投資家の目線

投資家の目線644(内部留保の問題)

 衆議院選で、内部留保課税を提唱する党があった。内部留保は当期純利益から株主に支払う配当の額を差し引いたものであり、内部留保した分を事業に再投資をしたりすることもあるので、必ずしも企業が現預金として保有しているものではない。しかし、部門別資金過不足で90年代後半から企業(民間非金融法人)部門は黒字で、企業全体で見ると投資は稼いだ収益で賄えるようになっており、大和住銀投信投資顧問のチーフエコノミスト柿沼点氏は2020年度に預金超過になるとまで主張している。

2020年度には民間非金融法人も預金超過に? 2016年6月30日
http://www.daiwasbi.co.jp/pdf/market/1538/economist_20160630.pdf

 次の資料P4図2にある通り、企業はそれまで赤字部門で、金融機関などから借入れをしながら事業を行っていた。

資金循環統計からみた日本経済の動き  小清水世津子
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2006pdf/2006062954.pdf

 榊原定征日本経済団体連合会会長が『企業が手元に持つ現預金残高は「企業の運転資金として極めて適正だ」との認識を示した』(『経団連会長、内部留保への課税「受け入れられない」』 2017/10/10 日経QUICKニュース)というが、東芝や日本郵政等の海外での大型M&Aでの損失発生を見ると、日本企業の経営能力では新たに資金調達してまで投資できる先がなくなったのだろうと思う。

 株主と経営者との間のエージェンシー問題では、企業が余剰資金を持ちすぎると経営者が無駄に豪華な本社を建てたり、事業規模を拡大するために正味現在価値がマイナスの投資をしたりして資金を無駄遣いし、株式価値を棄損することがあるとされる。また梼Yコストとの見あいだが、負債利子は損金項目なので、借入れがある方が節税効果で企業価値が上がることになる。

 榊原会長は『「これまでは貯蓄から消費にまわらないという課題があった。経済の好循環をまわすためには従業員への配分についてきちんと考えるのが重要だ」とも述べた。』(同)という。経営者が既にこの配分を行っていれば、内部留保課税などというアイデアは出てこなかったと思うが…。
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