週刊FLASH2022年3月15日号(Smart FLASH 2022/2/28)の記事『「プーチンならやる」チェチェン従軍ジャーナリストも危惧する「小型核爆弾で北海道恫喝」』でフリー記者の常岡浩介氏が、「しかも、日本にとっての脅威は北方領土だけではありません。カムチャツカ半島には、核兵器を積んだ原子力潜水艦の基地もあるんです。今すぐ侵攻を仕掛けることはないでしょうが、そのための拠点はすでに持っています。日本にも、今回のウクライナと同様に核の脅威が向けられ、それをもとにロシアが強硬な交渉に打って出る日は、いつか必ず来ると思ったほうがいいでしょう」と語っている。孫崎享著「日米同盟の正体 迷走する安全保障」(講談社現代新書 p37)には、1000カイリのシーレーン防衛が、オホーツク海のソビエト連邦の戦略潜水艦を攻撃するためのものだったというマイケル・グリーン氏の論文が抜粋されていた。北海道をロシアの勢力圏にできればロシアの戦略潜水艦の巣、オホーツク海をロシアの内海にすることができるであろう。相互確証破壊は未だに有効であろうから、北海道占領はロシアにとってメリットがある。北海道全土を抑えられれば、「外国と陸続きの部分」は青函トンネルの出口だけなので、「国境」管理も楽だろう。
日本政府が北海道経営に成功しているとは思えない。国土交通省の資料「北海道の人口動向等について 国土交通省 北海道局 令和元年6月」(p5)によれば、2015年から2045年にかけて北海道全体が25.6%の人口減の予想で、最大は道南圏の42.4%減だが、オホーツク圏38.8%減、釧路・根室圏38.0%減、道北圏35.5%減と東部、北部も人口減が激しい。大量輸送機関の鉄道もひどい状態だ。国鉄末期に廃線が相次いだが最近になって廃線が続き、水害にやられた根室本線の一部(「JR根室線富良野―新得間、廃線へ バス転換を容認」 2022/1/28 日本経済新聞WEB版)や、北海道新幹線建設に伴い並行する函館本線の一部も廃線になる模様だ(「JR函館線の長万部―余市間廃止固まる 並行在来線問題」 2022/2/3 朝日新聞デジタル)。千歳線や室蘭本線で不通区間が長期間発生した場合、貨物列車を函館本線に迂回させることもできなくなる。国産エネルギーである炭鉱は既に閉山し、製紙工場や製糖工場の閉鎖も相次いでいる。日本政府がコストをかけてでも開発する意思がないのなら、北国のロシアの方が北海道の大地をより活用できるのではないかと思うぐらいだ。
「ロシアのラブコフ外相は1日、ジュネーブ軍縮会議で、ウクライナが核兵器を入手しようとしていると述べ、現実的な危険で阻止する必要があると主張した」(「ウクライナは核兵器入手を模索、阻止する必要=ロシア外相」 2022/3/1 ロイター)。こんな中、数年前にはプーチン大統領に一緒に駆け抜けようと言っていた安倍元首相は、「核共有」などとロシアの安全にとって脅威になるようなことを言っている。ロシアから見れば挑発行為だろう。日米安全保障条約第5条は、このような挑発行為を行う国にも適用されるのだろうか?ロサンゼルスの地域評議会では核戦争時の確認事項が回覧されているというが、日本は核兵器の標的にはならないとでも思っているのか?『防衛大学校の黒崎将広准教授(国際法)は「相手が武力攻撃に着手した段階で自衛権を行使できるという解釈は国際的なコンセンサスだ」と話す。』(『敵基地攻撃能力「自衛権の範囲」 政府自民、コスト・効果議論へ』 2020/6/30 日本経済新聞WEB版)というが、今の米軍が外国に核兵器を配備するなどよほどのことであり、日本に核兵器を配備すること自体が相手にとって自衛権を行使できる武力攻撃に着手した場合と見做されることはないのか?
