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海鞘

2016-07-03 10:28:10 | 日記
海鞘
着きてすぐ海鞘もてなさる口涼し 野沢節子
被災地に嬉々とした顔海鞘を剥く   拙

宮城県内で養殖ホヤの廃棄処分に向けた作業が始まった。東京電力福島第1原発事故による放射能漏れを懸念する韓国が輸入を禁止したままで、出荷過剰を回避するための措置という。
 その形状から「海のパイナップル」とも称されるホヤ。酒のさかなとして人気があり、産地の三陸沿岸では酢の物や塩辛などで広く食べられている。独特の食味のため苦手な人も結構いる。全く味わったことがないという知人にぜひ食べてほしいと思い、不慣れながら何とかさばいて振る舞ったことがある。
 養殖ホヤは3~4年育てて出荷される。三陸一帯は東日本大震災による大津波で養殖施設が壊滅したが、再開にこぎ着けてきた。宮城県産のホヤは韓国が最大の取引相手で、これを国内向けに回すと供給過剰になる。価格暴落を防ぐため、やむを得ず1万トン台の廃棄を決めたようだ。
 最大の販売ルートが受け入れなければ産地はしぼむ。韓国や台湾などでは原発事故後、本県や福島県などの水産物の輸入を禁じている。宮城県漁協では東京電力に対し、今回のホヤ廃棄の処分費用などを賠償請求する方向という。
 震災と原発事故の二重苦にいつまでさらされるのか。三陸はワカメやカキなどの養殖も盛んだが、長引く禁輸は復興の加速を妨げる。養殖業者が情熱を込めて育ててきたホヤだけに、廃棄処分は断腸の思いであろう。
 人間に子ザルを奪われた母ザルが悲しみのあまり、内臓の腸が裂けて死んだ中国の故事から「断腸」という言葉が使われるようになった。廃棄決定に至った原因者に対しては、はらわたが煮えくり返る思いだろう。
                                   河北新報 コラム