投資家の目線

投資家の目線537(NAFTA後のメキシコにみるTPPの影響)

 先週、TPPに合意した。自由貿易協定の先例としてNAFTA後のメキシコを見てみたい。次のレポートによれば、穀物等の輸入は急増したが労働集約的な農産物の輸出は拡大し、農業の基盤は維持されたという。しかし、NAFTA締結で貧困が激化した零細農家から不法を含めてメキシコから米国へ移民した数は人口の約10%、経済活動人口の約30%に上った(1995年~2000年では、年間約227万人米国へ流入超)。

NAFTA発効後のメキシコ農業   主席研究員 阮 蔚   農林金融2013・7


 日本の江戸時代を見ても、困窮した下層農民が農村から逃散する例が多く見られた。人数が多すぎて耕作できない土地も発生したくらいである。岐阜県の方では「十七世紀末には、農業技術の改良や商品経済の展開によって零細農民の経営が確立するようにな」った(「岐阜県の歴史」山川出版社 松田之利、谷口和人、筧敏生、所史隆、上村恵宏、黒田隆志 P149)という。そのため、それに対応できれば零細農家でも生き残れるかもしれないが、作物への需要量がそれほど大きくなければ全員がそれに対応できるわけではないだろう。


 TPPを締結したところで製造業の現地生産の流れが止まるわけではない。今後現地生産比率を拡大すべく、更なる圧力が加えられる可能性だってある。次の記事によれば、TPPの雛形ともいえる韓米FTAでは、関税撤廃の除外品目とされていた「米」を米国が1年もたたずに例外品目から外すよう再交渉を求めてきたという。

2013.03.12 【TPP 重大局面】韓米FTA 発効から1年の現状  韓国・弁護士 宋基昊(ソン・ギホ)氏 農業協同組合新聞 (電子版)



 最近まで日本は貧しい国で、明治以降1950年代まで日本人は移民として外国に出国していた。今後製造拠点の海外移転などで日本が困窮化すれば、移民の流入よりも日本人の流出の方が、日本の大きな問題になるのではないかと思う。

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・先週の円安を要因とする悪影響・値上げ発表等記事
「円安に進んだことなどで輸入食材が値上がりしており、輸入牛肉を使ったパティは去年と比べて3割程度高くなったもよう」(マクドナルド、昼のセット割引廃止、月内にも、原料高、商品に転嫁。2015/10/8 日本経済新聞 朝刊)

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