投資家の目線

投資家の目線373(戦後史の正体とACTA)

 孫崎享元外務省国際情報局長の最新著書「戦後史の正体」(創元社)を読了した。戦後の政治史を「対米自立派」と「対米追随派」の相克という観点から書かれた本である。田中角栄元総理のロッキード事件と小沢一郎「国民の生活が第一」代表の陸山会事件の類似性、紛争のタネは消さないというアメリカのやり方など、菅沼光弘元公安調査庁第2部長の「この国の不都合な真実」と通じる面も多く、対外情報関係の2人の見立てが同じというのが興味深い。本書における野田政権に対する評価は、「極端な対米追随路線」である。特に日本の制度を米国流に変えると思われるTPPに対して懸念をされている。


 本書には書かれていないが、議員や国民の目にほとんど晒されないまま知財に関する法律「ACTA」が参議院で可決されてしまった。TPPよりむしろACTAの発効の方が大問題だとする声もある。「新党きずな」の斎藤やすのり衆議院議員などがこれに気づき、行動を起こしている。同議員によれば、ヨーロッパでは今年2月に250万人規模のデモが起こり、欧州議会では批准を否決されたという。本法案はまだ衆議院は通過していない。衆議院ではこの問題に対する追求をお願いしたい。


 米国議会は来年3月までの暫定予算を組んだ。予算もまともに「決められない米国」に追随するメリットはあるのだろうか?


追記:「外交 上」(ヘンリー・キッシンジャー著、岡崎久彦監訳)において、『ルーズベルトは、アメリカにとって最良の結果は「ロシアと日本を対峙したままにさせ、そうすることにより、それぞれ相手に対して穏健な行動をとらせる」ようになることであると看取していた』とある。他国に紛争のタネを残したままにしておくことは、米国の伝統的な政策と言える。また、エジプトのカイロ大学で、オバマ大統領も関与を認めた米国のイランのモサデク政権転覆クーデター(2009/6/5 AFP)をみると、デモによる岸信介政権転覆に米国が関与していても不思議ではないように思う。


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・プロ野球選手会が来年3月のWBCへの不参加を表明した。WBCの利益配分が米国に比べて日本があまりにも不利なのがその理由だ。日本野球機構は、米国に対して利益配分を変える交渉をするつもりはあるのか?「WBC不参加問題 想起させるのは日米不平等条約」(2012/7/23 WSJ日本版 JRT)では、「米国側が日本に早期参加を求める環太平洋経済連携協定(TPP)交渉も不安がつきまとう」としているが、まったくその通りと思う。


・7月30日の参議院決算委員会で、最高裁判所の会計処理がおかしいとの指摘が出る。最高裁にはかつて「裁判員裁判」の広報で不適切な会計処理を行った前科がある。体質が変わっていないのか?
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