「フランクリン・ローズベルト 上/下」(ドリス・カーンズ・グッドウィン著 砂村榮利子/山下淑美訳 中央公論新社)には、第二次大戦中に米国で起こった物不足とその代用品のことが書かれている。
ストッキング用のナイロンがパラシュート用に大量生産されるようになるまで、パラシュートの生地として使われる絹のストッキングが廃止になった(上p504)。無煙火薬の製造に使われる砂糖の代用品としてはコーンシロップやサッカリンが使われた(上p504、下p46)。バター不足にはマーガリンに黄色染料を加えてバターに見立てた(下p46)。裏庭に畑を作り、爆薬原料のグリセリンの抽出に使うため使用済みの調理用油脂を肉屋で点数と交換した(下p46)。もっとも、闇市では割り増し価格でほとんどのものが買えたという。
日本が天然ゴムの産地であるマラヤやインドネシアを占領したため、タイヤが配給制となった。医師や公務員など必要不可欠なサービスの提供者には新品のタイヤを購入できる証明書が発行されたが、最初の案には牧師が入っていないことに対する抗議を受けて即刻加えられたことは(下p46~p47)、キリスト教国家である米国らしい。また、ゴムを節約するために不足していないガソリンも配給制となったが、車に乗ることの制限は米国人にとって何よりも痛手となったという(下p46)。また、ローズベルトは炉辺談話を通じて古いゴム靴やゴムタイヤなどの回収を呼びかけ、二週間で400トン以上も国家備蓄が増加した(下p48)。
西側諸国の企業は、人件費の安いグローバルサウス等に生産拠点を移転した。グローバルサウスからの工業製品輸入なくして、西側諸国の市民は生活水準を維持できなくなると考えられる。固定観念にとりつかれた指導層はやたら好戦的だが、実際のところ、西側諸国に戦時体制への移行など不可能だろう。