投資家の目線

投資家の目線790(韓国紙の報じる最近の米朝関係)

 最近、大韓民国(韓国)の新聞で米朝関係の改善を示唆する記事が出ている。9月17日の中央日報では、アメリカ合衆国(米国)のャ塔Iペ国務長官がシンクタンクでの対談で「北朝鮮に対してさらに進展を成し遂げることができるという希望を持っており、依然として楽観している。公開的には静かだが、北朝鮮の人々ともどのような機会が持てるか考えている」、「北朝鮮に対する人道的支援が可能になることを希望している」(「米国、ニューヨークルートを通じて北朝鮮に非核化・食糧支援協議を提案」 2020/9/17 中央日報)と、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の水害に対する援助に関する発言が報じられたり、同日の朝鮮日報では金与正氏のサプライズ訪米の可能性が報じられたり(『金与正10月訪米説浮上…ポンペオ長官「北との交渉に向け努力中」』 2020/9/17 朝鮮日報)している。

 中東では、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンがイスラエルと国交を結んだ。イスラエルとDPRKも国交を結ぶのではないだろうか?国交を結べば、イスラエルは公然とDPRKと商取引ができるようになる。DPRKの主力戦闘機はMiG21である。DPRKは1999年に戦闘機MiG21四十機をカザフスタンから輸入している(『「安保理決議違反」と指摘された北朝鮮船の中身(木村正人) 』 2020/9/3 Y!ニュース)(三十数機とも言われる)。ルーマニアのMiG21を共同で近代化改修したのもイスラエルで、MiG21は今でも第一線の機体である。通常兵器では韓国に劣るDPRKも、近代化改修すれば少しは兵力の均衡に近づくのではないだろうか?

 一方DPRKは、日本に対しては、「戦犯国の風土で育っている危険な毒草は日本社会にさらに大きな災難をもたらすだけだ」(『北朝鮮外務省が日本批判 「歴史的事実を否定」』 2020/9/18 聯合ニュース)、あるいは「戦犯国の日本が周辺国の脅威を云々することこそが恥じ知らずの極致であり言語道断だ」(『北朝鮮、日本の「ミサイル迎撃専用艦」建造の動きに「戦犯国が…言語道断」』 2020/9/21 中央日報)と厳しく批判している。第2次世界大戦後の枠組みでは日本の肩を持つ国はなく、交渉のハードルは高そうだ。

 「外交 下」(ヘンリー・A・キッシンジャー著 岡崎久彦監訳 日本経済新聞社 p221)には、「フルシチョフはイギリスがアメリカから離れられないと認識した時から、交渉をアイゼンハワーに集中した。(中略)フルシチョフが求めているものを与えてくれることの出来る唯一の交渉相手は、アメリカ大統領であった」と書かれている。日米関係からすると、DPRKにとっては米朝関係さえ改善すれば、日朝関係などはその二次的関係に過ぎないのだろう。

 李登輝元総統の追悼礼拝に合わせて訪台したクラック米国務次官は対米貿易黒字を抱える台湾との間で経済対話を進めることで合意した(『台湾、米国務省と「経済対話」始動で一致 経済相「速やかに実施へ」』 2020/9/20 中央社フォーカス台湾)。トランプ政権は軍事面と経済面はリンクしないのだろう。また、トランプ政権は同盟国に軍事費拡大も求めている(『米国防長官「国防費はGDP比2%以上に」 同盟国に要請』 2020/9/18 日本経済新聞WEB版)。米国と同盟を結んでも米ソ冷戦時代とは異なり、米国は国内市場を過剰に開放してまでも同盟国をつなぎとめることはないし、同盟国が軽武装で経済優先の政策がとれるわけではないことは認識しておかなければならない。

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