以前にも書いたが(投資家の目線836(8月9日はソ連の対日参戦の日) 投資家の願い)、日本はロシア革命のときにシベリア出兵したが、他国が撤兵する中で陸軍を増援し列国の疑惑と国幣の浪費を生み(「外交五十年」 幣原喜重郎著 中公文庫)、松岡洋右外相はマリクソ連駐日大使に「独ソ戦と日ソ中立条約とが矛盾するような事態になれば中立条約は効力を発揮しないであろう」(「ロシアから見た北方領土」岡田和裕著 光人社NF文庫)と日ソ中立条約を空文化させるような発言をしており、ロシアにとって日本こそ信用ならない国だろう。
3月4日、米国連邦議会の議員が超党派でロシア産原油の輸入を禁止する法案をまとめた(「米超党派、ロシア産原油禁輸法案 攻撃激化で圧力強化を」 2022/3/5 日本経済新聞WEB版)。化石燃料の使用を削減する脱炭素政策を進めたオバマ政権の副大統領で、現在でも脱炭素政策を進めるバイデン米大統領に対し、「石油輸出国機構(OPEC)の事実上のリーダー国であるサウジアラビアは、原油価格の上昇を抑制するため増産を求めた米国の要請を拒否」(「プーチン氏、エネルギー問題の政治化巡りサウジ皇太子に警告」 2022/3/4 ダウ・ジョーンズ配信)した。OPECプラスの一員であるサウジアラビアは、ロシア即時撤退の国連決議賛成にはお付き合いしたが、それ以上の協力を米国にするつもりはないようだ。石油備蓄の協調放出などあざ笑うように原油価格が上がっている(OPECプラスのうち、ロシアが反対、アルジェリア、アンゴラ、赤道ギニア、南スーダン、スーダン、イラン、イラク、カザフスタンが棄権、アゼルバイジャン、ベネズエラが無投票、賛成でもUAEは安保理決議で棄権、メキシコはロシア制裁せず(『メキシコ大統領「ロシアに制裁科さない」 野党は批判』 2022/3/2 日本経済新聞WEB版)だった。)。法的拘束力のない国連決議より、原油価格高騰の方が社会に与える影響が大きい。「ガソリン価格の高騰ほど有権者の機嫌を損ねるものはない」(「約束の地 上 大統領回顧録Ⅰ」 バラク・オバマ著 山田文、三宅康雄ほか訳 集英社 p242)という。オバマ氏は、既存の政治からのChangeを訴えて大統領に当選した。ペンシルベニア・アヴェニューは民主党・共和党に関係なく、ウクライナという遠く離れて米国の安全とは無関係の(DPRKとはICBM技術移転疑惑があり、2009年12月には武器密輸取引が発覚した、むしろ米国の安全に害をなす)国を守るために、米国人民の生活を犠牲にしようとしている。
アメリカ合衆国憲法第5章[改正]には、「連邦議会は、両院の3分の2が必要と認めるときは、この憲法に対する修正を発議し、または、3分の2の州の立法部が請求するときは、修正を発議するための憲法会議を召集しなければならない。いずれの場合においても、修正は、4分の3の州の立法部または4分の3の州における憲法会議によって承認されたときは、あらゆる意味において、この憲法の一部として効力を有する。いずれの承認方法を採るかは、連邦議会が定める。」(アメリカンセンターJAPAN HP)とある。州議会が憲法会議を請求し、連邦政府の権限を制限する改憲がなされたとき、北太平洋条約や日米安全保障条約はどれだけ機能するのであろうか?
2022/3/7追記:
↓ロシアとサウジアラビアの同盟関係は強固
プーチン氏がサウジ皇太子と電話会談、同盟関係の強化を図る(Bloomberg) 2022/3/4
↓サウジアラビアの増産協力が得られなかったバイデン政権はマドゥロ大統領に泣きつくのか?昨年1月にはグアイド前国会議長を暫定大統領として支援すると言っていたのに。
米、ベネズエラと数年ぶり高官級協議 ロシア巡る思惑も 2022/3/7 ロイターhttps://reut.rs/3pKB1Ue
ベネズエラ産原油、中国へ偽装輸出か 米メディア報道:2021/1/23 日本経済新聞WEB版
2022/3/8追記:
ベネズエラのマドゥロ大統領は、ウクライナ侵攻でプーチン大統領を強く支持していた(「反米左派」ベネズエラ、マドゥロ大統領がプーチン氏に「強い支持」伝える : 国際 : ニュース : 2022/3/2 読売新聞オンライン)
2022/5/5追記:
↓ ロシアの政党党首の「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」という見解の根拠はこれかな?
トルーマンの一般命令第一号に対する1945年8月16日付スターリンの修正要求
「二、日本軍のソ連軍に降伏すべき地域の中に北海道の北部を加えること。北海道の北半分と南半分との境界線は、東は釧路、西は西海岸のルモイに至る線とし、釧路とルモイの両市は北半分に属する。
このあとのほうの提案はソ連国民から見て特別な意味をもっているのです。ご承知の通り、日本軍は一九一九年から一九二一年にかけてソ連の全極東地域を占領していました。もしソ連軍が日本本土の一部に占領地帯をもたなかったならば、ソ連国民の世論は著しく傷つけられるでありましょう。」(「トルーマン回顧録Ⅰ」 H・S・トルーマン著 堀江芳孝訳 加瀬俊一監修 恒文社 p323~324)