投資家の目線

投資家の目線883(原発再稼働は可能なのか?)

 先月末、サハリン2をめぐって動きがあった。『ロシアのプーチン大統領は6月30日、極東の資源開発事業「サハリン2」の運営を新会社に移管するよう命じる大統領令に署名した。日本はサハリン2から液化天然ガス(LNG)需要量の約1割を輸入し、総発電電力量の3%程度をまかなう』(『「サハリン2」無償譲渡 日本のエネルギーにどう影響?』 2022/7/1 日本経済新聞WEB版)という。ロシアはカタールとともに天然ガス輸出国グループ「ガス輸出国フォーラム」(メンバー:アルジェリア、ボリビア、エジプト、赤道ギニア、イラン、リビア、ナイジェリア、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、ベネズエラ  オブザーバー:アンゴラ、アゼルバイジャン、イラク、マレーシア、ノルウェー、ペルー、UAE)を主導する。

 

 エネルギー危機にある日本には、原子力発電所を再稼働させようという議論がある。しかし、燃料となるウランについては、

「ウラン資源に乏しい我が国は、カナダ、オーストラリア、カザフスタン、ニジェール等、調達先の多様化によって、天然ウランを確保している。

確保した天然ウランは、米国、フランス、イギリス、カナダ等を通じて、濃縮ウラン、天然ウランとして輸入している。」(「政策選択肢の重要課題: エネルギー安全保障について」 原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会 平成24年2月23日 内閣府 原子力政策担当室 p.11)

とあるが、添付されたグラフを見ると濃縮ウランの輸入元は圧倒的に米国であった。

 

 その米国について見ると、

「米エネルギー情報局(EIA)によると、米国は2020年に必要なウランの約46%をロシアと、ロシアとの関係が深いカザフスタンやウズベキスタンから調達した。世界原子力協会(WNA)によると、原子力は米国の電源構成の約2割、世界全体では1割を占めている。(中略)ロシアは世界のウラン濃縮で約35%の市場シェアを握る(UxC調べ)。ウランのガス化も供給網の急所だ。ロシア以外で商用のガス化施設を持つのはフランスとカナダのみだ。」(「ウラン供給支配するロシア、米は核燃料調達に不安」 2022/3/23 ダウ・ジョーンズ配信)と、ウラン燃料はロシア頼みだ。日本の原子力発電の燃料となる濃縮ウランが米国頼みであるのに、肝心の米国はウラン燃料がロシア頼みの状態では、再稼働してもウラン燃料が確保できるのか疑問だ。

 

 リトアニアがロシアから飛び地のカリーニングラードへの貨物列車通過を拒否しようとした時、リトアニアのナウセーダ大統領は「われわれは北大西洋条約機構(NATO)に加盟している以上、ロシアが軍事的な手段でわれわれに挑んでくるとは考えていない」(「インタビュー:貨物通過拒否問題でロシアの電力供給遮断に備え=リトアニア大統領」 2022/6/23 ロイター)と、暢気に構えている。NATOはスウェーデンとフィンランドの加盟を認めた(「フィンランドとスウェーデン、NATOへの貢献を表明」 2022/6/30 日本経済新聞WEB版)。しかしNATO加盟国では、米国はテキサス州の共和党が連邦離脱の住民投票を提案、英国では北アイルランド議会ではアイルランドの南北統一を訴えるシン・フェイン党が第1党となり(「英領北アイルランド議会選、南北統一掲げる党が第1党に」 2022/5/8 日本経済新聞WEB版)、スコットランド独立問題も再燃しており(「スコットランド独立派 住民投票、23年10月実施目指す」 2022/6/29 日本経済新聞WEB版)、国内統治に問題が発生している。なお、核搭載の原子力潜水艦の母港があるのはスコットランド。スコットランドが独立した場合、英国は核保有国であり続けることができるのだろうか?先月、日韓首脳がNATO首脳会議に参加していたが、加盟国数は増えても中身の伴わないNATOと関係を強化する意味はあるのだろうか?

 

 アルゼンチン大統領が正式加盟を希望したのに続いて、イランがBRICSに加盟申請した(「イラン、BRICS加盟申請 侵攻のロシアが働きかけか」 2022/6/28 日本経済新聞WEB版)。流れはNATOではなくロシアに来ている。

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