水温む
子ども等は棒切れが好き水温む 稲田眸子
子ども等の治水工事や水温む 拙
やっと暖かくなり、校庭は春泥に満ちている。早く水分を除去しようとして、ぬかるみに水路を作っている。
一日も早く 広い校庭で伸び伸びと遊びたい気持ちが見える。もうすぐ春休みなのに。時折 白鳥の北帰行の
姿も見える。
子ども等は棒切れが好き水温む 稲田眸子
子ども等の治水工事や水温む 拙
やっと暖かくなり、校庭は春泥に満ちている。早く水分を除去しようとして、ぬかるみに水路を作っている。
一日も早く 広い校庭で伸び伸びと遊びたい気持ちが見える。もうすぐ春休みなのに。時折 白鳥の北帰行の
姿も見える。
稲田眸子の句は初めてだと思う。日常身辺の誰もが共感する措辞を取り合わせて「水温む」を詠っている。
一読してこれでいいんだという安心感を受ける。
子ども等の治水工事や水温む 阿部
阿部句は稲田眸子の句が念頭にあって作られたように思う。「棒切れが好き」の中七が「治水工事や」に入れ替わって表現されている。一読して、治水工事は溝や川での子どもの遊びと思ったが、作者の説明によって、『やっと暖かくなり、校庭は春泥に満ちている。早く水分を除去しようとして、ぬかるみに水路を作っている。』のだという状況が明らかになった。生徒たちの明るい声や動きが浮んできて「水温む」の季節感がよく伝わってくる。
両句をゆっくりと鑑賞して感じるのは、中七の表現の違いである。 稲田句では「棒切れが好き」という人々の共感を受けやすい措辞を用いている。阿部句で用いられた「治水工事」においては、一呼吸おいて川遊びのイメージが湧くのであるが、作者の説明がなければ生徒たちの運動場での姿をイメージすることは難しいと思った。
今日は「水温む」を詠った二句を並べて読ませていただき、表現方法の難しさということを考えていました。どうすれば読者にすぐ分ってもらえて、しかも常識を一歩超えた新しさを表せるか。これは自分も常に悩んでいる問題です。願船
稲田さんの句はうまいと感じました。小生の句を書き込んでから歳時記をみたら、同じような句が見つかったので
掲載しました。治水工事は治世の元だという中国の故事を思い出し、そのパロディとして俳味を出そうと試みました