投資家の目線

投資家の目線884(英国首相の辞任)

 ボリス・ジョンソン英首相が閣僚の反乱で辞任させられた。中ロと敵対的だったジョンソン首相排除後は、中ロとの対決は日本に押し付け、英国は中ロとの関係修復がやりやすくなる。英国では鉄道労働者(「イギリスで鉄道スト、過去30年で最大規模 21日から」 2022/6/21 日本経済新聞WEB版)、ノルウェーでは油田の労働者(「ノルウェーのエクイノール、ストで3油田の操業停止」 2022/7/5 ダウ・ジョーンズ配信)、北欧ではSASのパイロット(「スカンジナビア航空、パイロットがストライキ 半数が欠航へ」 2022/7/5 ダウ・ジョーンズ配信)とストライキが相次ぎ、欧州では統治が揺らいでいる。

 

 ドイツ労働組合連盟(DGB)のヤスミン・ファヒミ会長は新聞のインタビューで、「ガスのボトルネックのために、アルミニウム、ガラス、化学産業など、産業全体が永久に崩壊の危機に瀕しています(“Because of the gas bottlenecks, entire industries are in danger of permanently collapsing: aluminum, glass, the chemical industry,”)」(”Germany’s Union Head Warns of Collapse of Entire Industries” By Alexander Kell 2022年7月3日 Bloomberg)。ジョンソン首相が辞任を表明した時、メドベージェフ前ロシア大統領は、『「追伸、ドイツとポーランド、バルト三国からのニュースも待っている」と、これらの国でも政権トップの辞任を期待するようなコメントをして、「うれし泣き」の絵文字を付けた。』(『ロシア・メドベージェフ氏「ウクライナの親友が去った」と絵文字投稿』 2022/7/7 朝日新聞デジタル)。経済崩壊を防ぐためにドイツではショルツ首相を引きずり下ろす動きが出てきそうだ。米国もウクライナから手を引きたがっているようだ。プーチン大統領が、『「米国中心の世界秩序は根本的に壊れ、欧米は既に敗北した」と述べ、勝利に自信を示した』(『プーチン氏「欧米は既に敗北」 世界秩序の変化強調』 2022/7/8 日本経済新聞WEB版)ことには根拠がある。

 

 サウジアラビアがアジア向け原油価格を引き上げる(「サウジがアジア向け原油を値上げ、過去最高付近-底堅い需要の兆候」 2022/7/5 Bloomberg)。中印はロシア産原油を購入するので、影響を受けるのは日韓だろう。『あるOPECプラス代表はロイターに「ロシアをとどめることが非常に大事だ」と語る。複数の専門家も、サウジは何か政治的な理由があるわけでなく、純粋に石油市場における影響力を高めるという意味でロシアがOPECプラスに残るのを望んでいるとの見方を示した』(「アングル:石油増産の裏にサウジの外交力、米ロの間を綱渡り」 2022/6/30 ロイター)。バイデン大統領のサウジアラビア訪問でも大規模な石油増産の同意を得ることは難しいのではないだろうか?日本はエネルギー不足を原発再稼働で補おうとしている。しかし、日本の濃縮ウランの輸入元であった米国がロシアから濃縮ウランを購入している状況では、ロシアが米国向け濃縮ウラン供給を絞れば米国から日本への供給もストップするだろう。サハリンからのガス供給も期待できないとなれば、冬には北日本で凍死者も出かねない。

 

 ベトナムはロシアと関係を強化する(「ロシア、ベトナムと関係強化で一致 ハノイで外相会談」2022/7/6 日本経済新聞WEB版)。スリランカ、ラオスはロシアからの石油供給に期待している(『「破産」スリランカ、ロシアに燃料輸入で支援要請』 2022/7/7 日本経済新聞WEB版、「ラオス、燃油不足で混乱 頼みの綱はロシアで揺らぐ中立」 2022/7/6 日本経済新聞WEB版)。ASEANは外相会議にラブロフ外相を招待した(『ASEAN会議にロシア外相招待 ミャンマーは「非政治的人物」 カンボジア』 2022/7/7 時事通信)。「先進国」がロシアを排除しようとする中、他のアジア諸国はロシアと関係を強化しようとしている。

 

 中ロと対決する日本に対し、「中国外務省は前日、報道官の会見関連の記録から日本を協力パートナーと規定した部分を削除した」(『中国、韓国には「パートナー」 日本には「反省すべき」…NATO出席に異なる反応』 2022/7/2 中央日報日本語版)。それに対し、『ニュージーランドのアーダーン首相が7日に「中国との自由貿易協定(FTA)によって両国の貿易関係が持続的に発展しており、中国と共通利益がある分野で協力を展開したい。」と発言している(『「中国はNZとの関係の前途に自信」中国外交部』 2022/7/8 新華社通信)。オーストラリアも中国と関係修復を目指すようだ(『中国・豪州の外相が会談 関係正常化へ「最初の一歩」』 2022/7/9 日本経済新聞WEB版)。

 

 日本のマスコミは中ロ包囲網などと報じているが、アジア・大洋州で孤立しているのは日本の方である。

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