投資家の目線

投資家の目線936(日本のウクライナへの債務保証とドル防衛)

 ロシアのSPUTNIKが、「ウクライナが債務不履行(デフォルト)に陥った場合、日本は世界銀行の主な融資機関である国際復興開発銀行(IBRD)の損失を、利子を含めてすべて負担する。世界銀行グループ・ロシア事務所の消息筋がスプートニク通信に明らかにした」(『ウクライナが債務不履行に陥った場合、「保証人」の日本が世界銀行の損失を負担=消息筋』 2023/7/1)と伝えている。どうもこれは本当らしい。日本は、ウクライナの連帯保証人に手を挙げてしまったようだ。保証の上限額がいくらか示されていないので始末が悪い。

 

 巨額の債務を抱える米国政府はUSドル防衛のために、ウクライナ支援の肩代わりをさせたのだろう。戦後、日本の大韓民国への援助もドル防衛の側面があった。「アメリカは対外援助、海外投資、輸出不振などによる、ドルの海外流出に悩まされていた。これを放置すれば、戦後の国際通貨体制の基軸であったドルの価値下落を招く恐れがあり、ドル危機を防止するためにほかの先進国に援助を肩がわりさせる必要があった。アジアでは、五五年から経済の高度成長を開始していた日本が、アメリカにかわる有力な援助供与国として期待された。一方、日本の政府や財界も高度成長を支える輸出市場を確保するため、韓国との国交樹立を求めていた」(「朝鮮史 新版世界各国史2」 武田幸男編 山川出版社 p368~p369)。ドル防衛はアイゼンハワー政権時代からの懸案で、当時は国際収支のうち軍事部門の収支均衡が考えられていた(投資家の目線705(「知ってはいけない 2」と日米安保条約))。「米連邦準備理事会(FRB)が事実上の債務超過に陥っていることが明らかになった」(『FRB「債務超過」広がる波紋 信認・独立性に懸念も 』 2023/7/9 日本経済新聞電子版)とも報じられている。現在の日本は高度経済成長期ではない。しかも資源高で貿易赤字を抱えるようになった。輸出しようにも製造拠点が外国にあることも多く、少子高齢化で労働力の確保も覚束ない。当時とは環境が違うのに、岸田政権や財界は「夢よ、もう一度」と再度追い続けるつもりだろうか?ザポロジエ原発が攻撃で破壊されたり、米軍から供与される劣化ウラン弾(「米、劣化ウラン弾をウクライナに供与方針 米紙報道」 2023/6/13 日本経済新聞電子版)の弾薬庫が破壊されたりしたらウクライナの土地も放射線で汚染され、作物にも悪影響が出ることになる。

 

 7月6日、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ワグネルの創業者プリコジン氏がサンクトペテルブルクにいると発言した(「ワグネル・プリゴジン氏、プーチン氏と手打ちか ロシア滞在の情報」 2023/7/7 日本経済新聞電子版)。同じく6日にはロシア外務省がフィンランド外交官9人を「好ましからざる人物」に指定して出国を求め、10月にサンクトペテルブルクのフィンランド総領事館を閉鎖することも決定した(「フィンランド外交官9人に出国要求 総領事館も閉鎖へ ロシア」 2023/7/7 時事通信)。第2次大戦時、「フィンランド軍部とドイツ軍部のあいだに四一年五月下旬フィンランドの対ソ戦争参加を予定した合意を成立していたことが明らかになっている」(「北欧史 新版世界各国史21」 百瀬宏、熊野聰、村井誠人編 山川出版社 p354)、「フィンランドは、ナチス・ドイツ軍の要請するレニングラード攻撃への参加を拒否しとおした。しかし、フィンランド政府は、旧フィンランド領を回復したあとも対ソ戦争を続け、軍事戦略上の要請とはいえ、ソ連領カレリアの大部分を占領下においたし、またその結果、飢餓にあえぐレニングラードの包囲作戦に消極的参加をしたかたちにはなった」(同p355)。レニングラードは現在のサンクトペテルブルク。プリコジン氏の動きとフィンランド総領事館閉鎖は無関係なのだろうか?今年1月、ロシアはカレリア共和国に軍部隊を設置する方針を明らかにしている(「ウクライナでヘリ墜落 内相ら14人死亡」 2023/1/18 日本経済新聞電子版)。

 

 米誌Newsweekは、” Less than a month after Russian tanks crossed the border on their way to Kyiv, CIA Director Burns landed in Warsaw, visiting with the directors of Poland's intelligence agencies and putting together the final agreements that would allow the CIA to use Ukraine's neighbor as its clandestine hub.”(ロシアの戦車がキーウに向かう途中で国境を越えてから一ヶ月も経たないうちに、CIA長官バーンズがワルシャワに降り立ち、ポーランドの諜報機関の長官を訪問し、CIAがウクライナの隣人を秘密のハブとして使用することを可能にする最終合意をまとめた)ことや、ウクライナにCIAが特別軍事作戦以前から関与していたことなどを報じ始めている(”Exclusive: The CIA's blind spot about the Ukraine war” BY WILLIAM M. ARKIN 07/05/23 Newsweek)。ウクライナが敗色濃厚なので、米国の報道機関もウクライナ寄りの報道をしていたという「黒歴史」を払拭したくなっているのであろう。

 

青字部分追記

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