青田
みちのくの青田や昼の月あかり 原子公平
夢のせて田んぼアートの青田かな 拙
県内で田んぼアートが見頃を迎えた。当初から見事なアートに仕上げられるわけはなく、失敗は成功の母といわれる通り、改良や工夫の積み重ねと住民の協力が何より重要という。
奥州市や花巻市、平泉町などでは今年も田んぼのデザイン画に取り組んだ。それぞれ個性ある農業芸術を根付かせてきた中、今年は岩手国体と全国障害者スポーツ大会が開催されるため、絵や文字に大会成功の願いが込められた。
奥州市水沢区佐倉河地内では、岩手国体をストレートにデザイン化した。市内で開催される弓道、馬術競技の選手を浮かび上がらせ、競技のPRを後押ししている。平泉町の場合は「平泉の文化遺産」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されて5周年となったことを強調している。
花巻市石鳥谷町八幡地区は、詩人で作家の宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」をモチーフにした。主人公のゴーシュと一緒に、岩手国体のマスコットキャラクターわんこきょうだいの「そばっち」が炬火(きょか)に見立てたトーチを持つ姿も浮かび上がらせた。
先進地からノウハウを学んだ後、着実に地力を付けてきた。古代米など色の異なる稲を植え分ける田植え作業は地域ぐるみで行い、住民同士が連帯感を強める機会にもなっている。外に発信を続ける田んぼアートを一目見ようという県外客も多く、交流人口の拡大につながっているようだ。
日を追うごとに稲の色が鮮やかさを増し、訪れる人たちの目を楽しませている。さらに周辺の水田が緑色から黄金色に変化していく中で、アートの見頃は8月下旬まで続きそうだ。