「おとうちゃん アイスこうてぇやー。」
「あかん。買い物が先や。」
「リサちゃんなら こうてくれるのにぃ…」
「あいつは自分が食いたいからや(笑)」
夕方。息子の敦哉の手を握って舞戸商店街をめざす。
2人目を妊娠したリサを助けるために料理を手伝う事になった。
料理本3冊と すてきな奥様という雑誌も買った
「おっちゃん 牛肉 数十グラム」
「あっちゃん…数十グラムって何つくるんや?そんな微妙な量で」
オレはおっちゃんに持ってきた料理本を開いて見せた。
「あんな ここに1人前30g前後って書いとるやろ?」
「んー書いてあるなぁ」
「オレと敦哉とリサとお腹の子供の分合わすと…数十グラムかと…」
おっちゃんはそれを聞いてお手上げやというポーズ。
「あっちゃん 学校の先生なんやろ?計算してみっ
あっちゃんとリサちゃんで60.ちびちゃんは15お腹の子は5ぐらいで100もあったら足りるやろ?」
「あっそうか。」
「そうかやないわ。ちびちゃん あっちゃんはあかんなー」
「おっちゃんぼく ちびちゃんちゃう。あつやっちゅうねん。」
敦哉は ちびちゃんと言われるとすこぶる機嫌が悪くなる。
ぷーーーっとふくれてその場に座り込んだ。
「あーちび…いや 敦哉くんごめんな。」
「ぶーーーーーー。」
「敦哉 ぶーたれとったら置いてくぞ。」
★★★
舞戸商店街を2人で歩く。
夕飯の買い出しのおばちゃんらの波を縫いながら歩く。
「おとうちゃん たこやきっ」
「おまえアイスちゃうんか?」
「アイス…んーん。リサちゃんに テンにいちゃんとこのたこやきこうてかえる」
「そりゃ ナイスアイディアや(笑)」
たこ焼きをお土産に家路を急ぐ
半透明のアーケードの向こう側にはオレンジ色の夕焼け
敦哉の手を離さないように ぎゅっとにぎった。
「なぁ おとうちゃん…ぼくおにいちゃんになんねんな」
「おぅせやぞ。」
「いもうとがええなぁ」
「さあ どっちやろな」
END