投資家の目線

投資家の目線1021(フランスによる「核の傘」の提供)

 フランスのマクロン大統領が欧州全体に「核の傘」を提供する協議を始めると表明した(『フランス・ドイツ主導で欧州独自の「核の傘」検討へ…マクロン仏大統領「米国は態度を変えた」』 2025/3/6 読売新聞オンライン)。英国の核兵器は「独自の原子力潜水艦を開発し、米国製の小型核弾頭とSLBM(潜水艦発射式弾道ミサイル)を搭載し、かつホワイトハウスと首相官邸に二つの発射ボタンを設置する」(「日米同盟vs.中国・北朝鮮 アーミテージ・ナイ緊急提言」 リチャード・L・アーミテージ ジョセフ・S・ナイJr 春原剛 文春新書p212~213)という。したがって、欧州で米国の管理下にない核兵器はフランスのものしかない。欧州においては、フランスでは国民連合、ドイツではドイツのための選択肢、英国ではリフォームUKの反EU政党が民衆の支持を集めるようになってきている。各国政府はそれらの政党を弾圧することはできるが、国民の団結は得られないだろう。

 

追記:

 北大西洋条約(NATO)第五条には、「締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがつて、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によつて認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する。」(データベース「世界と日本」(代表:田中明彦))と書かれている。NATOが先制攻撃したり、攻撃されてもNATO側が挑発行為をしていた場合は、第五条の適用は無理ではないか?マクロン大統領の「核の傘」発言は、ロシアに対する挑発行為ではないのか?

 

 岩屋外相や中谷防衛相と英外相との会談によればウクライナ支援を続けるようだ(「日英外相会談、ウクライナ対応めぐり連携を確認」 2025/3/7、『中谷元防衛相「ウクライナ支援続ける」 英外相と面会』 2025/3/6 日本経済新聞電子版)。しかし、ウクライナ安保の「有志国連合」に関心を示しているのは欧州や英連邦を中心に20カ国しかない(「停戦後ウクライナ安保「有志国連合」20カ国が関心 英報道」 2025/3/7 日本経済新聞電子版)。石破政権はEUにくっついて行きたいようだが、メリットはあるのだろうか?ゼレンスキーは「ドンバス戦争の終結とオリガルヒ(ロシアの新興財閥)の汚職・腐敗によるウクライナ国家への影響を阻止することを公約に掲げて当選した」が、「ドンバス地方奪還に向けて、軍事力による解決を試みている」(『ロシアとの緊張を高めたウクライナ大統領の危険な「挑発」行為』 菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済 2022/2/16 日経ビジネス)。ゼレンスキーは公約を反故にして東部住民へ攻撃を続け、民族浄化を行っている(ロシア弱体化を狙う勢力は民族浄化とは認めないだろうが…)。石破政権は、これからも民族浄化を行う人物への支援を続けるのだろうか?

 

 軍事衝突で欧州が衰弱すれば、バーラト・中東・欧州経済回廊における欧州との中継地点であるハイファ港の価値は低下する。そもそも紅海を通過して欧州へ向かう船舶が無くなれば、イエメンが船舶を攻撃することはなく、スエズ運河も今まで通り航行できるようになるだろう。現在の仏英独の政権は、欧州の衰弱を招くだけだ。それらと歩調を合わせる価値はない。

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