約束

台風12号は自転車並みの速度で…

とテレビで蓬莱さんがゆうてた。

台風が来ると聞いても近年大阪で大きな被害もないし
どうせ強風ぐらいやと鷹を食っとったら…

電車降りて改札を抜けると予想以上の雨に驚いた。

なんばから傘も持たずに電車に飛び乗って
外の景色眺めてた時　木々が大きく揺れとるから風だけで
やっぱし予想通り雨は　そんなに降ってないやんけ…

・・・・

あほかオレ。いや絶対にあほや(笑)

傘持ってへんのオレぐらいのもんやで(笑)
止みそうもない雨を恨めし気に見上げて途方に暮れる

なんでこんな日に台風や雨や…
はよ　家に帰らんなあかんのに…

タクシーで帰ったらええやんけ　と乗り場に目をやると
おんなし考えの奴で長蛇の列。

並んどったら日付が変わってまう。

今日やないとあかん
今日中にリサに手渡そうって決めとる

ポケットに忍ばせたもの。

未来への約束…。

教師になったこの日に伝えたいのは一つだけ

『…走ったらええだけや』


走り出した時時計の針は23時30分…
今日が終わるまで　あと30分もある。

オレは土砂降りの雨中に飛び込んでいった。

走って帰る事20分

『わぁ　大谷　どうしたん?傘は…』
『持ってへんかったから…』

『電話してくれたら迎えに行ったのに…あっ待っててタオルタオル。』

ずぶ濡れになって帰ってきたオレを見て
驚いたリサは、急いでタオルをとりに向かおうとした

時計の針は0時5分前。

タイムリミット目前。
リサの手をぐいっとひいて腕の中に引きこんだ。

『リサ…　ちょっと待ってくれ聞いて欲しいことあんねん』
『えっ？』


かっこ悪いけど　リサを座らせて腕の中に収めると
『どうしたん？』って見つめてくるから
その唇にそっと自分の唇を重ねた。

『リサ　これからもずっとオレと一緒におってくれ…。』

そしてポケットから取り出してリサの指にはめたリングは
誕生石のペリドット…。

『大谷。』

『まだダイヤの指輪とか買ってやれんから……』

『…めっちゃかわいいなっ♪気にいったで　ありがとう大谷』

なんて笑いながら頬を赤らめてリングを見つめるリサ。
その姿を見ただけでオレは　めっさ幸せな気分になった。

なぁ…
キスしてもええ？なんて言いかけたオレの唇を

『あたし　ずっと大谷とおるで♪あつちゃんだいすきっ』

なんて言葉とキスで包み込んでくれた。




end