、就学率を上げるため明治期に配られた『就学牌(しゅうがくはい)』に起源がある可能性がある」と分析する。就学牌とはバッジのようなもので、経済事情などから就学をためらう親や子どもに「就学は栄誉なこと」だと示すものだった。
そして大正から昭和初期には、健康な子どもを育てることが社会的な課題に。当初は子どもが健康であることを純粋にたたえたが、石岡さんは「健康ではない子どもにはプレッシャーとなっていったのではないか」とみる。
皆勤賞については公式な統計も確認できない。日本経済新聞が東京都調布市の公立小20校に聞き取り調査したところ、皆勤賞が残っていたのは滝坂小だけ。同小では6年間、学校を1日も休まず登校した児童に卒業式で同窓会から皆勤賞を贈っていた。しかし、体調が優れないにもかかわらず登校する事例が問題となり、ついに今春の卒業式から恒例の表彰式を取りやめた。
精神論は通じない
ニッセイ基礎研究所上席研究員の久我尚子さんは「団塊ジュニアの下の世代くらいまでは、保護者や子どもが重視するモノサシは偏差値だったが、ゆとり教育の導入を機に個性を尊重する教育に変わっていったことが背景にある」と指摘。教育現場の価値観も多様になり、アレルギー体質や体調・体格が異なる生徒に対して「一律に『登校すべきだ』とする精神論は通じなくなっている」(久我さん)。
「休むことが悪いことだという誤解を招く恐れがあるため、皆勤賞をなくしてほしい」。2020年10月、こんな要望が山形県に届いた。
同県が40あまりある県立高校にこの意見を伝えたところ、同年11月時点で5校がすでに皆勤賞を廃止しており、「廃止も含めて検討中」と答えた高校は5校。それ以外の高校は「継続」と回答した。同県は「皆勤賞を目指す生徒もいる。そんな思いも尊重するという考えがあるのでは」(高校教育課)。それぞれの教育課程や地域の事情も踏まえ、学校現場では模索が続く。
体調がすぐれなくても勉学に励み、働くことが美徳とされてきた日本社会。「00年代に入ると、ワークライフバランスが重視され、価値観はさらに変化した」(久我さん)。皆勤賞廃止の動きは、日本独特の価値観が変わりつつある一端でもある。
企業、「手当」の導入減少
学校に皆勤賞があるように一部企業には皆勤手当や精勤手当があるが、導入企業は減っている。厚生労働省が約4000社あまりから回答を得た調査では、10年の時点で精皆勤手当や出勤手当などを支給している企業は34.1%と3割を超えたが、20年には25.5%と全体の約4分の1に減った。平均支給額も1万1467円から9000円に減少。支給額は大手より中小のほうが高い傾向にある。
社会保険労務士の柳田恵一さんは「新卒採用時、大企業と比べて初任給が見劣りする中小・中堅企業が住宅手当など様々な手当を設けた。皆勤手当もその一つ」と話す。しかし、正規・非正規社員の同一労働同一賃金が議論になるなか「正規社員を対象とする手当を廃止する企業が増えていったのではないか」(柳田さん)。一方、運輸など慢性的な人手不足に悩まされる業種では、手当を維持しているところもある。
(高橋里奈)