29歳のとき、映画祭というものに初めて参加した。
というのも、原田芳雄という一人の役者に会いたかったから、それで・・。
僕が芳雄さんを知ったのは「祭りの準備」という一本の映画だった。21歳の頃だ。
いや、たぶんその前から名前は知っていたように思うけど。
この映画はテレビの深夜放送で見たんだ。たまたまだった。
なんだか、暗くて暴力的でちょっとエロくてアングラだなーって感じでみてたけど、
ラストシーン・芳雄さんの「ばんざーい!」でノックアウト・・・。
やられた。
こんなすごい役者が日本にいるんだ!
それから、映画好きな友達をたよって芳雄さんの追っかけが始まったんだ。
前から名前は知っていたって書いたけど、正確にいうと顔と歌を知っていた。
「11PM」っていう夜のテレビを見てたらゴツイ感じでグラサンかけた人が
「リンゴ追分」を歌っていた。しかもアカペラで。だから、最初は役者さんというより、
歌い手さんって印象なんだ。
でも、このとき聞いた「リンゴ追分」 まさか、このおかげで、あんなにラッキーなことが
僕に起こるなんて、まだその時は考えてもいなかった。
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で、いろんな映画のビデオを借りて見た。見れば見るほど芳雄さんの、
世界にはまってしまった。「竜馬暗殺」「ツィゴイネルワイゼン」「原子力戦争」・・・
その芳雄さんが、こんな田舎の山ン中にやって来るって聞いたときは正直信じられなかった。
当時から映画祭では役者さんや監督など関係者と話たりできるシンポジウムがあってて
それに参加した。席で待ってると司会者の興奮した声が聞こえた。
「おまたせしました!原田芳雄さんです。」会場いっぱいに響く拍手の中を、
ブルージーンズに真っ白いシャツ、サングラスをかけた髪の長い芳雄さんだ!
か、か、カッケー!
とうとう、会えた。僕の心臓が音をたてた。まばたきするのも忘れるほどにじっと見た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ つづく ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・