投資家の目線

投資家の目線789(菅官房長官発言と統制経済)

 自由民主党総裁候補の菅義偉官房長官は、地方銀行や中小企業の再編を主張している(「菅氏、中小企業の再編促す 競争力強化へ法改正検討」 2020/9/6 日本経済新聞電子版、『「地方の銀行多すぎる」 菅氏の真意』 2020/9/4 日本経済新聞電子版)。昭和16年8月に重要産業団体令が公布され、昭和17年にかけて設立された統制会のうち全国金融統制会は金融機関の合併など整備の促進がうたわれている(アジ歴グロッサリー 金融統制団体)。満州帰りの岸信介商工大臣と椎名悦三郎次官のコンビによる企業整備令は「平和産業の全面的な軍需工業化と中小企業の再編成をめざしていた。繊維工場が相次いで兵器工場に転用され、中小企業は大幅に整理統合されて軍需工場の下請けにされた。転廃業に追い込まれる業者が相次いだ」(「岸信介とコンビ、戦時統制経済を担う」 2012/8/12 日本経済新聞WEB版)という。菅氏の政策は戦中の統制経済の焼直しではないだろうか?

 前回は、今年度の上場企業(含むグループ企業)の製造業の早期・希望退職について書いたが、それ以外の産業でも希望退職を募っている。

外食:チムニー100名希望退職募集、ペッパーランチ183名希望退職応募、フレンドリー110名希望退職募集、追記:ロイヤルHD200名程度希望退職募集
アパレル:ワールド約200名希望退職募集、レナウン300名程度希望退職募集、三共生興28名早期退職応募、追記;TSI約300名希望退職募集、ムーンバット40名程度希望退職募集、デサント約110名希望退職募集、三陽商会セカンドキャリア支援制度実施、(2021/1/21)150名程度希望退職募集、ライトオン40名程度希望退職募集、2021/2/3ワールド約100名希望退職募集追加
小売:さいか屋108名希望退職応募、ラオックス114名希望退職応募、追記:松山三越200名希望退職応募(「松山三越、希望退職に200人応募 改装で直営縮小」 2020/10/15 日本経済新聞WEB版)、青山商事400名程度希望退職募集、ャvラ50名程度希望退職募集、丸広百貨店約140名早期退職(「丸広百貨店、最終赤字21億円 前期単独、臨時休業響く」2021/5/7 日本経済新聞WEB版)
サービス:クックビズ50名程度希望退職募集(追記:63名応募、ワタベウエディング120名程度希望退職募集、エイベックス100名程度希望退職募集、セガサミーHD650名希望退職募集(729名応募)、KNT-CTHD(近畿日本ツーリスト)希望退職募集)、JTB早期退職を含む6500名削減(「JTB、グループ6500人削減 4~9月期最終赤字781億円」 2020/11/20 日本経済新聞WEB)、藤田観光早期退職募集、電通約230名早期退職(「電通、元社員230人とタッグ 「同窓」のつながり活力に」2021/1/14 日本経済新聞)、ホテル小田急希望退職募集(「小田急、前期最終赤字398億円 ホテルで希望退職実施」2021/4/28 日本経済新聞WEB版)
不動産:レオパレス21 1,067名希望退職応募
商品先物取引:第一商品140名早期退職応募
追記:
金融:FWD富士生命最大200名の希望退職募集(「FWD富士生命が希望退職募集 最大200人、従業員の2割」 2020/11/20 日本経済新聞電子版)
輸送業:ジェットスター・ジャパン希望退職募集、エアアジア・ジャパン希望退職約50名応募(12月5日で日本撤退「エアアジアが12月に日本撤退 国内航空、コロナ禍で初」 2020/10/5 日本経済新聞WEB版)(「ジェットスター・ジャパン、希望退職を実施」 2020/9/16 日本経済新聞WEB版)、ANA 3500名程度削減(「ANA、希望退職を募集 賃金カットで年収3割減に」 2020/10/7 日本経済新聞電子版、「ANA、3500人削減へ グループで22年度までに」 2020/10/25 時事ドットコム)、近鉄グループホールディングス早期退職優遇制度
食品:コカ・コーラBJH 900名程度早期退職募集
その他:NHK (「NHK、50代対象に早期退職者募集 管理職は3割削減」 2021/1/29 日本経済新聞電子版)
(出所:新聞以外は各社ホームページ) 最終更新2021/5/7


 この中で地銀や中小企業の再編を行えば失業者が大量発生するだろうが、彼らをどう処遇するのだろう?旧満州の開拓移民の中には、中小商工業の整理統合による転廃業者もいたようだが(「キメラ 満州国の肖像 増補版」 山室信一著 中公新書p287)、今は植民地時代ではない。

 また、菅長官は厚生労働省を念頭に政府の組織改革を検討しているという。『菅氏は2日の日本テレビ番組で「新型コロナの問題に厚労省ひとつだけではとても(対処)できない」と言及した』(「コロナ収束後に組織改革検討 官房長官 厚労省念頭」 2020/9/7 日本経済新聞WEB版)。営業違反の監視機能などがある警察をくっつけて内務省でも作る気だろうか?後藤田正晴元官房長官は回顧録「情と理 下」(講談社p248)に、安保闘争について「鳩山さんがあのとき言ったのは、憲法改正、再軍備ですよ。岸さんはこの二つにもう一つ加えた。中央集権的国家体制の再建と言うんですよ」と述べている。日本政府が官邸にいる経済産業省官僚主導になったのは、安倍首相が中央集権志向の祖父のことを意識しているためではないだろうか?

 また、「田中清玄自伝」(インタビュー大須賀瑞夫 文藝春秋p221~p222)に、「スカルノと組んで利権を漁っていたのが、岸信介、河野一郎、児玉誉士夫といった連中だった」とある。河野一郎氏は河野太郎防衛相の祖父。安倍・岸家と河野家にはこんなつながりもあるのかと思った。菅官房長官と河野防衛相(小泉環境相も)には、選挙区に経営状況が悪化している日産自動車グループの拠点があるという共通点もある。
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